テラーノベル
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翌日の午後、僕はベッドからゆっくり起き上がった。
まだ体はだるくて頭も重いけど、若井が用意してくれたお茶を少しずつ飲んだ。
その時、玄関のチャイムが鳴った。
若井がドアを開けると、そこには満面の笑みを浮かべた涼ちゃんが立っていた。
「やっほー!元貴、久しぶり!」
明るい笑顔で声をかけてくる涼ちゃん。
若井は少し困ったように苦笑いしながら、「涼ちゃん、来てくれたんだな」と言った。
涼ちゃんはおずおずと部屋に入ると、僕の顔を見てニコニコした。
「元貴、大丈夫?ちゃんとご飯食べてる?」
何気ない言葉だけど、その明るさが少しだけ心に刺さった。
僕はぼそっと、「うん、まあね」と答える。
涼ちゃんはにこにこしたまま、「僕、最近変な夢ばっか見るんだ〜。
昨日はね、空飛ぶトマトに追いかけられたの!」と話し始めた。
若井も思わず笑ってしまい、「涼ちゃん、それどんな夢だよ」とツッコむ。
そのゆるい空気に、僕も少しずつ気持ちがほぐれていくのを感じた。
涼ちゃんはたまに何も考えずに笑いをくれて、
若井は静かに支えてくれて、
僕は二人の間で少しずつ息をつけていた。
その日は、暗い闇の中にちらりと差し込んだ、ほんの小さな光みたいだった。
それから数日が過ぎた。
僕はまだ体調の波に揺られているけど、涼ちゃんと若井がそばにいてくれるおかげで、少しずつ日常が戻ってきていた。
ある夕方、僕がベッドでぼんやりしていると、涼ちゃんがにこにこしながらやってきた。
「元貴、晩ごはんどうする?僕、買い物行ってくるよ!」
「いや、今日は無理しなくていいよ」
僕がそう言うと、涼ちゃんは首をかしげた。
「でも元貴が寝込んでばっかだと、僕も寂しいんだよね。ちゃんと元気になってほしいから!」
そう言って、涼ちゃんは買い出しに行くらしい。
そのまっすぐな言葉に、僕は胸がぎゅっとなった。
涼ちゃんは天然だけど、何かあったら絶対に放っておかない。
困ったときは、全力で支えてくれる頼りがいのあるやつだった。
「ありがとね、」
涼ちゃんは照れくさそうに笑いながら、
「元貴が笑うと、僕も嬉しいんだ!
若井はそんな僕たちを見つめて、静かに微笑んでいた。
まだまだ闇の中をさまよっているけど、今はこの小さな光を大事にしていこうと思えた。
数時間後、玄関のドアが「バンッ!」と勢いよく開いた。
「ただいまー!元貴、若井、今日は僕が料理長だよ!」と、涼ちゃんが満面の笑みで登場。
若井は眉をひそめながら、「涼ちゃん、その自信はどこから湧いてくるんだ?」と苦笑混じりに呆れた顔。
涼ちゃんはキラキラした目で、「だって僕、料理の天才だから!」と胸を張る。
僕は半信半疑で椅子に座ったまま様子を見守る。
涼ちゃんはまず冷蔵庫を開けて、何かを探すが、そこに見慣れない巨大なパプリカが。
「これ、何だっけ?」と首をかしげながら取り出す。
若井が「それ、観賞用の置物だよ!」と慌てて止めに入る。
気を取り直して、涼ちゃんは鍋を取り出し、なぜかヘルメットをかぶる。
「安全第一!」と真顔で宣言。
油をドバドバと鍋に入れすぎて、床にもこぼれ、若井が「油まみれだぞ!」とツッコむ。
涼ちゃんはニコニコしながら、「これは油の海!泳げるかも!」と謎の発言。
火をつけて勢いよくかき混ぜるが、小麦粉をドバッと投入した瞬間、鍋の中で激しく泡立ち、
「ボンッ!!!」とまさかの大爆発。
火柱が天井を突き抜け、煙が部屋中を覆う。
涼ちゃんは頭から煙を吹き出し、顔中真っ黒。
若井は慌てて消火器を持って現れ、「マジで火事になるぞ!」と叫ぶ。
僕は煙を吸い込みながら、「もう消防車呼べよ!」とツッコむ。
涼ちゃんは笑いながら、「これぞ僕の激辛スモーク料理だよ!」と開き直る。
消火器で火を消し止めた若井は汗を拭きながら、「次は俺が作る。本気で頼む」と懇願。
涼ちゃんはヘルメットを外しながら、「じゃあ、今度はデザートに挑戦するね!」と元気いっぱい。
若井と僕は顔を見合わせて、「それ、もっと危なそう……」と苦笑い。
その夜、焦げ臭さと笑い声が混ざった部屋で、僕たちは妙に楽しい時間を過ごした。
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