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のあ!♡様からのリクエストです。激遅になってしまい本当に申し訳ないです………。リクエストありがとうございました!!
東達と西達で💡を取り合うお話。inmは皆のことが好きだし皆はinmのことが好きです。距離近、健全な愛され。少しだけ嘔吐描写あります。
inm視点
ピピッと音が鳴った体温計を脇から取り出す。39.4、なんなら昨日よりも悪化している数値に呆れた。どうしてこう、大事な時に熱が出てしまうのか。
「いなみ〜?起きとる?」
「ん」
喉の痛みを微かに感じていたが、声すら出ない。寝てる訳じゃないよ。なんとか誤解を払拭しよう曖昧な足を進め、扉を開けた。
「わ」
途端に部屋に充満する優しいおかゆのにおい。食欲も無かったはずなのに、今だけはそれが魅力的に思えた。カゲツは驚いた顔をしたが、ドアノブを支えに立つオレの目線と合わせるようにしゃがんだ。
「横になっとけって言ったやん!まだ元気には見えんけど」
「ぁ゙」
「え、声ガッサガサやん。なんか悪化してない?」
ん、と頷くと、カゲツはオレの手を取りベッドまで運んでくれた。
「これ、おかゆやけど。食べれる?」
再び頷く。扉のドアノブに手をかけるカゲツを、少しだけ引き留めた。
「かげつ」
「なんや?」
「ありがとう、好き」
「なっ…?ええよ、病人やろ?今日はゆっくりせな」
無理せんでええからな、とカゲツは心配そうな顔をして部屋を出ていった。
『なんかあったらスマホで連絡して、他のみんなにもいなみが声出らんこと言っとくから。個人の方でもいいし、グルラでも大丈夫』
心強いメッセージに安心したオレは、おかゆを口に運ぶ。食べ物どころか水分もまともに取っていなかったからか、塩をそのまま食べているかのようなしょっぱさを感じた。ふと蝉の声が耳に入ってきたので窓の外を見ると、遠くで黄色い鮮やかなヒマワリが咲いている。生き生きとしている真っ青な空とのコントラストが最高だ。
『ヒマワリが近くで見たい』
何も考えずに打ったそのメッセージにはすぐさま既読が着いた。だいたい病人が外に出たいなんて、我儘にも程がある。そんなことは、オレでも理解しているのだけれど。
「ライくん?入るよ?」
優しい声が聞こえたので扉の方に目を向けると、入ってきたのはイッテツだった。
「いってつ」
「あ!!無理に声出さなくて良いよ」
「ううん、さっきよりマシ。寝起きだったからガラガラだったのかも」
「そう?なら良いけど」
本来であれば、めちゃつえーでオフコラボの予定だったのだ。オリエンスもディティカも昨日に集まって配信をするつもりが、突発的に風邪をひいてしまったオレのせいで延期ということになった。
「ねえライくん、ヒマワリきれいだね」
おかゆを食べる手が止まる。まさか、メッセージを見て来てくれたのか。
「うん」
「風邪治ったらたくさん写真撮ろう?ライくんとヒマワリが並んでるとこ見たい」
「え」
イッテツは慌てて下を向いた。ブツブツ言っており全く何を言っているのか分からなかったが、急に声が大きくなった。
「正直に言っちゃうよ!?ライくんってさ、太陽みたいに明るいじゃん。ヒマワリと共通点しかないかな、みたいな。ライくんニアリーイコールヒマワリでしょ?」
怒涛の表現に心を奪われる。いや、恋してるとかじゃなくて、こんな素敵な考えを持ってくれるんだ、と。素直に嬉しくて、頬が緩んでしまう。
「んふ、ありがとう」
えへへ、とイッテツが笑った直後、スマホが震えた。
「あ!ライくん!その電話とって」
あまりにもイッテツが急かすもんだから、少しだけ不思議に思ったものの連絡先も見ずにスマホをとる。開くとそれは、ビデオ通話だった。
『ライ!!元気してる??』
「ぇ」
そこには、イッテツ以外のオリエンスメンバー……あと、ヒマワリ…!?
『コレなら窓から見えるヒマワリよりもデカいんとちゃう?』
「おっきい。きれい」
「ライくん、治ったら絶対直視しようね」
『あー!そこ!!イチャイチャしない!!!僕らもライきゅんと話したいの!!!』
蝉の音がノイズにならないほど、スマホの向こう側では3人が大袈裟に喋っている。でもオレだけのために、遠いヒマワリまで足を運んでくれたのが何よりも嬉しくて。
「みんなありがとう。元気出た」
『ほんまか?俺らが勝手にしゃべり倒しただけな感じするけど』
「ううん、そんなことないよ、ね?イッテツ」
「え、俺!?!?」
『テツ話聞いてないだろwwwwwwwww』
「いや違うよリトくん!!!聞いてたけどまさか俺に来るとは思わないでしょ!!!」
『wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
気づいた時には一緒に4人と笑っていた。風邪のことも忘れて、この瞬間だけは熱なんて無かったと思う。
『な、テツ。もっと言うべきことがあるんやない? 』
「っあーー!!!忘れてた!!!」
『うるさ。目の前病人だぞ 』
「アッ………スミマセン…………」
見事にオリエンス劇場が開演されており、楽しい。どうしたの、と尋ねると、意外な質問が返ってきた。
「ね、ライくん。俺等のこと、好き?」
「…へ?」
「そのまんまだよ。好き?」
「…そりゃもちろん、好き」
「よっしゃーーーーー!!!」
『だからうるせえ って』
そう言っているスマホの前の3人も小さくガッツポーズをしている。なんだこの人たち。告白成功したくらいのテンションだ。まあ彼らが楽しそうだから別に良いんだけれど。
「うるさくしちゃってごめんね、また何かあったら連絡して」
「わ、分かった」
嵐のよう過ぎ去っていったオリエンス軍団だったが、オレにはしっかり元気を与えてくれた。イッテツが出ていったのでもう一度熱を測ると、39.7。上がってるじゃねえか。でも心做しか気分は悪くないので、このまま調子良く治ってくれたら良いなと思う。おかゆが入っていた皿を部屋の外に出し、もう一度寝ることにした。
kyng視点
ドアをノックしても返事がなかったので強行突破すると、ライは身体を捻りながら寝ていた。汗もかいており、何より気になるのは魘されていること。顔を歪めて苦しんでいる伊波が可哀想で、気づいたら彼を揺さぶっていた。
「おい、伊波」
「っ……」
「伊波!!!起きろ!!!」
「っ…!?ぁ………????」
「俺だから安心しろ。起こしてすまん。魘されてたから」
「………?なんか、怖い夢見てた、かも」
「覚えてないなら良い。また寝ても良いけど?」
「いやだ、ココに居て」
「ふ、怖いんだ?」
「そんなんじゃないから」
「素直になりなよ?かわいくねえな」
「はぁ?世界一のキュートフェイスだろうがあ」
「はいはい。病人は暴れないでください〜」
ムスッと頬を膨らませ、それでもまだ頭は回っていなさそうな彼を笑う。ライは最近、かなり無茶をしていた。風邪を引くのは当然のような気もする。
「調子どう?」
「あたまいたい」
「ん」
「え、薬。いいの?」
「良くないって言ったらどうするつもりだよ。早く飲め」
「はぁい」
薬と水を飲んで少し調子が戻ってきたのか、ライは俺のオトモの我儘に付き合っていた。撫でられたいのか、さっきからライの側を離れない。
「んは、くすぐったい。風邪うつっちゃうよ」
ライはオトモを少しだけ撫でた後、俺の膝に乗せた。そしてもう一度寝転がる。
「もう一回だけ寝る…こやなぎ、ありがとう」
「俺何もしてねえよ」
「ううん、寝るの怖くなくなった」
「やっぱ怖かったんだ?」
「………まあね」
ここまで素直な伊波は久しぶり…これも体調不良のせいだろうか。
「ロウ、好きだよ」
「は?」
「んふ、おやすみ」
どういうことだ、と訊こうか迷ったが、彼がもう小さな寝息を立てていることに気付いたので辞めた。伊波の頭を一回だけ撫で、オトモと一緒に部屋を出た。
hsrb視点
『へるぷ、袋』
そのメッセージが送られたのに最初に気づいたのはリトだったが、ちょうどマネージャーと次の案件のオンラインミーティングをしていたそうでパソコンから離れられず、俺にこっそり電話をかけてきた。
『ライやばそう』
『え?』
『早くメッセージ読め』
『はい』
レジ袋を持って全力でライの部屋に向かい扉を開けると、今にも吐きそうな彼が。
「っわ!コレ!!コレに出して!!!!」
「…っ………おぇ……」
俺の持つ袋はだんだん重くなっていった。片方の持ち手をライが持ち始めたので空いた手で暫くライの背中を擦っていると、ライが顔を上げる。
「……ごめん、ほしるべ」
顔を上げたライの目には涙が溢れていた。
「な、なんで泣いてんの」
「ごめん………っ」
「謝る必要ないよ?はい、ついでに水も持ってきたからコレで口濯ぎな」
「………ありがと」
口を濯いでスッキリしたのか、ライは俺の持つ袋を奪い取った。
「あ、ちょっと!病人は寝なさい!!!!」
「いいの!!オレが持っていく!!!」
「倒れたらどうすんの!」
「倒れないから!!もう吐いて元気出たしー!」
涙を拭いながら彼は袋を持って部屋を出ていった。どう処理したのか分からないが、彼はまた部屋に返ってきた。
「ほしるべのおかげだからね」
「え?」
「オレあのままベッドに吐いて散々なことになるとこだった」
「良かった…じゃなくて!体温計を出しなさい」
「ちぇ…もう元気なのに………」
ピピッと音がなって、ライは体温計を見ると目を輝かせた。俺に意気揚々と見せつけてくる。
「お!36.9ですか」
「ふふん。もうすぐ治るね」
「怖いからまだ寝てください。明日配信できそう?」
「できる!!!やりたい!!!!!」
「はーい、じゃあ皆に言っときますね」
「ありがとう!…ほしるべ好き」
「え?」
「ん?早く出て行きなよ。風邪うつっちゃうよ?」
「はいはい。じゃあね〜」
hbc視点
『昨日無くなったオフコラボ配信、明日するで!!』
るべの一報を受け、みんなで一斉にポストする。リスナーからの反応が盛んで俺たちも楽しみになってきたところで、リトが口を開く。
「ライ、元気になったのは良いけど…無理してないよな?」
「まあ大丈夫でしょう、俺が行ったときめっちゃ元気になってたよ………吐いたけど」
「は、吐いたん!?ほんまに大丈夫なんか」
「まあライですからね〜。多分止めたほうが面倒くさい」
「流石ディティカやな。お互いをしっかり把握してる」
「でもそんなこと言ったらオリエンスだって皆で協力して看病してたじゃん」
「まあね、俺らライのこと愛してるし」
「「「は??」」」
聞き捨てならない、というように一斉に険しい目が3人分こちらを向く。
「いや、怖!?ホラーゲームかと思ったわ」
「ロウきゅん落ち着いて〜?狼みたいな目してるよ〜?」
「カゲツくんも怖い目してるよ?」
「るべ、ドードー」
鋭い目を感じ取ったのは俺だけじゃなかったようだ。オリエンスの皆で、ライを除くディティカの憤りを沈める。俺、何か逆鱗に触れるようなことしたか…??
「まあ優しいので落ち着いてあげますけど?俺達の方がもっとライのこと好きってこと、覚えといてくださいね」
「せやぞ。ぼくらの方がライのこと知っとるし」
「少なくともオリエンスよりはな」
急にディティカで団結し始めて驚く。お前ら、意思疎通できるんやな……戦闘にも生かせばええのに………。いっつもプロレスしかしてないやんけ………。
「だったら僕たちも負けてないよ!!ね、テツ?」
「えぇ!?!?まあ行動力はあると思うけど…」
途端に戦闘心が湧いてきた。オリエンスで看病に行くときは4人固まって向かったのに、ディティカでは固まらずそれぞれ1人ずつで行っていたではないか。
「俺達ライに好きって言ってもらえたもんなー!」
「そうだそうだ!!」
勝った、と思った。ライは絶対にディティカにラブコールなんてしないと確信していたから。それなのにるべもカゲツもロウも動じない。
「え………ぼくも言ってもらえた」
カゲツが呟く。それに便乗するように、ロウが口を開いた。
「いや、俺も。急に告白された」
「え………?じゃ、るべは?」
「なーんだ。皆されてるんですねー?俺だけのために言ってくれたと思ったのに」
オリエンスだけじゃなくてディティカにも言ってたんか。普段言わんくせに。その真相に気づいた俺含む7人は、一斉にため息をつく。
「あいつ、魔性の男やでほんま 」
呟いた言葉には感嘆の意味ももちろん含んだつもりだが、どちらかというとライに振り回されている俺等への呆れの意味を強く含まれていた。
「ま、ライは俺達の方が好きですけどね」
「は?それはないわ」
落ち着いたと思ったらラウンド2か?負けられんな。もう既に東4人と西3人の間には火花が散っていた。この決着がつくのはいつになるんやろか…?