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第26話 振り返ってごらん
――文化祭当日。
午後。
さっきまで教室を回って、いろんなクラスの出し物を見ていた。
笑って。
遊んで。
いっぱい楽しんだ。
だけど――。
これからは、俺たちの番。
体育館の近くまで来ると、たくさんの人の声が聞こえてきた。
「次の発表、もうすぐだよ!」
「席空いてる?」
「バンドだって!」
❤️「くるかなくるかな?」
🩷「大丈夫かな…笑」
🤍「楽しみだなー!」
体育館の中には、たくさんの生徒が集まっている。
知り合いの声も聞こえてくる。
💚「……すごい人だね」
🖤「やばいな」
💛「……」
隣を見る。
たっつんが、ベースケースの持ち手をぎゅっと握っていた。
💚「たっつん?」
💛「……緊張してきた」
💚「え?」
💛「いや、さっきまでは普通やったんやけど……」
たっつんが体育館のほうを見る。
💛「人、多すぎやろ……」
💚「あはは!」
💛「笑うなや!!」
💚「大丈夫大丈夫!」
🖤「大丈夫大丈夫!」
💛「その『大丈夫』、ほんまに信用してええんか!?」
💚「多分!」
🖤「多分!」
💛「多分なんかい!!」
思わず3人で笑う
🖤「あ、そろそろ準備だよ」
💚「うん!」
うりはいつも通りの笑顔。
だけど。
よく見ると、少しだけ表情が硬い。
💚「うりりんも緊張してる?」
🖤「……してる」
💛「大丈夫?」
🖤「やばい!」
💚「あはは!」
🖤「だって……」
うりが体育館を見る。
🖤「今日のために、ずっと練習してきたからさ」
その言葉に、俺たちは黙った。
最初は、本当にひどかった。
俺はドラムをまともに叩けなかった。
たっつんはベースの持ち方すら分からなかった。
そしてうりが何度も教えてくれた。
三人で何度も練習した。
音が合わなくて、笑ったこともあった。
失敗して、やり直したこともあった。
でも――。
#からぴち
まい
204
123
今日まで、ちゃんと続けてきた。
🖤「……だからさ」
うりが俺たちを見る。
🖤「絶対、楽しもう」
💚「……うん!」
💛「……せやな」
🖤「失敗してもいい。間違えてもいい」
🖤「でも、今日しかできないから」
うりが笑う。
🖤「三人で、最高の思い出にしようぜ!」
💚「もちろん!」
💛「おう!」
三人で拳を合わせる。
そのとき。
「次の発表は、3年生2人と2年生1人によるバンドです!」
🐸「きたきたー!」
🩵「何歌うんだろー!」
🧡「こっちまで緊張してきた!」
体育館から声が聞こえた。
💚「……!」
💛「来たな」
🖤「行こう」
俺たちは、ステージへ向かった。
*
ステージに出る。
体育館いっぱいに、生徒たちが座っている。
教室のときとは、全然違う。
こんなにたくさんの人に見られるなんて。
💚「…………」
ドラムの前に座る。
俺はあんまり緊張してないけど…
2人ともちょっとだけ手が震えてる。
たっつんがベースを構える。
うりはギターを持って、マイクの前に立つ。
客席を見る。
そこには、クラスのみんな。
他のクラスの友達。
先生たち。
そして――。
いつもの仲間たちもいた。
💚「……」
なんだか、少しだけ安心した。
俺たちは一人じゃない。
たっつんを見る。
💛「……」
たっつんも俺を見る。
そして、小さく笑った。
うりもギターを構える。
🖤「……いくよ」
俺はスティックを握る。
そして――。
🖤「せーの!」
ドンッ!!
ドラムの音が体育館に響いた。
ベースが重なる。
ギターが響く。
そして――。
うりの歌声。
高く透き通っていて、それでいてなんだか少しだけあどけない歌声
最初は少しだけ緊張していた。
でも。
音が重なっていくにつれて。
その緊張は、少しずつ消えていった。
俺はドラムを叩く。
リズムを刻む。
隣では、たっつんがベースを弾いている。
最初の頃より、ずっと上手くなった。
そしてうり。
俺らより少し手前にいる。
ギターを弾きながら歌う姿は、いつものふざけた姿とは全然違う。
真剣で。
楽しそうで。
…かっこいい。
俺も自然と笑っていた。
たっつんも――。
いつの間にか笑っていた。
演奏は続く。
途中、ほんの一瞬だけ。
俺の音が遅れた。
でも。
たっつんがそれに合わせる。
うりもそれに合わせる。
俺もすぐに戻ってこれた。
そして。
三人の音が、また一つになる。
ドラム。
ベース。
ギター。
歌。
全部が重なって。
音の輪が、体育館いっぱいに広がっていく。
俺は思った。
――楽しい。
ずっと練習してきた。
何度も失敗した。
でも。
今は、ただ楽しい。
そして。
曲は最後へ向かっていく。
うりがギターを強く鳴らす。
俺も最後のリズムを叩く。
たっつんもベースを鳴らす。
そして――。
ジャーーーーン……。
音が止まった。
体育館が、一瞬だけ静かになる。
💚「…………」
💛「…………」
🖤「…………」
そして。
――わああああああ!!
大きな歓声が体育館いっぱいに響いた。
拍手。
歓声。
笑顔。
🩵「すごーい!!」
🩷「かっこいいです!」
❤️「やばー!!」
俺たちを見ているみんなが、手を叩いている。
💚「……!」
俺は思わず立ち上がった。
💚「やったーーーー!!」
💛「……やったな!」
🖤「……!」
うりも驚いたように目を見開いている。
そして。
🖤「……俺たち、やったんだ」
💚「うん!!」
💛「やったやん!」
三人で顔を見合わせる。
自然と笑いがこぼれた。
ステージを降りる。
*
舞台裏。
俺たちはその場に座り込んだ。
💚「疲れたーー!!」
💛「めっちゃ緊張した……」
🖤「俺も……」
うりがギターケースを置く。
少しだけ息を整える。
💚「でも!」
俺は笑う。
💚「めっちゃ楽しかった!」
💛「……うん」
🖤「……俺も」
うりはギターを見る。
そして、少しだけ笑った。
🖤「俺さ」
💚「ん?」
🖤「最初に言ったじゃん」
💚「うん」
🖤「才能があるからできるんじゃなくて、頑張ってるからできるんだってことを見せたいって」
💛「……そうやったな」
🖤「今日、ちょっとだけ分かった気がする」
うりが俺たちを見る。
🖤「ここまで来られたのは、俺一人の力じゃない」
💚「……!」
🖤「二人が一緒にやってくれたから」
💛「……へへ」
🖤「たっつん」
💛「なに?」
🖤「ありがとな」
💛「……」
たっつんは少しはにかんで笑った。
💛「俺も……楽しかった笑」
🖤「じゃぱさんも!」
💚「俺?」
🖤「ありがと」
💚「俺も楽しかった!」
🖤「あはは!」
三人で笑う。
文化祭のために始めたバンド。
最初は、ただ『やってみたい』という気持ちだけだった。
でも。
練習して。
失敗して。
笑って。
また練習して。
今日。
三人の音は、ちゃんと一つになった。
振り返ってみると、俺らはずっとひとりじゃなかった。
ずっと、三人だった。
不揃いな音。追いつかない音。掠れた歌声も。
きっと独りじゃ続かなかった。
気づけばこんなにずっと遠くまで来たんだ。
俺らのバンドは、寄り道もあったけど、
最高の仲間だと胸を張って言える。
俺らのバンドは成功した。
でも、もし失敗してたとしても、それもそれでいいと思える。
笑ってしまうくらい、泣いてしまうくらいに。
🖤「本気になれたことが、嬉しいと思えてよかった」
💚「よかったじゃん笑」
🖤「うん…少しだけ強がりだけど」
💛「めちゃめちゃええやん!」
うりは少しだけはにかんでいたずらっぽく笑った。
子供みたいな無邪気でかわいい笑顔。
🖤**「俺は…これからもずっと…音楽が好きっ!」**
*
夕方。
文化祭が終わった。
校舎には、まだ少しだけ余韻が残っている。
廊下の飾りを外す生徒。
机を運ぶ生徒。
ゴミを集める生徒。
「これ、こっち!」
「忘れ物ない?」
「今日楽しかったね!」
さっきまでの賑やかさが、少しずつ静かになっていく。
3年A組でも、みんなで片付けをしていた。
💚「この飾り、どうする?」
「箱に入れといてー!」
💚「はーい!」
💛「じゃぱぱ、こっち持って」
💚「おっけー!」
最後の片付けが終わる。
教室を見回す。
朝はあんなに華やかだった教室。
今は、少しずついつもの教室に戻っている。
💚「……終わっちゃったね」
💛「せやな」
たっつんが少し寂しそうに笑う。
💚「でも、楽しかった!」
💛「うん」
そこへ。
🖤「二人とも!」
うりが教室の入口から顔を出した。
💚「うりりん!」
🖤「今日一緒に帰ろーぜ!」
💛「うん!」
三人で廊下を歩く。
窓の外には、オレンジ色の空。
秋の冷たい風が、少しだけ吹いている。
💚「……文化祭、終わったんだね」
💛「ほんまやな」
🖤「なんか、あっという間だったな」
💚「うん」
三人で歩く。
今日一日のことを思い出す。
メイド喫茶。
ギャルカフェ。
お化け屋敷。
謎解き。
射的。
迷路。
フォトブース。
そして――。
バンド。
たくさん笑った。
たくさん走った。
たくさん緊張した。
でも。
全部、楽しかった。
🖤「……なあ」
💚「ん?」
💛「なんや?」
🖤「またいつか三人でバンドやらない?」
💚「えっ!」
💛「……」
たっつんが少し考える。
💛「……まあ」
💚「やった!」
💛「まだ『やる』とは言ってへんぞ!?」
💚「えー!」
🖤「じゃあ、やるってことで!」
💛「話聞けや!!」
三人の笑い声が、夕暮れの廊下に響く。
文化祭は終わった。
でも。
今日できた思い出は、きっとずっと消えない。
そして。
俺たちの音も。
今日で終わりじゃない。
またいつか。
三人で音を重ねる日が来るのかもしれない。
秋の空の下。
俺たちは笑いながら、学校を後にした。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ついに文化祭編終了です!文化祭編めちゃくちゃ好きで!かいててすごく楽しかったです!
そして今回は本家様のあの曲イメージです!ヒロくんの回にいれようと思ったんですけど、あまりにもこのお話に合ってたので今回のお話にいれました!
次回はじゃぱたつ回…?
次回 第27話ちゃんと見てるよ ♡60↑
コメント
4件
ちょっと、、、泣けるんだが!?さいこうです✨頑張ってください!曲は、、って曲なの!?分からんのだがヒントください
いやー、文化祭編クライマックス、最高でしたね!バンド演奏のシーン、三人の音が少しずつ重なっていく過程が丁寧に描かれていて、ドラムの遅れを二人がカバーするところで泣きそうになりました。「失敗してもいい、今日しかできないから」ってうりの台詞、本気で何かに向き合った人だけが言える言葉だなって。そういう積み重ねがあったからこそ、ラストの「音楽が好き」が心に響きました。次回のじゃぱたつ回も楽しみにしてます!