コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
生まれたばかりの幼い命から今まさに天寿を全うされる紳士淑女の皆様、ご機嫌如何だろうか?異星人対策室のジャッキー=ニシムラ(MK Ⅱ)だ。
東南アジアの小国で発生した大災害は見る者全てに強い衝撃を与えた。政府首脳陣が我先に逃げ出して混乱を極め、そして世情の乱れは無力な一般市民に容赦なく襲い掛かった。その混乱の中で失われた命は数知れず。謹んで哀悼の意を捧げる次第だ。
各国による手厚い救済支援、そしてなによりティナ嬢による介入によって最悪な事態は防ぐことが出来た。ティナ嬢が関与した以上、各国も下手な真似は出来まい。彼女の不興を買うだけなのだからな。
ティナ嬢は意図せずに数多の命と彼等の未来を守ったことになる。彼女の、いや、彼女達の行動は誇らしい限りだ。
ミスター朝霧と一緒に派遣された私ではあるが、現地当局と些細な行き違いにより拘束されてしまうと言うアクシデントが発生してしまったが、まあ些末な問題だ。
当局の責任者が同好の士であったのは幸運だったとだけ言っておこう。
そのおかげで、ティナ嬢達の危機に馳せ参じることが出来たのは幸いだった。ミスター朝霧の偽者を使った誘拐未遂事件は、何とか最悪の事態を招く前に解決することが出来た。最悪の事態とは地球人がティナ嬢達に攻撃することだ。
スーパーマーケット事件では相手が凶悪な強盗で、しかも合衆国内であったことから揉み消すことが出来たが、今回は他国でしかも相手は明らかに某国系列の工作員だ。
そんなことが明るみに出れば全世界に波紋が広がるのは避けられないし、アードとの交流に影響が出るのは明らかだ。いや、違うな。最悪のケースはティナ嬢達が、正確にはフェル嬢が武力による反撃及びそれに伴う地球人の殺害か。こうなっては事態はより深刻になっただろう。
幸いにして我々が間に合い地球側が解決したことで事態は沈静化した。工作員たちは捕えられて合衆国へ移送される運びとなった。現行犯だったし、証拠もある以上某国も抗議は出来まいよ。
今回は間一髪だった。新たに来訪してくれたティリス嬢、彼女は幼い見た目でティナ嬢の妹を名乗っているが……得体の知れぬ何かを感じたのは私だけのようだ。少なくとも彼女を見た目通りと判断して接することは危険だ。ケラー室長にも伝えておく必要があるな。
ティナ嬢たち三名はそのまま合衆国へ向かわずに日本へ向かうことになった。日本政府の強い要望であり、更にティナ嬢が椎崎首相との面会を望んだことが決め手となったのだ。
合衆国政府としてもここで断ってティナ嬢の機嫌を損ねるのは愚策と判断したようだ。他国の抗議を抑え込み、むしろ率先して日本への来訪を後押しした。
……ティナ嬢はこの程度で機嫌を損ねるような娘では無いと思うのだがな。我が母国は些か及び腰に過ぎる。
まあ、スーパーマーケット事件、そして逃げ出した小国指導部の末路を見れば仕方の無いことかもしれないが。
今現在、日本には他国からの諜報員が多数潜入している。もちろん我が合衆国からもだ。これはCIAから直接異星人対策室に連絡が来た。極秘の案件ではあるが、ケラー室長の人柄を信じてくれたのだろう。
我が合衆国の諜報員を含め、各国が探りを入れている目的は一つ。ティナ嬢と椎崎首相との個人的な繋がりを突き止めることだ。何せ来日して早々ティナ嬢は椎崎首相と熱烈なハグをやってみせたのだ。かなり深い関係であることは容易に想像できるだろう。
各国はこの両者の関係が、今後拡大していくであろうアードとの交流に影響を与えることを危惧している。
今でこそ合衆国が交流の主導権を握っているが、今後は日本に奪われて更にアードからの恩恵を独占されるのではと考えているのだろうな。
ティナ嬢の性格を考えればその可能性は存在しないと断言できるが……やはりコミュニケーションは大切だ。彼女の善性は直接接することでしか実感できない類いのものだ。
この件については正直深入りしないほうが良いだろう。そう考えていたら、ケラー室長も早速大統領に掛け合った様だ。流石は室長、私ごときの考えなどお見通しだな。実に誇らしく頼もしい。
日本には薮蛇と言う言葉があるらしい。実に的を射ているな。この件を下手につつけば、蛇より遥かに恐ろしいものが牙を剥くのを合衆国はよく理解している。
探るような真似はせず、また謀略など張り巡らせることなく彼女達が気持ちよく地球を満喫できる環境を整える。それが正解だ。
地球人は内輪揉めに慣れてしまっているからな、外交も腹の探り合いや駆け引きが当たり前となっている。いや間違いではないのだが、ティナ嬢相手には明らかに下策だ。
それを地球の指導者たち正しく理解する日を願うばかりだ。
さて、私も父祖の国へ無事に到着しティナ嬢たちと合流するために動こうとした矢先、ミスター朝霧から父祖の国を満喫してはとの提案があった。
私は日本語も余り分からないが、死んだ祖父は良く母国の話を聞かせてくれたし、興味がないとは言えない。
とは言え異星人対策室の一員として職務に邁進せねばと断ろうとしたが、ケラー室長からも羽根を伸ばすように言われてしまった。
やれやれ、ミスター朝霧の根回しは抜かりがないな。ここまでされて無下にするのは礼を失する。私は素直に好意を受け取り、いつでも連絡が付くようにして父祖の国を満喫することにした。
日本人は勤勉と聞いていたが、これ程とは思わなかった。忙しなく行き来する大勢のビジネスマン達を見ると身が引き締まる思いだ。また日本は文明と自然と文化が見事に調和した社会だと言う。
ビル街の中にテンプル、つまり寺院だったか?それらが当たり前のように存在し、時折和服……民族衣装を身に付けた人も見掛けた。いやはや、合衆国とは何もかもが違うな。
訪れる場所や店舗の人々は礼儀正しく、サービス精神も旺盛だ。ついこちらも頭を下げてしまうのだから不思議だな。私の身体を流れる父祖の血がそうさせるのだろうか。
ふと立ち寄った場所に犬の像があった。忠犬ハチ公、幼い頃に祖父から聞かされた話はよく覚えている。日本人は義理堅いとも聞くし、その精神は犬にまで伝播しているようだ。
私もケラー室長と言う主人に忠誠を誓う者。先人足る彼に敬意を示していると。
「お兄さん、ちょっと良いかな?」
日本のポリスが話し掛けてきた。当然日本語だ。私はすぐに携帯端末を起動した。今の時代、携帯端末が正確に翻訳して音声で流してくれるのだから有難い。
無論少しばかりタイムラグが存在するが、昔は通訳と言う専属の職業が存在したらしい。今でも居るには居るが、数は少ない。
「やあ、お巡りさん。私はこんな見た目だが合衆国人なんだ。済まないが翻訳を使わせて貰うよ」
「ああ、日系の方でしたか。ようこそ、日本へ」
「ありがとう、父祖の同胞に歓迎されるのは嬉しい限りだ。それで、なにかな?」
「いや、実は貴方の格好が公衆風俗に反するものになるので……少し署でお話でもしながらルールをお伝えしたいのですが」
「むっ、そうなのか。それは失礼した。この国には郷に入っては郷に従えと言う言葉があるんだろう?父祖の恥にはなりたくない。お世話になるよ」
「ではこちらへ」
『速報。忠犬ハチ公像前で犬耳メイド服を着用し|M字開脚《卑猥な行為》をしていたムキムキマッチョマン、連行されるwww』