夜が明けた。
カーテンの隙間から、綺麗な朝日が差し込んでいる。
隣には綺麗な顔をした赤髪の彼が、穏やかな寝息を立てて眠っている。
時刻はAM5:30を回ったところだ。
昨日は深夜の2時くらいまで起きて仕事を片付けていたはずだが、妙に頭が冴えている。
彼はまだ、俺との約束を律義に守っている。
「幸せ……。」
そっと呟かれた独り言に、思わずこちらも笑みが零れる。
まだ実感はあまり無いが、取り敢えず「自殺する」という考えから「もう少し生きてみる」に変換されたようで、ホッと胸を撫で下ろした。
「俺…死ぬなら今がいい。」
「………………………は?」
ホッとしていたのも束の間、たっぷり時間をかけて放たれた言葉を反芻してみたが、全く理解が出来なかった。
抱きしめられたまま彼を見上げてみたが、優しい笑顔のままだった。
先程の告白は何だったのか。そう不思議に思ってしまうほど、言葉と行動が相反していた。
「そうだ!死ぬならちゃんとした所探さないとですよね!何処にしようかな…。」
さっき俺が言った言葉は、彼にはあまり響いていなかったのだろうか。さっき俺は、「君に死なれては困る」と伝えたはずなのに。
彼にとっては、「一緒に逝ける相手ができた」くらいの感覚なのだろう。
「死」の感覚は、人によって少しづつ違うものではあるが、最終的に行き着く先は「恐怖」という感覚のはずだ。
一人でいた時とは違って、生き生きしているように見えるのは、今死んでも、もう何も未練と呼べるような後悔が無くなったからなのか。
「あのさ」
一人ではしゃぎながら何か物騒なことを口にしている彼に、少しだけ呆れつつ声をかける。
「俺と一つ、約束してくれん?」
「はい!先輩との約束なら、死んでも守ります。」
キラッキラの笑顔で嬉しそうに見つめてくる姿は、あの誰にでも懐いていた頃の犬みたいな彼と似ていた。
『一生俺のそばにいて。離れないで。』
「ん…。」
彼の寝顔を眺めながら、少し癖のあるその髪を優しく撫でていると、それに反応するように、薄っすらと目を開けた。
「起こしちゃった?まだ6時くらいやから、もう少し寝ててもええよ。」
「…ふふっ。」
「なに?」
「起きてすぐ、大好きな先輩の顔が見れるのなんか良い…。」
朝からいつも通りデレデレなところを見ると、通常運転でホッとする。
そんな彼にツッコんだりしないで受け入れている俺も、傍から見たらデレデレの類なのだろう。
ふにゃふにゃな彼がどうしても可愛かったから、額にそっとキスをしてベッドから降りる。
案の定、顔を真っ赤にしながら不思議そうに見つめてくる。
「な…///せ…え?//」
「いつも約束守ってるから、ご褒美……///です。」
精一杯の言い訳をして、その場から去ろうと踵を返すも、腕を掴まれたことによって叶わなかった。
「約束は、死んでも守りますよ。先輩♡」
コメント
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えーーーん可愛いやいやい‼️‼️‼️‼️😭🦖⚡️❤️❤️❤️❤️最後腕掴まれてんの愛おしい無理無理すき……❣️❣️😢💓