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熱々のピザをかじると、溶けたチーズがとろりと糸を引いて伸びた。
「おいしい」
「ああ、本当だな」
かつてはよく食べたピザの味は、以前と変わらない美味しさだったけれど、彼と一緒に食べるとより美味しく感じられた。
「お客様、おすすめのご当地ワインがあるのですが、お試しでいかがですか?」
ソムリエの方がボトルを携えて、各テーブルを順繰りに回って来て、
「私はまだ運転があるのでいいですから、蓮水さんはどうぞ飲まれてください」
と、促した──。彼がお酒に弱いことは、あの一件で熟知していたけれど、さすがにグラス一杯のみでは酔っ払ったりすることもないだろうと考えた。
「ああ、ありがとう。いただくよ」
ワインの注がれたグラスを片手に持つ仕草が、まるで広告ポスターから抜け出たかのように決まって見える。
ワインを飲む姿は、最高にハマってるんだけど、強くはないんですよね……。
だけど、そういうところにも魅了されるようで……。
一見するとパーフェクトな紳士でもあるのに、お酒に弱かったりなどのウィークポイントもあるところが、完全無欠で人を寄せつけないようなタイプとは違って、知らず知らずのうちに人を惹きつけてしまう、人たらしたるゆえんのようにも思えた。