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感動した😭 ほんとに泣いたもん
素敵な、お話ですね…感動しました!
公式だと言われても納得しそう… 素敵ですね!
『黄昏さんですよね?』
『えぇ』
いつもなら、リビングでゆっくりしている時間
今は、女が男の首に狂気を向けている
今は、“ ヨル・フォージャー ”が“ ロイドフォージャー”の首に狂気を向けている
今は、〝いばら姫〟が〝黄昏〟の首に狂気を向けている
フォージャー家には終わりが近づいていた
ロイド・フォージャー、『黄昏』は、いつものように任務をこなし、〝フォージャー家〟に向かっていた。
『ただいま……あれ?』
そこには、アーニャもヨルもいなかった。
(2人でどこかに出かけたのか?)
出かける時はいつもテーブルに紙を置いて行ってくれる。一応テーブルを見た。だが、いつもの“ 紙”が無かったのだ。
部屋を見渡しているとき、
『おわっ!』
急に電話がなった。
その電話は『黄昏』をどん底に落とす電話だった。
『はい?』
『ロイド・フォージャーさん、いや、黄昏さんですか?』
『は、はい?』
『黄昏さん、失礼ですが娘さんを“誘拐させて頂きました ”』
その瞬間『黄昏』は大きく目を見開いた。
『娘さんを返してもらいたければ、今すぐここに来てください』
『住所〇〇〇-□□□、ここに来てください』
『黄昏』は、電話が切れてからしばらく、そこに釘付けだった。
『なん、だと?』
そんなことを思いながら急いで車を走らせた…………“例の場所へ”。
『黄昏』は自分でも驚いていた。
この前まで、この家族はあくまで任務のための家族、なにせ本物では無い。
と、自分には関係の無い存在だった。でも、今は“家族”のために車を走らせている。そんな自分に驚いていたのだ。
着いた場所は、〝城〟だった。
『黄昏』には、前にもここに来たことがあった気がした。
そう、この城は昔、アーニャが『お城で助けられごっこしたい!』と言った際に来た城だった。
(確かに見覚えのある住所だったが…)
(人気は無いな…一刻も早くアーニャを助けねば!)
と駆け出そうとしたときだった。
『!?』
音がした。
『黄昏』は、何が起こったのか分からず、動けなかった。ただ、肩が痛かった。と、目だけ動いたので自分の肩を見た。
そこには、自分の肩に狂気が貫通していた。
肩を見た瞬間、魔法が解けたかのように全身に痛みが走った。
『ぐっ…』
(なんだ…?何が起きた…!?)
『黄昏』は肩の狂気を抜くと同時に後ろを見た。
そこには、
〝ヨル・フォージャー〟が立っていた。荒い息をしながら。
〝ヨル〟はロイド、『黄昏』が抜いた狂気を拾い上げ、身構える。
『ロイドさん、ロイドさんは……』
と、言いかけると、ロイドに向かって飛び乗った。
『〝黄昏〟さんですよね?』
そう、いえば…
いつかの任務で『〝いばら姫〟を排除する』という任務があったっけ。
でもその任務は失敗に終わった。
〝いばら姫〟はプロ中のプロ。“殺し屋 ”だ。
この『黄昏』が唯一失敗に終わった任務、それが『〝いばら姫〟を排除する』という名の任務だった。
その瞬間、『黄昏』はヨルが『いばら姫』だと気づき始めた。
俺は今、ヨルさんに、狂気を向けられている。なぜ?なぜだ?
いや、その前に、ここで黄昏を名乗れば俺の負けということになる。
『えぇ、黄昏、ですよ…』
だが、『黄昏』は負けを認めた。ここでヨルさんと戦っても勝てるわけが無い。
もし、戦ったとしても腕に力が入らん。まともに攻撃を受けることも出来んし、普通に戦ったとしても、たぶん負けるだろう。
『黄昏』が『黄昏』を名乗った瞬間、いや、名乗る前からヨルは分かっていたかのように、涙を我慢し、ロイドの答えを待っていた。
だが、ヨルにはもう我慢出来なかった。目から大粒の涙が溢れ出てきた。
『ロイ、ドさんっ……』
『嘘だと言ってくださいっ……!』
その瞬間、『黄昏』の目が大きく見開かれた。
嘘でもいい、嘘でもいいから、〝ロイド〟に、僕は貴方の夫ですよ。と、言ってほしかった。自分を否定して欲しかった。
『ヨル、さん……』
『黄昏』は、自分の体の上で泣いている〝妻〟を抱きしめてあげたくなった。
だが、ヨルの体に触れた瞬間次は殺されるだろう。
『っ……!』
急に立ったと思うと、ヨルは、『黄昏』に向けて狂気を振った。
まだ、戦闘は終わっていなかった。
『黄昏』は城の広場の真ん中にある柱に背もたれていた。
もう、ほとんど意識がない。だが、『黄昏』の目の前でも意識がもうろうとしている〝ヨル〟がいた。
『黄昏』に銃で撃たれたのだ。
『あの……ロイ……ドさん……?』
『黄昏』にはまだ意識が残っていた。呼ばれたのでそっちに目を向ける。
『ロイ…ド、さんはっ…私のしょ、正体を……知って、いるのですかっ……?』
見苦しい。自分で撃ったくせに早く助けてあげたいと思ってしまう。早く…早く…。でないと、ヨルさんが死んでしまうかもしれない。
意識もほとんど無いので、ヨルの問いの最初は聞き取れなかったが、最後は聞こえた。
(正……体?ヨルさんも何か隠しているのか?や、はり〝いばら姫〟なの…か?)
『い、いえ…』
『そ、そうです…か』
苦しそうに座っているヨルが、『黄昏』に向かって急に鋭い目で睨みつけた。
(!?な、なんだ?)
『ロイドさんっ……!私、はっ、私はっ、』
『黄昏』はヨルが「い」と言いかけたその時に意識が切れてしまった。
■3年後
黄昏が広がる空の中
〝男〟は歩いていた。〝家〟へ。
もう5時を過ぎていた。街はもう人気が少なかった。
と、前から親子の声がした。だが、〝男〟の頭はたくさんでその声にさえ気づかなかった。
『ははー、きょうのごはんなに?』
『今日は、南部シチューにしようと思っています!』
『はは、さいきんりょうりうまい』
『まぁ、前に比べたら上手くなってるかもしれないですね!』
〝男〟はいつものように人とすれ違うだけだった。だけだった……
ぶつかった。
『あっ、す、すいません!すぐ拾います!』
〝男〟は慌てて女性が持っていた紙袋から転がり落ちた食材を急いで拾う。
『こちらこそ、ほんとにすいません!大丈夫ですか!?』
〝男〟と〝女〟は、しゃがみ、急いで食材を拾う。
ん?
その食材に見覚えがあった。“南部シチュー ”の食材だった。
だが、そこにはサワークリームが入っていた。サワークリームを入れるのは、ニールバーグの東ら辺の人達だと、いつか聞いたことがあった。
〝男〟は転がり落ちたサワークリームを手に取り、彼女に渡した。
渡そうと顔を見合せた。
という顔で2人して固まった。
先に声を出したのは彼女の方だった。
『ロ…………え?ロイ、……さん?』
その言葉が〝男〟に驚きを与えた。
『ロ、ロイドさんだっ!アーニャさん!』
彼女はその言葉を口にすると、〝男〟に抱きついた。涙を流しながら。
『ろいど?はっ、!ちちー!ちち!』
今度は、彼女の連れ子だった子供が〝男〟に抱きついてきた。
〝男〟には今の状況がなんなのか理解できなかった。
ただ人とぶつかって、落ちた食材を拾った。そうすると、彼女と子供は泣きながら〝ロイド〟と嬉しそうに抱きついてきた。
〝ロイド〟……?
あぁ、そうだ思い出した。
いつの日か子供の父親になったことがあった。そして、妻が必要になり、妻も持ったっけ。
偽の家族を作った。
その時の名が
〝男〟、『ロイド・フォージャー』は全てわかった。思い出した。
その途端、『ロイド』にも涙が溢れてきた。
涙を流したことなんて、子供以来だ。
『…………っ』
『ち、ち?』
〝子供〟、『アーニャ』が初めて見る“父親 ”の表情に驚いている。
『ロ、ロイドさん?』
〝女〟、『ヨル』も目に涙を浮かべながら驚いている。
『くっ……』
改めて名前を呼んだ。
『ヨル、さん……、アーニャ……久しぶり』
そして、ヨルを、アーニャを強く抱き締めた。
『帰りましょうか』
『そうですね』
『ホージャーけもどる?ちちとははとアーニャとボンドでまたくらせる?』
その時、ロイドは決意した。
『あぁ、今日からずっと一緒だ』
黄昏が広がる空の中、〝フォージャー家〟はかつての家へ向かうのだった。