この作品はいかがでしたか?
0
この作品はいかがでしたか?
0
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『まずは、展望台へ行こう。』家を出て、バスに乗る。
展望台。
小さいけれど、景色は見えた。
『甘ちゃん、ありがとう。』
茜さんが言った。
本当に、これでいいのだろうか。
茜さんは、助けを求めていた。
この数日、茜さんは、
寂しそうに、遠くを見つめていることが多かった。
他にも少し、いつもと違うと感じることがあった。
僕は、茜さんに近づく。
『茜さん…』
茜さんが、こちらを向いた。
『何か、あった?』
『・・・』
その何かを知ることが、怖い。
なんと言えばいいんだろう。
『はぁっ…』
息が詰まる、
そんな感覚。
ただ、訊くだけなのに、
それが、とてつもなく難しく感じる。
『星、綺麗だね。』
茜さんが、夜空を見た。
『あ、あぁ…』
星が輝いている。
でも、
『琥珀ちゃん、寂しそうだよ?』
茜さんはまるで、気にしなくていいとでも言うような目で見てきた。
僕は、琥珀さんを見る。
琥珀さんが、こちらを見ていた。
『彼氏でしょ?行ってあげて。』
それはまるで、僕を突き放そうとしているように聞こえた。
『・・・』
寂しく感じた。
もう、離れてしまう。
そう思ってしまった。
『3人で見ればいいんじゃないかな。』
僕は言った。
2人じゃなければいけないわけじゃない。
僕は、茜さんの手を握って、琥珀さんのところまで引っ張る。
そして、星の綺麗な夜空を見る。
こんなにたくさん、星があったんだな。
こんなに、星が綺麗に見えるんだな。
本当に、綺麗だった。
『もう、帰ろう?』
茜さんが言った。
ものの5分くらいしかいなかったのに、
『バスは、まだ来ないよ?』
『歩いて、帰ろう?』
本当に、何かがおかしい。
『茜ちゃん?何か、あったの?』
琥珀さんも、気づいたみたいだ。
『ううん。ただ、夜風に当たりながら、ゆっくり歩いて帰りたくなったの。』
『そうか…』
歩いて、下っていく。
このままじゃ、ダメだと思う。
思うのに、何もできない。
そんな僕が、情けなく思った。
『何か、困ったことはない?』
まずは、遠回しに訊いてみる。
でも、
『何もないよ?』
茜さんは、何もないと言った。
『・・・』
何もないとは、とても思えない。
『このあとは、花火するの?』
茜さんは、話を逸らそうとしているみたいだ。
『あぁ、それでいいなら。』
嫌な予感がしてならない。
『甘ちゃんも茜ちゃんも、元気ない?』
琥珀さんが心配そうに見つめていた。
『私は元気だよ。』
茜さんは、笑顔で言った。
本当に、隠しておくんだな。
頼ってもらえないのって、寂しいな…
『僕も、大丈夫。』
僕は、本当に大丈夫。
僕は…
『来年は、海や滝、祭りを楽しめるといいね。』
来年、か。
暗い道を歩いて、山を下り終わる。