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「よし、練習するか」
家に帰り、事務所でもらった台本を手に取って一息つく。
アニメ化が決まった恋愛漫画のヒロインに抜擢されて、初アフレコはその1週間後。
「う……ヒロイン久しぶりだから緊張する………」
お相手の声優さん誰だろ。
台本の1ページ目を開くと。
「…………え」
主人公の下。
そこには___。
______________
◯◯役 谷山紀章
______________
「……あー、うん、はい」
「は!?!?!?!?!?」
「……。」
ガチャ、とブースの扉を開く。
中にはロミんこと朴璐美が座っていた。
「あ、おはよー瑪瑙」
「あー、うん、おはよう」
「……え、どうした?」
「……死ぬ……今日が命日だ…………」
「いやほんとにどうした!?」
ロミんが私の顔を覗き込む。
「ああ、なるほど……」
「…………。」
「谷山君のことね?」
その言葉を聞いた瞬間、何かのスイッチが入った音がした。
「あああああ、名前聞かないようにしてたのにいいいいいい!!!!!!!!!!!」
「ちょちょちょ、瑪瑙!?」
「無理無理無理無理無理!!!!!!!助けてええええええ!!!!!!!!!!」
「のう、落ち着いて!」
がしっと肩を掴まれる。
「落ち着いて。もうすぐ時間だから皆来るよ?
………谷山君も」
「あああああ終わった…………………」
すると、ガチャ、と音がした。
「!?!?!?!?
………あ、何だ浪川さんか。おはようございます」
「ちょっと〜、『何だ』って失礼じゃん」
入ってくる浪川さんの後ろに、森久保さんと安元さんの姿が見えた。
「森久保兄さん、安元さんおはようございます…………」
「あはは、瑪瑙ちゃん気が気じゃないね〜」
「瑪瑙さんおはようございまーす」
「あとは紀章だけ?」
「ですね」
「どうしよう緊張してきた………」
「頑張って〜笑」
「ううううう…………..」
「もう時間だから来るんじゃない?」
そして、ガチャ、という音とともに、ついに扉が開いてしまう。
「おはよーございまーす」
その声を聞いた瞬間、時が止まったかと思った。
テレビでもライブでもラジオでも、いつも聞いている大好きな声。
間違いない、谷山紀章さんだ。
「おはよう谷山さん」
「紀章おはよー」
「おはようございます紀章さん」
「谷山君おっはよー!」
皆が次々と挨拶を返す。
でも私は身体が震えて、思うように声が出ない。
「ほら、瑪瑙も行ってきなって!」
ロミんが軽く私の背中を押す。
「あ、えっと、谷山紀章さん、おはようございます……はじめまして…………」
目を合わせて挨拶しなきゃと思いつつ、1秒でも紀章さんの顔を見ていたか怪しい。完全に不審者じゃん
「あ、同じ事務所の瑪瑙ちゃんだ。
はじめまして、僕のこと知ってくれてたんだ。よろしくね」
…………は?
「……わ、私のこと知ってるんですか……………?」
名前は台本でわかるけど、事務所までは書かれていない。
つまり…………。
「え、もちろん知ってるよ?」
!?!?!?!?!?!?!?
は、え、は、何、今なんて………はい?????????
「……………。」
「あ、瑪瑙がフリーズした。ちょっと失礼」
ばしばしとロミんに叩かれ、我に返る。
「あ、えっと………わ、私、紀章さんの大ファンで………!!」
「Twitterとかで呟いてくれてるよね、いつもありがと」
はああああ!?!??!?!?!?!??!?!?
まって認知されてるうううううう!?!?!?!?!?!?!?!?
「ぁ………はい…………….」
「ちょっと紀章、瑪瑙ちゃん気絶するよ?」
「?まあとりあえず瑪瑙ちゃん、これからよろしくお願いします」
「あ、よ、よろしくお願いします!」
紀章さんが優しく微笑む。
う”っ………笑顔が眩しすぎて絶命する…………。
これ無料で見て良いんですか………???
この世界に感謝………..。
「もうすぐアフレコか……頑張ろう」