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Crow of darkness

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Crow of darkness

7 - 第7話 「見つけた」

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2023年07月11日

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1.見つけた

ミスティアは今しがたターゲットに決めた男を真っ直ぐ見つめ、ソライアが言っていたことを思い出した。

『いいか?まずお前がターゲットに近づく。その会社の社員なら誰でもいい。上手く利用できそうなやつを選べ。そして話を伸ばして時間を稼ぐんだ』

『あなたはどうするの?』

『私はお前とターゲットが話している隙にメインコンピューター室に忍び込む。要はミスティア、お前にやってほしいのはターゲットの足止めだ』

『分かったわ。私に任せて!』

ソライアのドレス姿が見られるならばと、ミスティアは自信ありげに返事した。

2.演技

(この男との話をできるだけ伸ばして足止めする。そしたらあとはソライアがやってくれるはず…)

ミスティアは俯いた状態で笑顔を作り直し、それを男に向けた。

「あら!ここの社員さんなんですね!ぜひ!」

内心はもちろん笑ってなんかいない。今までこうやって数々の男を騙してきた。

「そのワンピース、とてもよくお似合いですね」

「ほんと?嬉しいわ!」

「えぇ、私が今まであったどの女性よりも素敵です。……そうだ、パーティーが終わったら2人でどこかバーでも行きません?近くにいいところがあるんですよ」

男はポケットからスマホを取り出し、バーの情報を調べだした。

「良いんですか?じゃあ、お言葉に甘えて…」

ミスティアが頬を赤らめた。その姿はまるで本当にそうしているかのようだった。これが演技だなんて、恐らく誰も気づかないであろう。

「あ、これこれ─」

男がミスティアにスマホを見せようとしたその瞬間。

ドン!

「っと!」

突然、通りすがった女が男にぶつかった。男が軽くよろける。

「あ…すみません」

女はペコリと小さく頭を下げて去っていった。

「大丈夫ですか?」

ミスティアが男を心配そうに上目遣いで見る。男は「大丈夫大丈夫!」と笑い、スマホ画面をミスティアに向け直した。


その光景を、少し離れたところからじっと見つめる女がいた。先程男にぶつかった女である。

女は会場の端まで移動し、自身の右手に視線を落とした。

その手中にあったのは、本来男が持っているはずの、メインコンピューター室の鍵。

女─ソライアは男を心の中で嘲笑った。

3.ここからは

ヴーッ……ヴーッ…

「!」

男と笑顔で談笑するミスティアは、自分のスマホが鳴ったことに気がついた。

ソライアからのメールである。

『作戦成功』

「フッ…」

ミスティアは「了解」とだけ返し、スマホから目を離した。

その頃、ソライアは誰もいない薄暗い通路を渡り、エレベーターまで移動していた。

パーティー会場は3階。コンピューター室があるのは5階である。いつまで男を会場に留めておけるか分からないため、できるだけ早く事を済まさなければならない。

ソライアは到着したエレベーターに乗り、階数ボタンを押した。

チン、という高い音と「5階です」という無機質な声が静寂なフロアに響く。小走りでコンピューター室まで向かうソライアは「こんな時のためにミドルヒールを履いてきてよかった」と思った。

物音を立てないように長い廊下を進み、1つ1つ扉の上のプレートを確認する。途中いくつか監視カメラがあるが、既にハッキングしてあるので姿が映ることはない。

そして。

「ここか…」

コンピューター室があった。他の部屋より重そうな扉に、『関係者以外立ち入り禁止』の張り紙。いかにもな雰囲気を醸し出している。

ソライアはポケットから鍵を取り出した。ジャラジャラと音を出す何本もの鍵の中からコンピューター室の鍵を見つけ、眼前の鍵穴に挿しこもうとした。

が、その時。

「誰だ!?」

「!?」

突然何者かの大声が聞こえた。ソライアは咄嗟に持っていた鍵を隠した。

4.邪魔者

「何だお前は!?そこで何してる!?」

暗闇で姿はよく見えないが、声からして恐らく中年の男であると分かった。

パーティーに潜入し、ターゲットに近づき、鍵も奪った。残るは扉を開け、PCに入っている情報をUSB端子に移すだけだというのに。

(こんなところで見つかるとは…)

ソライアは歯噛みした。思考を巡らせている間にも、男はどんどん近づいてくる。

「不法侵入者だな?警察に突き出してやる!」

(任務を続行する暇はナシ、か)

ゆっくりと距離を縮める男を見据え、ソライアは決めた。

(ならば─)

ダン!!

「なっ!?」

ソライアは一瞬の隙をついて男に接近し、そのまま壁に向かってジャンプした。壁に足を着き、駆け上って男を飛び越え、そして地に着地して猛スピードで廊下を走った。

「ま、待て!おい!」

ソライアの魅せるそれは、まるで重力を無視しているような華麗な動きだった。組織の中でもかなり高い身体能力を持つソライアは、あとを追いかける男をどんどん引き離していった。

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コメント

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ユーザー

ミスちゃんの演技のところやっぱ好きやわ😻 フッって笑うところと切り替え早いのおもろい笑! ソラちゃんバレちゃったの悔しいな…() 次回楽しみ😁 3部構成何気に珍しいわね!、

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