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大量の本の中から一冊の本を取り出す。
「いらっしゃいませ。」
ここは記憶図書館。私が管理する大きな書物庫だ。そんな書物庫に置いてある本は誰かの記憶。誰のものなのかは私にもわからない。さて,今日はこの物語を読みましょうか。
「いや,それでね!」
私秋野喜凛(あきのきりん)には大好きなキャラがいた。小さいころから私のヒーロー。どんなに辛くても私にはこの子たちがいるから毎日頑張れた。
「だよね!エ〇ル可愛いよね!」
小学生のころ,同じキャラを好いている子が居なくて学校でその話をすることができなかった。でも中学生になって同じキャラを好いている子を見つけたからこうやって休み時間は話している。周りからはそんな年でまだそれを好いているのかとか思われて変な目で見られることもあるけど大丈夫!気にしない気にしない。フレ,フレッ私!頑張れがんばれ私!私の大好きなキャラがよく言う言葉を胸に刻んで家に帰る。
その日の夜,お風呂で私はそのキャラが登場するアニメの主題歌を歌っていた。妹は小学生で私と同じキャラが好きだった。そのせいか興奮していた私は風呂あがり,今日の事を熱弁していた。
「お母さん!今日それで盛り上がった話聞く?」
チラシを見ていた母は言った。聞かない。うるさい,と。最近やけに母は機嫌が悪いが今日はいつにもまして機嫌が悪かった。父はキッチンで洗い物をしていて聞いてもいないようだった。なんだか自分はこの家が息苦しく感じた。
自分の部屋(洗濯物部屋)でパソコンを起ち上げる。日課の健康診断アプリに記入する。このアプリでは精神診断の結果が出て,自分がどうすればいいのかなど教えてくれる。いくつかの質問に答えるだけでだ。
(まただ。)
数字が大きくなるにつれて危険域になる。家族の項目の最高域が6なのに対し私の診断結果は6。要注意域と黄色で書かれてあった。家族との関係がよくならない限りこの数字がよくなることはない。
私の友達の家族はよかった。毎日手作りのお弁当を持たせてくれて,ニコニコしてて。それに対し私は毎日ほとんど変わらない弁当のメニューで,手作りなのはだし巻き卵だけ。家で笑うことなんて少ない。推し活グッズを買ってもなんとも言われないのが友達の家で,私が推し活グッズを買えば嫌な目で見られる。母は好きなバンドのライブへ行って数万使うのに私が数千円使えば怒ってくる。そんなもので金を使うなと。反論できなかった。反論すれば何をされるかわからない。だから私は,家で推しについて語るのはやめた。
「もうそれ,好きじゃないよ。推しなんていないよ。」
私は本を閉じた。
「ねぇ,貴方はこの子がこの先,どうなると思う?」
これはまだ序章でしかない。この物語を変えることができるのはこの子自身と周りの人よ。私は,この結末を見届けることしかできないから。
「それじゃあ,次は…これね。」