コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
旅館に用意されたお部屋には露天風呂が備え付けられているみたいだし、先ずは温泉を堪能することにした。温泉付き旅館に泊まったら何回かお風呂に入るのは当たり前だよね……?温泉が身近にあった前世だからかな?いや、日本人なら何度も入る筈(偏見)。
「もうお風呂に?」
「そうだよ、色々あったし先ずはさっぱりしたいからさ」
事故を止める時に汗も流れたし、血塗れだったから何となくさっぱりしたい気分になってる。まだ夕食までは時間もあるしね。
フェルの手を引いて脱衣所へ。お部屋に用意されているものにしては広いなぁ。よし。
「フェル、ぱぱっと脱いじゃおう。脱いだ服はこっちに入れてね」
「分かりました」
私達は服を脱いで脱衣所に用意されている籠へ放り込んでいく。アードの服はそもそも薄着だし、フェルはワンピースだけだから脱ぐのも簡単だ。
……リーフ人もアード人も下着と言う概念がないんだよね。なんで?と考えたけど、文化的に発展することが無かったみたいだ。服その物に防護魔法が編み込まれているから、擦れたりしないんだよね。
おトイレ?
……これが転生して一番驚いたんだけど、アードにはトイレがない。いや、厳密にはアード人、そしてリーフ人には排泄と言う概念が無い。口にしたものは100%吸収されてしまう……らしい。
エネルギー吸収効率が地球人の比じゃない。陸地が少なくて得られる食物が限られていたから無駄無く吸収するように進化したんだとされている。私は生物学者さんって訳じゃないからよく分からないけど、前世でよく見かけたアイドルはトイレにいかない何て幻想を素でやってる種族だ。
それはさておき。
「おー……」
「これは……」
さっさと服を脱いで浴場へ入ると、立派な露天風呂があった。私達に配慮したのか檜で作られた湯船は大きくて数人が纏めて入れるくらいの広さがある。浴場の床は石造りだけど、怪我をしないようにつるつるだ。滑らないように気を付けないといけない。
そして大切なのは景色なんだけど、豊かな森が広がってて川も流れている。遠目には東京のビルも見えるし、夕陽に照らされたこの景色は絶景と言える。
「外にあるお風呂なんですね」
「それが露天風呂だよ」
温泉はバイカル湖でも経験した。あっちも雄大な自然を楽しめたけど、やっぱりこっちの方が楽しいと感じてしまうのは前世の記憶のせいかな?
まあでも最初にやることはいつになっても変わらない。
「フェル、先ずは身体を綺麗にしよう。湯船に入るのはそれからだよ」
「じゃあ浄化魔法を使いますね」
身体を綺麗にしてしまう魔法で、アードとリーフでは一般的だ。だってこれを使えばお風呂に入る必要は無くなるんだよね。
でもそれじゃ風情がない。前世では全く縁がなかったし、今世は性別すら変わってしまったけど……やってみよう。
「そうじゃなくて、せっかくだからここのやり方で身体を綺麗にしようよ」
「ここのやり方、ですか?」
「これを使うんだ」
良かった、何十年経ってもやり方は変わらない。スポンジに石鹸をつけて泡立てる。あとは簡単だ。
「フェル、そこに座って。洗ってあげるから」
「えっ?ティナにそんなことを……」
「良いの良いの、私がやりたいんだからさ。それとも、フェルは嫌かな?」
「そんなことはありません。じゃあ、お願いしますね」
「うん、お願いされました」
泡立てたスポンジで優しくフェルの背中を洗う。もちろん羽根には一切触れないように注意してる。私達の翼と同じように、リーフ人の羽根だって凄く敏感なんだ。例え家族相手でも触らせるのを躊躇するくらいに。
お母さんは遠慮なく触ってきたけど、あれは例外。お母さんの毛繕いならぬ羽根繕いは危ないお薬並みに危険だ。
「不思議な感覚ですね、こうやって他の人に身体を洗って貰うなんて」
「身体を洗ってあげるのは信頼の証なんだよ?フェルだって見ず知らずの人に任せたりはしないでしょ?」
「はい、最初はビックリしましたけど……ティナだから」
「ふふっ、ありがとう」
フェルのお肌は滅茶苦茶綺麗だし、傷一つない。とんでもない美少女だし、当然ではあるけどさ。
よし。
「終わったから流すね?」
「前はしてくれないのですか?」
「それはちょっと恥ずかしいかな?」
見るのは問題ないけど、触るとなると抵抗があるのは前世が男だからか。それとも今の個性なのか。判断に迷うなぁ。
「もう、ティナだったら良いのに」
「まあまあ、背中を流すことに意味があるんだからさ」
差し出したスポンジを受け取ったフェルはちょっと不満そうにしながらも身体を洗い始めた。形の良い胸部が押し潰されながら洗われる様子は……正直目に毒だ。手足もスラッとしてるし。
規格外の魔力に規格外の美貌、更に控え目で優しくて礼儀正しい性格。これぞまさにチートだと言えるんじゃないかな?
一通り洗い終わったみたいで、桶に汲んだお湯で流してあげる。綺麗になったね。
「じゃあ、次はティナの番ですね」
「え?私は良いよ。自分でやるから」
「シフト」
「はえっ!?」
フェルが何かを呟いた瞬間、何故か私が椅子に座っててフェルが後ろにいる。前後の位置を切り替えた!?
「こんなことで魔法を使わなくても良いのに」
「私にとっては大事なことなんですよ。ほら、じっとしてください」
「うーん……わかったよ。じゃあ、お願いするね」
フェルは私の見よう見まねでスポンジを泡立てて優しく背中を洗ってくれた。これ良いなぁ……自分でやるより気持ちよく感じるから不思議だよね。
「間違っていませんか?痛くありませんか?」
「大丈夫だよ、フェル。むしろ気持ちよくて眠ってしまいそうだよ」
いやぁ、これ良いなぁ。プラネット号のお風呂でも洗いっこしよっかな?
呑気にそんなことを考えていたら……。
「うひゃあっ!?ちょっとフェル!?」
フェルが急に私の翼を触ってきたからビックリした。手が当たったのかな?
「ここも綺麗にしないといけませんよ?」
「いや、翼は自分でやるから大丈夫だよ!」
フェルだってしてないじゃんか!
「大丈夫です、アード人の翼の手入れの仕方はティアンナさんから学びましたから」
お母さんなに教えてるのさ!?
「良いよ、私は自分で……うひゃいっ!?」
優しく触られただけで全身がゾクゾクする。これは危ないっ!逃げようにもいつの間にかお腹に手を回されてガッチリ捕まってるし!
「ふふっ……ティナ、可愛い……」
「ちょっ!駄目だってっ!フェル!だめ……んっ!ひゃうっ!?……だめだめだめ!それだけは……あっ……!」