テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
文化祭最終日の夕暮れ時。打ち上げの後の静かな校庭で、俺たちはベンチに腰かけていた。
「楽しかったねぇ~」
こさめが遠くのテント群を見つめながら、のんびりと息をつく。
「疲れた」
素っ気なく答えながらも、内心では彼の存在に満たされていた。
「なつくん、最後にこさと一緒に写真撮らない?」
スマートフォンを取り出すこさめの横顔が、西陽に染まって美しい。
「写真か……」
「ダメ?」
「ダメじゃない。ただ……」
躊躇いがちな俺の声に、こさめが不思議そうに首を傾げる。
「ただ?」
「こういうの、初めてだから」
照れ隠しに視線を逸らすと、こさめが嬉しそうに笑った。
「えへへ、なつくんの初写真だ!」
二人で寄り添って自撮りモードにする。こさめが俺の肩に手を置き、画面を覗き込んだ。
「ほら、なつくんもっと笑って!」
「笑えるか」
「じゃあ、こさがチューすれば笑う?」
突然の提案に、思わずカメラを落としそうになった。
「バッカ!こんなとこでできるか!」
「冗談だって~」
本当は冗談じゃなくても良かったのに……と内心でぼやく。結局普通の記念写真だけを撮り、保存した画像を眺めるこさめが満足そうにしていた。
「この写真、飾っちゃおうかな」
「やめろ、恥ずかしい」
「え〜、なつくんとの思い出を形に残したいだけだよ?」
「だったら……」
俺はスマートフォンを操作し、メッセージアプリに新しいフォルダを作った。
「ここに入れろ」
「え?」
「他の奴らには見せんな。俺とお前の……秘密のアルバムにしろ」
「なつくん……!!」
こさめの瞳がキラキラと輝く。俺は照れ臭くて耳まで熱くなるのを感じた。
「ほら、早く移せ!」
「うん!こさの大切な宝物にする!」
データを送信する間、こさめがふと思いついたように口を開いた。
「ねぇ、なつくん。明日からもこのアルバムいっぱいにしようね」
「当たり前だろ」
「じゃあ、これからもたくさんデートして、いっぱい写真撮ろうね」
「……ああ」
俺が小さく頷くと、こさめは飛びついてきた。
「ナツくん大好きー!」
「おい、落ち着けって」
体を支えながらも、この温もりを手放したくないと思う自分がいる。
「夜風が冷たくなってきたな」
「うん……でもなつくんと一緒にいれば暖かいよ」
こさめが俺の胸に顔を埋めてくる。その髪から漂う甘い香りが鼻腔をくすぐり、理性が危うくなる。
「そろそろ帰るぞ」
理性を保つために立ち上がろうとした時、こさめが袖を引いた。
「もうちょっとだけ……ダメ?」
上目遣いで見上げてくる恋人の表情に、全ての意志が吹き飛んだ。
「お前ってやつは……」
腰を落とし、こさめの頭を引き寄せる。
「本当に狡いな」
「えへへ……」
照れ笑いをする唇に、俺は迷わずキスをした。
文化祭の幕が降りたその夜、俺たちの関係は新たな一歩を踏み出したのだった。
𝑒𝑛𝑑