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「先生、聞いてくださいよ!」

「どうしたね、小林君?」

「この前、僕の友人が、一人暮らしの寂しさを紛らわすために、オウムを飼うことにしたそうです」

「ほう。オウムを飼うより、恋人でも作った方がいいと思うがね」

「僕の友人も、独身の先生に言われたくはないと思います! それで、しばらく飼っているうちに、言葉を覚え始めたそうなんです」

「ふむ。オウムの特技だね。実はカラスなんかも声マネできるそうだが、鳥は器用だね」

「それで、朝はオハヨウ、夜はオヤスミ、帰ってきたときにはオカエリ、と言ってくれるようになったそうなんです」

「………………なるほど、ね」

「先生、お気づきになられましたね。そうなんです。僕は彼女に、すぐに部屋のカギを変えるように言っておきました」

「小林君、それではだめだよ。その友人の家はわかるね?」

「えっ!? は、はい。それがいったい……?」

「今すぐにそこに行こう。君は車を持っていたね」

「はい、役立たずの先生を連れていくのに必須だと思って、免許をとりました! しかし先生、いったいどういうことですか?」

「君は私を本当にしたっているのかね? まあいい、時間が惜しいので車の中で話そう」




車中――

「さて、小林君。君はオウムの異変に気づいたね?」

「はい。オウムは人間の言葉を覚えて繰り返します。相手の言ったのと同じ言葉をしゃべるはず。だから、オハヨウ、オヤスミは分ります。でも、部屋に帰ってきたときに言うのは「ただいま」です。オウムが「オカエリ」と言うのはおかしい。だから僕は、その部屋に誰かが侵入し、言葉を教えている可能性を考えて、彼女の部屋の鍵を変えるように言ったんです。何がまずかったでしょうか」

「いい線はいっていると思うよ。だが、部屋に侵入した人間が、わざわざ「オカエリ」と言う言葉を教えるだろうか? そうではないんだよ、小林君」

「どういうことでしょう?」

「鳥の耳は、人間と同じくらいか、やや悪いぐらいらしい。それでも、人間よりも小さな音を正確に聞き取ることが出来るそうだ。――つまり、君の友人が部屋に帰ってきたとき、誰かが小さな声で「おかえり」と言っていた可能性があるんだ。オウムはそれを聞きとって覚えた可能性がある。鍵を変えてもダメさ、そいつはすでに中に侵入しているのだから」

「!!」

「ところで小林君」

「なんでしょう、先生?」

「君は、戦闘に自信はあるかい? 思わず飛び出したが、僕は体を使うことはからっきしでね。警察に連絡した方がよかったかな」

「先生、僕、柔道と空手、剣道と合気道、あと古武術の心得があります!」

「…………今後は君のこと、もう少し大切にしようと思ったよ」

終り

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