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過去作の再掲です。
⚠️ケーキバース 死ネタ
『いっぱい食べてね。』
いちごのソースの味がする。喉が焼けるくらいに甘くて、少しだけ酸っぱい。ふわふわのパンケーキの食感がする。でも、パンケーキにしては少しもちもち……。それと、チーズの味? なんやろこれ。ぼく、今まで味わかんなかったのに。もっと、このお菓子のことを知りたい。口いっぱいに詰め込んで、一気にごくりと飲み込んだ。甘いって、初めてや。頭がくらくらする。むちゃくちゃおいしい……! 期待を込めて目を開ける。きっとおれ、めちゃくちゃ目きらきらさせとるんやろなぁ。これなんなんやろ。そうだ、じゅうと食べに行きたいから、後で調べよう。それで内緒にして連れて行って、これを食べた柔太朗をびっくりさせてやるんだ! ゆっくりと、スイーツを見下ろした。
――見なきゃよかった。
“スイーツ”。”スイーツ”って、ああ、そっかぁ。お人形さんみたいに綺麗な顔、おれの口からこぼれたので赤く染まった目、シュッとした鼻筋、薄い唇は血色なんてないのに赤黒くて。
そして何より、首元に噛みちぎったような跡。
「じゅう、たろ」
おれは。おれが、食べた? 嘘だ、大事な、大好きな、柔太朗を。おれのことを好きって言ってくれた、愛してるって言ってくれた、怖がらんでちゅーしてくれた、じゅうを。本能に抗えなかった、なんて言い訳通じるはずない。
甘い、気持ち悪い、吐いてしまいたい!
でも、酸っぱいそれを飲み込んで押し返した。口の端から漏れ出てしまった汚い白を拭って、舐めとって。おれの身体からじゅうが消えてしまわんように。せめておれの中で溶けて、胃の内容物じゃなくなるまでは。おれの細胞になって、一緒に焼かれて消えるまでは。これは忘れちゃあかん。絶対。おれの身体はこれから先、柔太朗のものでもあるんだ。 もうちゅーはできない。また食べてしまうのが怖いから。だから、柔太朗の胸にぐりぐりおでこを押し付けて、思いっきり泣いた。
ぼくは今日、山中柔太朗を殺しました。
だいちゃんに俺のことを食べてほしかった。ケーキの俺は、いつか誰かに食べられる運命なんだから。どうせなら大好きなだいちゃんに食べられて死にたい。だいちゃんの血肉になりたい。ゆりかごからとはいかないけど、絶対に墓場までついて行きたい。自分のこの気持ち悪い気持ちを正当化してだいちゃんのためだなんて言えないけど……でも、何を食べても同じ顔をするだいちゃんを見ているのが辛かった。それは本当。
下を向いただいちゃんの軽く開いた口から、俺の血がぽたぽた垂れている。それが死体に降り掛かっている。喉を噛みちぎられた山中柔太朗の――俺の死体。俺の血は目を開いたままの死体の目に落ちて、白目まで赤く染めて、そのまま涙と混ざって流れ落ちる。馬乗りになっただいちゃんは、さっきまでのとろけたような表情と違う。茶色がかった綺麗な瞳から光が消えて、可愛い顔から笑顔もなくなっちゃった。
あーあ、そんな顔しなくていいのにさ。俺はこれが本望だったんだから。
――おねがい。そのままできるだけたくさん食べて、俺とひとつになってほしい。けどお腹壊したら大変だから、腐ったら捨ててね。あぁだいちゃん落ち着いてよ。泣かないで。大丈夫、大丈夫だよ。だいちゃんが殺したんじゃない、俺が勝手に死んだんだ。俺が、勝手に。
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コメント
1件
おお……これは、えぐいな。いや、表現が暴力的に巧いって意味で。ケーキバースって設定をここまで真正面から、しかも感情ごと抉るように描くか、普通。だいちゃんの「食べちゃいけない」って理性と「もう戻れない」って事実の間でぐちゃぐちゃになってる感じとか、じゅうたろの「俺が勝手に死んだんだ」って献身の裏側にある狂気とか……どっちの視点も正しくて、どっちも救いがないのがもう、読んでて息が詰まったわ。特に「おれの細胞になって、一緒に焼かれて消えるまでは」ってところ、♡♡♡的嫌悪と執着が溶け合ってて背筋冷えた。