春、大学のキャンパスに風が吹く。咲きかけた桜の枝を背景に、学生たちは卒論の提出に追われ、春休みの予定を話し合いながら歩いていた。
その中に、晴人もいた。
ノートパソコンを抱え、淡く微笑み、誰もが知る“優等生”としてゼミ室へと向かう。
ただ一つ――
誰にも見えない場所に、“鎖”があった。
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◆ 午前8時:出発前の儀式
「シャツ、脱いで」
晴人は朝食を食べ終えると、悠真の前に膝をつき、命令を待った。
「今日の指示、言って」
悠真はスマホを見ながら、柔らかく笑った。
「今日は、後ろにローターと、前にリング。ちゃんとパッドを入れておかないと、制服に染みるよ?」
「……はい……わかってます。ちゃんと着けて……」
晴人は下着を脱ぎ、ベッドの上に四つん這いになる。
悠真が潤滑剤を塗った指で、慣れきった晴人の後ろを軽く撫でると、そこに小さな機械を差し込んだ。
「っ……ふ、う……」
「もう、入れられるとすぐ反応するね。じゃあ、前も」
晴人の前側のそこに、根元を締め付ける金属製のリングがはめられる。
そして、その上からトレーニング用のスポーツパッドを当てて、スラックスを履く。
スーツを着て、眼鏡をかければ、誰もが好青年にしか見えない。
だがその実態は、全身に快楽を封じられた肉体だった。
「今日の命令、覚えてる?」
「……昼休みまで我慢すること。絶対に、射精しないこと。自分で触らない。命令があるまで動かない」
「いい子。……頑張って」
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◆ 午前11時45分:静かな地獄
(……やばい、熱い、奥……震えてる……)
講義中、悠真からの遠隔信号で、尻の奥のローターが時折ぴくんと震える。
晴人は必死に膝を閉じて、前が膨らんでこないように呼吸を整える。
「……次、発表は――晴人くん、いける?」
「……はい」
(声が……出る……でも、震える……!)
プロジェクターに向かい、スライドを進めながら、頭の中では快楽と理性のせめぎ合いが続いていた。
リングのせいで、前が勃起しきれず、苦しさだけが増していく。
喋るたびに喉が乾く。
自分の中でどくどくと脈打つローターと、股間の熱に汗が滲む。
(お願い……早く、帰らせて……ご褒美が、欲しい……)
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◆ 午後6時:ご褒美の夜
帰宅後、玄関で靴を脱ぐと同時に、晴人はその場に膝をついた。
「……ただいま、戻りました……悠真さま」
「おかえり、晴人」
悠真はそのままリビングの床に腰を下ろし、晴人の顎を引き上げる。
「ちゃんと我慢、できた?」
「……はい……お漏らしも、してません。命令、守りました」
「えらい。じゃあ、外してあげるね」
リングを外された瞬間、抑えていた衝動が爆発したように、前がびくびくと跳ね上がった。
同時に奥のローターも抜き取られると、濡れきった内部から音を立てて快楽が漏れ出す。
「ご褒美、欲しい?」
「欲しい……いっぱい、ください……壊れるくらい、して……」
悠真は晴人をソファに仰向けにし、身体を貪るように重ねた。
「晴人は、俺の誇りだ。誰にも渡さない。……社会の中にいても、心も身体も、全部俺のもの」
「うん……誰に見られてもいい。俺、悠真の犬だから……誇りに思って……」
その夜、晴人は何度も快楽に果て、
泣きながら何度も「ありがとう」を繰り返した。
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✦ 終幕:社会に溶けた鎖
晴人は卒業し、就職活動を始める。
面接も、会社説明会も、誰から見ても品行方正で落ち度のない人間だ。
だが、悠真がセットしたGPSで常に居場所は監視され、
時折、トイレでローターを撮影して報告しなければならない。
晴人は、まるで誇らしげにそれをこなす。
“社会の顔”と、“犬の本性”を完璧に使い分けながら。
悠真が笑うと、晴人はそのたびに“生きている”と感じた。
それは、鎖の上で踊るような、
誰にも壊せない、ふたりだけの「日常」だった――。