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尊「俺のことが、、、?」
尊は目を見張った。
言わなければよかったと、俺はすぐに後悔した。
尊「そうだったのか、、、でも———」
和希「もういいよ!お前だって、こんな奴と友達なんて嫌なんだろ?」
尊の言葉を遮るようにして、ほとんど悲鳴のような声で俺は言った。
和希「変な目で見られるのも、下手に気を遣われるのも、同情して偽りの優しさを与えられるのも、全部、もううんざりなんだよ、、、」
続く言葉は出なかった。
俺は逃げ道を探すように、ただその場でうずくまって泣いた。
そんな俺を見つめて、尊は少し、顔を沈めた。
それから数分経って、苦しそうな顔をした尊が、振り絞るようにして口を開いた。
尊「俺は、さ。小さい時から和希と一緒にいて、もう知らないことなんてないと思ってた。」
和希「、、、っ!」
優しさに満ちた尊の声が、今の俺には辛かった。
でも、そんな尊の右手が微かに震えていたのを、俺は見た。
尊「でも、こうやってしっかりと話してみたら、俺はお前のこと何にも知らなくて、、、。お前も俺のことを何も知らないなって思った。」
俺は驚いた。
俺の方こそ、尊のことは全部知っているつもりでいたから。
尊「もしさっき言ったことが本心なら、なんで俺には話したんだよ、、、自分の気持ちにまで嘘つくなよ!」
気付けば、尊の目にも涙が溜まっていた。
和希「何だよそれ、、、」
体の力が抜けた。元から、尊は気にするはずもなかったのに、悩んでいた自分が馬鹿らしく思えた。
尊「同性愛は気持ち悪いのか?なら、、、」
尊は少し言葉を詰まらせた。今度は鼻を啜ってから尊は続けた。
尊「なら、俺も気持ち悪い奴になっちまったのかもしれねーな、、、」
俺は意味が理解できなかった。
そんな俺を見て、尊は微笑んでから、今度ははっきりと、伝えてくれた。
尊「和希、好きだよ。」
和希「、、、本当か?」
俺が疑って尊の顔を覗き込むと、いつものイタズラっぽい笑みを浮かべながら、尊が言った。
尊「今まで俺が嘘をついた事があるか?」
あまりに適当な言い草に、俺もつられて笑った。
和希「山ほどな。」
やっと笑えた。心から。
作り笑いじゃない、心からの笑顔。それを見た尊も、満足そうに笑った。
尊「じゃあこれは嘘じゃない。絶対。約束だ。」
尊の少し焼けた小指と絡ませながら、俺たちは互いの唇を近づけた。
このキスは、俺たちだけの秘密、そして宝物だ。
そんな出来事があった日から2日が経ち、俺は久しぶりに、制服のシャツに袖を通した。
お母さん「和希ー!遅れるよー!」
2階からお母さんの声が響いた。
和希「はーい!今降りる!」
俺はリュックを持って、階段を駆け降りた。
和希「よし!行ってきます!」
そう言って、俺は玄関の扉を開けた。
いつもの電車に乗り、いつもの道を歩き、半年前と変わらない道を、俺は辿って行った。
尊「あ!和希ー!!」
少し先の道で、満面の笑みの尊が、こちらに手を振っていた。
俺は走ってタケルに追いつき、挨拶を交わしてから、並んで道を歩いた。
そこから少し進んでいくと見えてくる、光ヶ丘高校。久しぶりの学校に、不思議と俺の心は踊った。
尊「和希!我らが2年4組だぞ!」
尊がはしゃぎながら俺を教室に案内した。
俺だって場所くらい覚えてるのに。
そんなことを思いながら、俺はドアに手をかけ、教室に足を踏み入れた。
クラス一同「和希!おかえりー!!」
教室の中では、満面の黒板アートと共に、クラスメイトたちが笑っていた。