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北斗が最初の一口をズズズッ・・・と啜った
そしてピクリと一時停止した
「どう?美味しい?北斗さん?」
北斗はアリスの顔をじっと見てにっこり微笑んだ
「ああ・・・とっても上手い、酔いがさめるよアリス、ありがとう 」
「キャ~!本当?」
それから北斗はアリスが見守る中、見事に味噌汁を平らげ、アリスが洗濯した作業服を着て仕事に向かった
アリスは新妻らしく午前中は掃除と洗濯に費やし
良いお天気の日に家で、じっとなんかしていられない明は、パンケーキを食べて、お腹を一杯にした後はさっさとどこかへいってしまった
やがてお腹がぐぅ~と鳴る頃、自分も昼食を取ることにした
「ほっくとさっんが♪美味しいって言ったお味噌汁飲んじゃおうっと~♪」
朝の残りのごはんを食べるのも新妻らしい、昨夜の酔っぱらった北斗さんは、とても可愛かった
こんなことでもアリスは嬉しく思った
「いっただきまぁ~す♪」
アリスは北斗が美味しいと言ってくれた、特製味噌汁をズズズ~と吸い込いこんだ
!!
アリスは叫んだ
「なにこれ?まっずぅ~~~いいっ!」
この液体は一体何?
アリスはブルブル震えて、目をひん剥いて味噌汁と呼ぶにはおこがましいものをじっと見つめた
まずはじめに塩だ!
塩の味がして、味噌をお湯で溶かしただけの味気なさと、生臭さがなんとも吐き気を催す
ありえない味がした、間違いないこのお味噌汁・・・いいえ液体は大失敗作だ
そして彼を思った、彼は美味しいと言って、普通に座って全部飲んだのだ
彼の忍耐力が信じられなかった、そしてたしかに酔いはさめただろうが、違う吐き気を感じただろう
アリスは正座して一人反省会を繰り返した
北斗さんはなんて男らしくて素晴らしい人だろう、それに比べて私は、全然良い奥さんじゃないわ
情けない・・・お味噌汁の一つも作れないなんて・・・・
アリスは意を決して、自分のカバンからスマートフォンを取り出し、ある人へ電話をかけた
何度か呼び出し音がコールされている
ガチャ!
「お嬢様??」
アリスはスマホ越しに言った
「お福さん?」
アリスが電話した相手は、実家の伊藤家にアリスが生まれる前から務めている家政婦長の「山下福」58歳だった
「まぁ!本当にお嬢様だわ!!いったいどこで何をされているんですか?パリの学校にもいないとこちらから連絡を受けたんですよ、私共に一切の連絡もしないでそんな放蕩娘に私はあなた様をお育てした覚えはございませんよ、いいですか、私はあなた様が赤ちゃんの時から伊藤家のたった一人の跡取りとして世間様に恥じぬようにこのお福が魂を削ってお育てしたつもりです、その福の気持ちをあなた様は踏みにじられた、本来あなた様がここにいらっしゃればこの福はお尻ぺんぺんを百回はしますね!ええしますとも!百回じゃ収まりませんね千回でも結構です、思えばあなた様は小学校の時からフラフラと気まぐれに外へ出られて何度誘拐されたと私共は肝を冷やされたことか6歳の頃は私どもの慌てふためる顔が見たいが故にお庭の植木にお隠れになられていてそのままお眠りになられて夜中に発見された時は警察も救急隊員もお屋敷を囲んでいたのをお忘れになられたのですか?あなたさまは大事な伊藤家の跡取りにもかかわらずいつでも衝動的に行動なさるフーテンの寅さんのように悪い癖がおありで旦那様とよく似ていらっしゃりますわあたしゃお嬢様がどれほど男性だったらよかったかと―」