テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
朝は変わらず来る。
それが、兄弟達にとって一番辛かった。
理沙は訓練場で短剣を投げ、的を貫く。いつもなら背後から聞こえてくる声が無い。
(無駄に力入ってるぞー)
理沙は舌打ちをして、短剣を的ら抜く、そして
「分かってるし」
返事をする相手はいない。
だが…槍を構えたまま、しばらくの間動けなかった。
莉音はある店で面白い弾丸を見つけて言った。
「ねえねえ、これさーー」
そう言いかけて、言葉が止まる。
いつも、そう言ったら言われるはずの声が聞こえなかったから。
(どうせ危ないヤツだろー、)
“危ないヤツだろ“と注意してくれる人も、この店に付いてきてくれる人もいない。
(チェ,面白くないな、)
そう思った莉音は笑うのを止めた。
琴葉は、無意識に目を閉じた。
以前なら、目を閉じていると嫌でも聞こえてしまう隣のうるさいゲーム音が…全く聞こえない。
(あ“ー!また負けた、)
(琴葉ー?ゲームしに来てよー)
そう言ってゲームの対戦をせがんで来る人はいない。
「…兄貴」
声に出してから後悔がつのる、隣からの返答は…ない。手が震える。
泣き虫な自分を一番気にしなかったのは兄貴だった。
葵斗は薬品棚を整理する。何故か空の瓶が一つ少ない。
「凛紅兄、僕が作った薬飲んでない、」
(えー、あれ飲みたくねーよ!)
(不味いじゃーん)
いつも言い訳する声が無い、薬に文句しか言わない人もいない。
嬉しいはず…なのに、涙が滝のように溢れ出してきた。
創大は夜、いつもの屋上に立っていた。
「僕の命令に従ってくれる配下がいなくなったな、」
いつもなら聞こえるあの声
(いやいや、俺お前の配下ちゃうぞー)
聞こえるはずがない、創大は一言小さく呟いた。
「…つまらん世界だな、」
夕食の時間、一席空いたままの椅子。誰もその話題に触れようとはしない。
理沙は皆に聞いた。
「今日は何食べたい?」
莉音が一言
「何でも!」
(おい!それ止めろよなー、余計腹減る!)
葵斗はそれに笑いながら言った。
「兄貴絶対文句言いそうなヤツー」
いつもの文句をたれる長男はもういない、だが理沙は言った。
「ーーそれ、作ろう」
全員、少しだけ笑った。
皆はいつも長男のいた屋上で空を見ていた。もうあの剣は浮かばない。
それでも、あの人が守りきった空だ。
「…ちゃんと皆、生きてるよ」
(知ってるよ、元気そうで何よりだよ)
言葉は風に溶ける。返事はない。
それでもーー
長男は確かにそこにいた。
ーー凛紅はもういない。 けれど、彼が守りきった“日常“だけは、今日も続いている。