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「じゃーん!」
紅釈に半ば強制的に連れてこられたのは
骨組みの曲がったベッドに四方コンクリートに
囲まれた質素な部屋だった。
……部屋と言うよりは独房という方が
正しいだろう。
「部屋は好きなように弄ってもらって
構わねぇからな!俺も好き勝手にモノを
置いてたりするし!」
紅釈はニコニコとしながら他人の部屋に
勝手に入り、ベッドの上にダイブした。
するとベッドからゴキッ!と嫌な音がした。
見た目は特に変わった感じはしないが
嫌な予感はした。
「おおっと、悪ぃな!」
紅釈が照れながら鼻を触った。
「は、ははは……」
折西は内心この人帰らないのかな……
と思ってしまった自分に少し嫌気がさした。
「まあ、その、あれだ。もし困ったことが
あれば俺に相談しな!」
「は、はい…今は特に…」
困ったことと言えばずっと1人になりたいのに
一向に帰る気配を見せない紅釈が居ることだが
その話はそっと胸に隠した。
「いやいや〜!初めてで困ることとか
あるだろ??ほら、あのガリノッポの
金髪メガネとかよ!」
「昴さんでしたっけ?確かに怖い人
かもですね……」
「怖いっつーか、ネチネチしてて
面倒臭ぇよな!!!あいつがなにか
言ってきても気にする必要ねぇからな!!!
もしそれでも困った時は俺に言え!
ぶっ潰してやる!!」
紅釈は歯ぎしりをしながら鼻息を荒くしていた。
「だ、大丈夫ですよ…!まだ何も
されてませんし!
」…踏まれましたけど。とは今の気の立った
紅釈には言えるはずもなく。
「そうか?まあいいや、そろそろ帰るか!
じゃあな折西また明日!」
「さ、さよなら…」
手をブンブン振りながら部屋を出ていく紅釈に折西は戸惑いながら手を振った。
…
鉄格子のある窓を見ると赤い光が
差し込んでいた。
「…もう僕は青い空を見れなくなるので
しょうか…」
時間帯の分からない空に絶望しながら強い睡魔に襲われた折西はベッドの上にそのまま寝転がり、泥のように寝た。
…
(折西くん…折西くん…!)
女性の声が聞こえる。
「んんん…すみません…疲れてて動けなくて…」
(もし今起きたら青い空の下
生活できるんだけど…)
「!?!?!?!?!?本当ですか!?」
折西はガバッと起き上がった。
「おひさしぶり、折西くん。覚えてる?」
黒髪に緑の目の女性はくすくすと笑っている。
「小さい頃折西くんと遊んでたでしょ?」
ひんやりとした女性は折西をぎゅっと
強く抱きしめた。
「は、離してください!大丈夫です
わかります!!!【お姉さん】ですよね!」
「そう!正解!!【お姉さん】だよ!」
『お姉さん(本名は教えてくれない)』は
折西からそっと腕を離した。
「大人になってから夢でしかお姉さんを見なく
なったんですけど元気にされてましたか?」
「うん!元気だよ〜!!折西くんの夢の中でイタズラもできて最高だった!」
「元気なのは良かったです…
けどイタズラはやめてください!!!
睡眠時間不安定になっちゃったんですよ!!」
「えへへ、ごめんね!けどもしかしたら
ここから出れるようになるかもしれないの。
その方法を伝えたくて。」
「出られるって…とはいえここを
出たところで仕事は無いし…」
俯く折西の頭を柔らかい手が優しく撫でた。
「大丈夫。折西くんには沢山の人が
そばにいるよ。」
「それは…幽霊ってことです…?」
「ふふふ、幽霊も人間もかな?」
「どちらにせよ怖い人だけは勘弁です…
ところで出る方法って何ですか…?」
「あ、そうだった。折西くんがここを
出るためにやるべき事があるの。」
「やるべき事…?」
「うん!あのね、この影國会にいる
5人の心の鍵を開けて欲しいの。」
「心の鍵…?」
「そう、心の鍵。ここの職員は
『トラウマ』をみんなひとつずつ持ってるの。」
お姉さんは折西の顔にぐっと近づいた。
そのトラウマから解放して欲しいんだけど…
トラウマから解放するためには鍵穴に
鍵をささないといけなくて…
ほら、折西くんはこの職員さんから
鍵穴のやつ見えたことない?」
「鍵穴……あ…!」
折西は紅釈が逃げてる時に見えた鍵穴を
思い出す。
「見えたかも…鎖の繋がったやつ…!」
そう言うとお姉さんは嬉しそうに
「やっぱり!」と言い折西から少し離れた。
「そう、それを開けて欲しいの!」
「け、けど鍵はどうすれば…?」
「鍵は折西くんが作っちゃえばいいんだよ!」
お姉さんは折西の鼻を人差し指で
ちょんとつついた。
「作るって…!そんなこと」
「できるんだよ。折西くんは
『心鍵師(しんけんし)』だからね!」
「しんけんし…?」
「そう、トラウマ解放の鍵が作れる
数少ない能力者のことを心鍵師って呼ぶの。」
「けど僕…そんな鍵なんて作ったことない…」
「そっかぁ…」
お姉さんは少し悲しそうな顔をした。
「すみません…」
申し訳なさそうな折西を見てお姉さんは
意を決したように手をパンッ!
と叩きまた笑顔に戻った。
「それなら作り方とかは私が教えるね!
とりあえず鍵の材料になるようなトラウマの
原因を知る所からだ!」
お姉さんは折西の手を引いて部屋の外へと
連れ出した。