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「はー、疲れたわ」
リゥパが思わず呟いた。ケットたちが調理場へ向かった後、リゥパ、ムツキ、ナジュミネの3人はソファに座ってくつろいでいた。
もう少ししたら風呂に順番に入ることになる。今はユウが長風呂に入っているところだ。
「すまない。リゥパの歓迎会で手伝わせてしまって」
ムツキが申し訳なさそうに言うと、リゥパは焦って両手をパタパタさせながら首を横に振る。
「あ、ごめんね。うっかり出ちゃっただけだから気にしないでいいのよ。皆でやった方が一体感も生まれるし、仲間って感じがするじゃない?」
実際にリゥパは楽しんで樹海での材料探しができた。普段行かないようなところにも足を運び、新しいことも知れた。誰かと苦労を分かち合うのも少し心地よかった。
「ありがとう」
「でも」
「おっと」
リゥパはムツキの膝の上に対面になるように乗る。リゥパは横目に少し羨ましそうにしている。
「どうしても埋め合わせをしたいって言うなら、今晩も相手してもらおうかな」
リゥパはムツキを抱きしめ、彼の耳元でそっと囁く。彼はその彼女の吐息とセリフにゾクッとする。
「む。連夜はズルいぞ」
ナジュミネはしっかりと聞いていて、すかさず文句を言う。
「あら、聞こえちゃった? ところで、ムッちゃん、何で1人ずつなの?」
「ん? どういうことだ?」
リゥパが顔を少し離してからそう訊ねると、ムツキはその意図を図りかねているようで問い返す。
「だって、ムッちゃんなら、まとめて2人とか、3人とか相手にできそうじゃない?」
「俺はそんなに器用じゃない。1人と向き合うので精一杯だ」
ムツキはその言葉に思わず吹き出しそうになるが、至って冷静に返した。リゥパは少しつまらなさそうにする。
「変なところで真面目ね。ナジュミネもそう思うの?」
「旦那様に不可能はないだろう。きっと5人でも10人でも大丈夫だ」
ナジュミネはムツキに不可能はないと本当に信じている。
「絶大な信頼ね……」
「信頼なのか、これは……」
聞いたはずのリゥパも信頼されているムツキも言葉が続かなかった。
「妾とて毎夜、旦那様と一緒にいたい。しかし」
「しかし?」
「他の女を見ている旦那様を見続けられる自信がないのと、比較されるのが怖いのだ……」
ナジュミネが少し暗い顔をしながら胸の内を吐露する。しかし、リゥパは青筋を立て始めて、ムツキの上からナジュミネの上へと乗り換える。
「こんな私よりイイモノ持っておいて何が『比較されるのが怖い』なのよ! 舐めてんの?! 私が羨ましいわ!」
リゥパはナジュミネの胸を触り、これでもかと揉みしだく。
「痛っ……あっ……何をする……やめっ……ちょっと……んっ」
「止めてくれ、俺がマズい」
ナジュミネは少し甘い声も混じってきたのでムツキは前屈みになりつつ、止めるように言った。
「ムッちゃんって意外と理性働かないわよね」
「さすが、旦那様」
「それはさすがなの?」
リゥパは胸から手を離し、怒りもどこかへ放ったようで、静かな表情に変わる。
「まったく……まあ、私だって、他の女を見るムッちゃんを見るのは切ないけれど、でも、私のことも見てくれると思えばあまり気にならないわね。そもそも、ハーレムなんだし、そういうものじゃないかしら? 無理に付き合う必要はないけど」
「そうか……妾にもできるだろうか」
「それはやってみたら分かるんじゃない? 物は試しよね」
「そうだな、たしかに」
ナジュミネとリゥパはお互いに話を丁寧に返していきながら、同じ気持ちへと近付けていく。しかし、ムツキはその同じ気持ちには近づけていない。
「いや、待て。どうして俺抜きで話がとんとん拍子で進んでいるんだ」
「今夜は誰の番かしら?」
「おそらくユウだな」
順番からするとモフモフかユウかだが、おそらくユウではないかとナジュミネは考えている。
「ユウ様ならOKしそうじゃない? 聞いてみよっか」
「そうだな。まずは聞いてみよう。そうすれば、みんなでもっと旦那様とできるからな」
「おーい。俺の声、聞こえてないの? 目の前にいるんだけど」
ムツキは2人に向かって手を振るが、2人は気にした様子もなく話を続けている。
「じゃあ、パーティーの後に相談しましょ」
「そうしよう」
「あれ? おかしいなあ。俺の話、誰も聞いてないぞ?」
「まあ、ムツキ様の意見は却下ってことでしょうね」
ついにルーヴァがムツキの話し相手になった。完全に蚊帳の外にいる彼を少し不憫に思ったからだ。
「なんで俺のことなのに俺の意見が尊重されないんだ!」
「ハーレムを持つ者の義務ってことじゃないですか?」
「ノ、ノブレス・オブリージュなのか……」
風呂の支度ができて解散になるまで、嬉々とする2人と、諦めモードで俯くムツキがリビングでくつろいでいた。