春の終わり、大学の卒業式目前。
晴人はすでに講義に通うこともなく、外出すらしなくなっていた。
「晴人、おいで」
悠真の一言で、裸足のままフローリングを這う。
シャツ一枚を羽織った身体は震え、首元には黒い革のチョーカーが光っていた。
「今日は、俺がいない間もずっと、檻の中で待っててね」
「うん……お願い、閉じ込めて……俺、一人になると怖いの……悠真の命令がないと、呼吸も……」
「わかってるよ、晴人。お前は俺の犬だ」
悠真が部屋の隅に置かれた檻の扉を開ける。
中には小さな毛布と水皿、排泄用のトレイ。
「ありがとう……閉じ込めてくれて……安心する……」
晴人は這って中に入り、すとんと丸まった。
その背中にそっと毛布をかけると、悠真は扉を閉め、鍵をかける。
「今日は、帰ってきたらご褒美に、好きなだけイかせてあげる」
「……っ、うれしい……うれしいよ、悠真……待ってる……待ってるから……ずっと、犬でいるから……」
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