俺が住んでいるこの世は、なんだか変だ。
変というか…人間と、人間じゃない”別の種族”が共存する世界である。
異世界漫画やラノベに出てきそうな魔法を使える奴もいるし、俺みたいに平凡でなんもできない奴もいる。
そう、俺は一生平凡で普通ポジションにいるはずだったのに…
どうしてこんなことに…!?
俺の名前は凪野蒼。至って平凡な高校生だ。
「あー、暇だなぁ…」
今日遊ぶ予定だった友達はインフルエンザになったし。俺彼女とかいねーし。
なんかすごいこと起こんねーかなー…
なんて、起こるわけねーよな…
「破壊魔法〈ツェアシュテールング〉」
「え?」
ドォン
「うぉっ!?」
なんだか急に声が聞こえたんですけど…ってか俺の部屋の壁ぇ!!
壊されちゃった…あぁぁ…!
「あいてて…お!君かなー?」
「あの…勝手に家に入ってきてなんなんですか。壁ぶっ壊してるし…警察呼びますよ?」
「…っと。これは失敬だったね。私の名前は涼風ひらり。マジカルシークレットの普通科教官だよ!」
「マジカルシークレット…?」
「魔法極秘任務部隊、マジカルシークレットのことさ。聞いたことないかな?」
…言われてみれば、ある。
よくニュースで魔法を使えるあっち側の奴らの裏社会組織だって。あれ?でもここって悪いところじゃなかったっけ…?
「お姉さん悪い人なんですか?」
「へ?マジカルシークレットは正義の団体だよぉー。確かにニュースとかじゃ悪者扱いされてるけどね。あれ嘘だから」
本当に?俺騙されてるのかな…?
「とにかく私と一緒に本部行こ!ね?」
「いや、ね、じゃなくて…なんなんですか!?」
ほんとになんなんだよこの人…あれ?耳がとんがってる。エルフかな?
「あのねぇ…まあ、まずは見て確かめないと!さ、いくよ!!」
「だからどこに!?」
「瞬間移動魔法〈アオゲンブリック〉」
「え?」
またなんか呪文唱えたよね…?
って、ここ何処…
もしかしてさっきの瞬間移動魔法!?俺、不法侵入、器物損害、おまけに誘拐までされてるんですけど…
やっぱり悪い組織だろ絶対!!
「連れてきたよ〜ん?あれ?誘惑科さんと拷問科さんは不在かな?」
「そうっぽい。ひらり、その子誰?」
「もう!岸、先輩付けなさいよね。この子は…新しい仲間でーす!」
「いや入るなんて言ってませんけど!?ここどこなんですか!?あなたたちは誰なんですか!?」
「…うるさい。ちょーっと静かにして?手荒な真似はしたくないの」
「…」
岸、と呼ばれた人が脅してくる。え?俺脅迫まで受けてんの?
てかここ何処?俺組織の一員にされちゃう系?
「君は私がスカウトした!ま、適当に家ぶっ壊しただけだけど」
「適当…」
「うん。どちらにしようかなーって決めた」
そんなのでいいのだろうか…もしこんな俺じゃなくてマフィアのボスとかヤクザとかの家に突っ込んでたらどうしてたんだこの人…ってか人なのか!?
「どちらにせよ君は逃げられない。命が惜しければこの書類にサインをしなさい?」
「え、嫌です…」
普通に断ったら、岸さんの瞳が光…
「少し躾が必要かな?」
「…」
この人、まるで風のように俺に近づいてきた…!これも魔法なのか?
「こらこら。その辺にしとこ?えーと、君、名前は?」
「凪野蒼ですけど」
「凪野蒼くん。君をうちの組織にスカウトする。さぁ、どの科がいいかな?殺人科、魔法科、掃除科、拷問科、誘惑科、普通科…今ここには、誘惑科と拷問科以外の全ての教官が集まっている。さぁ、何処に入りたい?」
「あの…俺、魔法が使えないんですけど…」
「そんなことを心配してたの?魔法なら私も教えるし、魔法科教官も教える。どう?」
「…」
これ無理やり入らされるパターンだ…
「あ、掃除科教官は岸、殺人科教官はリリー、魔法科教官は彼岸花、そして私は普通科教官だよ」
へぇ…さっきの岸さんは掃除科が…なんか掃除っていう意味多重だな…
拷問科と誘惑科はどんな人なんだろう。拷問科はサイコパスっぽい人なのかな…?怖そう。
誘惑科はスタイルのいい女の人とか…?身長160センチくらいありそう。
まあ、俺の想像なんですけどね…
「でも俺普通の人間だし…人間って魔法使えるんですか?」
「知らなーい」
「…」
うん、スカウトする人完全に間違えたね。
「フェルマーター?」
「?」
なんか置物っぽいのに話しかけてる。あれ、生きてるの?
「あれって…」
「あぁ、フェルマータ・ホーンだよ。んじゃ、あの子が君を選んだら、魔法が使える!そういうことにしとこ?」
「は?」
「あの子全然人になつかなくてさぁ。私なんて何回暴言を吐かれたことか…」
そんなやばいのあのホルンみたいな置物…
「生意気なんだよね。あの誘惑科教官でも誘惑できなかった…ま、私はあいつのこと信頼してないけど。態度がうざい」
「岸。先輩を敬いなさいっ!」
「はいはい先輩すごーい(棒)」
「じゃ、蒼くんちょっと触ってみてよ。はい!」
「え、ちょっ!」
暴言がぁぁ…!!
ぴたり
うん。触った。なーんも起こらないなぁ。
「あれ?おかしいなぁ…私がちょーっと触れただけで怒るのに。もしかして寝てる?おーい?」
「…これって…」
「お前、人間か?気安く触るな」
「し、喋った…!?」
「やっぱり懐いてくれないかな?」
「フェルマータ、さん…?」
「…眠いんだよ俺はぁ!!ちょっと寝かせろや」
「はぁい…ごめんね、起きてからにしょっか。君は人間だから、パートナーが必要だと思ってさ。ま、これから仲良くしてね」
「なんで俺が組織に入る前提なんですか!?」
「え?君にもう道はないよ?」
「な…サイン!俺描いてないのに!!」
「えへへ、契約完了だね」
「嘘だろ…」
〈続く〉
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