テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
11
「そんなに、あいつに抱かれたかったのか?」
泣きながら笑い続ける私に、横山は冷たい声で言った。
「わからない。もしかしたら、前世の彼女はそうだったのかもね。強引に迫ることもできたかもしれない。でも私は逃げちゃった」
横山は黙っていた。
「別に欲求不満で、誰にでも抱かれたいってわけじゃないの。お互いに好きならするはずのことをしたいだけなの」
「宝山のことが好きなのか?」
「可愛いと思うし嫌いじゃないけど、そういうんじゃないかも」
「じゃあなんで、デートなんてしてるんだよ」
「誘われたら断れなかったっていうか……」
「誘われたら誰とでもデートするのか?」
「しないよ! 宝山君のことは本当に可愛い後輩と思ってるし。誰かといたいと思った時にタイミングよく誘ってきたんだよね」
横山はまるで怒ってるみたい。ヤキモチ? 自分の首から上が少し熱くなるのを感じた。
「自分でも何が何だかわからないの。でも、ツクシちゃんに今一番会いたい人は、って聞かれて横山の顔が浮かんだ」
「……俺に抱かれたいって思う?」
「……思うよ」
自分で聞いておいて、驚いてる横山を見てまた笑ってしまった。
「帰るぞ」
「えっ?」
「うちタクシーですぐだから」
会計をして手を引かれ、あれよあれよとタクシーに乗せられた。
「説明! 今どうなってるの?」
「お互いの誕生日が過ぎたら告白しようと思ってた。そして思う存分抱こうと思ってた」
ちょっ、タクシーの中ですよ!
「じゃあ、待つ?」
「待たない」
「それはどういう変化なの?」
「前世なんかに負けてたまるかと思った。俺たちで、完全に成仏させてやろう」
「私のは未練だけど、横山のはなんか違う気もするけど」
「だ、か、ら! 今夜はお前には何もさせないから。俺も呪縛を断つ」
「私には何もさせてくれないの?」
「そう。まずはな」
もう二人とも、いや運転手さんも合わせて三人で顔真っ赤になっていたと思う。
タクシーを降りて横山のマンションのエレベーターに乗り込む。あ、忘れてた。
「ねぇ、夏樹?」
「ん?」
「好き」
「そうか、忘れてた。市子、好きだよ」
そして、私たちは横山の部屋に入っていった。
何度もキスを交わし、服を脱がせ合う。つもりだったが、私だけが脱がせられ彼は自分で脱いでいた。
「こんなのもダメなの?」
「今日はね」
シャワーを浴びようなんてどちらも言わない。とにかく早く素肌で抱き合いたかった。
「本当は最初くらいは優しくしたいんだよ」
そう言いながらも、私の両手を頭の上で押さえて噛み付くように愛撫してくる。
「私だって夏樹を抱きしめたい」
「それは次ね」
そう言って彼は私をうつ伏せにして腰を持ち上げるようにした。もう私にできることはない。受け入れるだけ。
私は獣のような今まで出したことのない声を出して、彼を全身で感じた。あまりの激しさに終わって欲しいようなまだまだ終わらないで欲しいような、そんな初めての感覚を味わっていた。
一度目の熱がひいていくのを寂しく思いながら、私たちは抱き合いながら横になっていた。キスをしながら身体を寄せると、夏樹はまだ元気のようだった。
私は夏樹を仰向けにして、キスをしながら上に乗っていった。夏樹が驚いて避けようとする。
「ねぇ、あなたを気持ち良くするためだけにするんじゃないの。一緒になるの。信じて」
彼の両手を私の胸に当てて、私は彼にまたがり腰を振る。
私だってこんなことをするのは初めてなんだ。いつも宝物のように一方的に優しくされてきた。だからきっと下手くそだ。
でも、私の気持ちが伝わったのだろう、彼は右手で私の胸を愛撫し、左手で腰をなぞりはじめた。
ああ、もどかしい。
彼を気持ち良くしてあげたい気持ちはあるけれど、また激しくして欲しい。そんな気持ちになってきた。それが伝わったのか、彼も我慢できなくなったのか、夏樹は上半身を起こし、そのまま私の背中を優しくベッドに落とした。
そして今度は、激しく、優しく、交互に時間をかけて抱かれた。私も両手で夏樹を抱きしめることが許されていた。
夜明けが近い。
私は夏樹の胸に頭を乗せ足を絡ませながら聞いてみた。
「まだ私のこと抱きたいと思う?」
「全然」
「えっ」
「全然足りないよ」
「もうっ」
本気で泣きそうになったじゃないか。鎖骨の下を軽く噛んでやった。
「いてて。そっちはどう? 俺に尽くしたいとか思う?」
「全然。して欲しいことがあったらもちろん検討はするけど」
「あはは、検討ね。誕生日数日前でこれなら、もう大丈夫そうだな」
「私もそう思う。前世より今世の欲望が勝った感じ」
「そんなにしたかったのか」
「そうよ、悪い?」
「いや、好きだよ。市子と出会えて良かった」
「私も。でも、とりあえず誕生日過ぎたら、今までよりも会社の人たち厳しくなるかもしれないから気を引き締めていこう」
「だな」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!