【rbr side】
「ろーぼーろー」
「…」
「ろーぼーろー!!!!」
「うるっさいねんお前!!!!!」
次の日、昼休み。昼ご飯を食べ終わったあと、自席で悶々としていた俺に前の席のシャオロンがちょっかいをかけてくる。
「声でか」
「は?」
「ふは、w…てか、さっきからロボロなにしてんの?」
「ちょっとほら…考え事や」
「ほーん」
昨日、帰ってから罰ゲームについて考えていたものの、いい案が出ないまま終わってしまった。おかげで今日は寝不足だ。
「はあ…」
「?…何悩んでんの?」
「うーん…」
まずコネシマは除外するとして…グルッペンは色恋沙汰に興味がない癖して面白がって言いふらしそうやし、トントンは真面目なところがあるから、こんなたちの悪い罰ゲームをしていると知られたら絶対にいい顔はされないだろう。この二人は無しやな。で、万一女子に見られでもしたら俺の命が危ういので、鬱先生もなし。同じ理由でエーミールもないな。ゾムに殺されるかもしれんもん。
「あ」
「え?」
俺はがばっと顔を上げ、目の前のシャオロンを見つめる。彼は虚をつかれたように、琥珀色の大きな瞳を瞬かせた。
せや、こいつでええやん!
「シャオロン、今日の放課後空いとる?」
「え?…うん、部活無いから空いてるで」
「俺も無いから一緒に帰らへん?」
「ええけど…珍しいな、お前から誘ってくんの」
確かに、俺たちはたまに一緒に帰りこそするが、そのときはいつもシャオロンが半ば強引に俺を誘ってくる。部活あるって俺!と主張しても、えーやんたまには休もうや!と肩を組まれるのだ。正直俺も部活が怠くなるときはあるし、帰りにゲームセンターやらカラオケやらに寄るのは楽しいから、決して悪い気はしないんやけど。
「ちょっと話があるねん」
「え、俺に?今やったらあかんの?」
「うん、二人で話したい」
俺がそう返すと、シャオロンは口をつぐんだ。そして、肩に付きそうなくらいの茶髪をいじりながら言う。
「…なあ、それって、大事な話?」
「あー…まあ、そうなるかも」
「そっか」
キーンコーンカーンコーン、と予鈴が鳴る。シャオロンはそれだけ言うとくるりと前に向き直った。
取り敢えずこれで手筈は整った。あとは告白するだけやな!…いや、それが一番キツイんやけど。今から気が重くて、俺はそっとため息をついた。
♡
「今日の数学まじでキツかったわー」
「お前ほとんど寝とったやん」
「は?お前もどうせ寝てたくせに!」
「寝てませーん、ロボロくんは真面目なんで」
「どの口が言うてんねん、童貞が」
「関係ないやろ!」
軽口を叩きながら通学路を歩く。いつも通る方とは違う、少し遠回りの道を選んだので、うちの生徒もほとんど居ない。いくら冗談とはいえ、周りに見られて広まりでもしたら困るからな。
「…」
ところで先程から気になるのは、シャオロンの落ち着きがないことだ。俺と話しつつもちらちら周りを眺めたり、逆に俺の顔をじっと見つめたりと忙しない。
「どした、俺の顔になんかついとる?」
「や、え?ち、違うけど」
こちらを見つめるシャオロンにそう尋ねると、慌てたように返してくる。なんやねんこいつ。
「その、俺に話って……?」
なるほど、来たか。もはや有耶無耶にしたくなってきたところだったが、ここまでくればもう言うしかないだろう。俺は覚悟を決め、ちょうど赤になった信号の前で立ち止まる。
「シャオロン、好きや。俺と付き合ってほしい」
自分でもびっくりするくらい声が震えていた。嘘だと分かっているのに、こんなにも緊張するなんて。動画を撮るかわりに、鞄のなかでボイスレコーダーをオンにしているが、音はちゃんと入っているだろうか。
シャオロンはぽかんと口を開けて突っ立っていたが、やがて我に返ったように言う。
「え、ほんまに?…罰ゲームとちゃうやろな?」
思えば、ここでそうです罰ゲームです、と返せば良かったのだ。だけど俺はこのとき、いつも煽ってくるコイツへの仕返しに、ちょっと揶揄ってやりたくなってしまって。どうせ結果は見えとるんやから、もうちょい遊んでもバチは当たらんやろ、なんて思って。
「ちゃう。俺は本気やで」
ほんまはここでシャオロンに断られてから、嘘でしたーwって言って笑うつもりやったんや。
今すぐネタバラシをしたい気持ちを抑え、俺はシャオロンの様子を観察する。彼は俺の言葉を聞くと俯いて、髪をまたいじる。
それで、口を開いた。
「ほんまに?……………ッ、嬉しい、」
あれ。
シャオロンは顔をあげる。くりくりとした目に小さくつんとした鼻、ほんのりピンク色に染まった頬が、なんともかわいらしくて。女と見紛うほどに愛らしい顔立ちをした彼は、俺の目を見ると、ふにゃりと柔らかく微笑んだ。
「お、俺もロボロのこと、好き…、付き合お、」
あ、これ俺やったかも。
嬉しそうにはにかむ彼を目の前に、俺の背筋をつめたい汗がつたう。
「ふふ、これから俺たち”恋人”…なんやんな?」
むず痒そうにそう口にするシャオロンに、俺はせやね、と返すのがやっとだった。視界の端で、信号が青に変わるのが見えた。
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コメント
10件
アアア.ᐟ.ᐟめっちゃ好きです.ᐟ.ᐟ尊いです.ᐟ.ᐟ最高です.ᐟ.ᐟ✨ shoちゃんの乙女感がめっちゃ好きです.ᐟ.ᐟ 会話の一つ一つが本物みたいでめっちゃ好きです.ᐟ.ᐟ
うああぁ…この時点でもう大好きです…!! 完全に恋する乙女なshoさんご可愛すぎるし、ちょっとたじたじしてるrbrがなんか…ちょっと笑ってしまいました。…とにかく、好きだということを伝えたいだけです。 大変だと思いますが、続き楽しみにしてます…!
うわ最高です、、!!!! shoマジでほんとに可愛いですね!?シリーズ頑張ってください!!!