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むかしむかし、あるところに。
とてもうつくしい歌声を持つ、草原の女神がおりました。
女神の歌声は、それはそれはうつくしかったので、貴族はこぞって女神に婚約を申し込みました。
しかし、女神は婚約を全て断りました。
うつくしい男性も、地位を持つ男性も、宝石を持つ男性も。
すべて、女神にとっては有象無象でしかありませんでした。
彼女は女神などではありませんでした。
何年も姿形が変わらない少女は、呪いと共にあっただけでした。
少女は女神ではありませんでした。ひとより少し長く生き、老いぬだけの、ただの人の子でありました。
でも、少女は、ほんの少し、ほんの少し人より永く生きました。ですので、あまり人らしくはありませんでした。
ひとのこは、自身と違うものを拒絶し、否定し、遠ざけ、時に遥か彼方で行われた魔女狩りのように、厄災を押し付ける愚かなものでした。
姿形が変わらず、遥か先まで生きる少女もまた、ひとのこと共存することは叶わないのでしょう。
人々は、常に何かを柱にし、その文明を続けていきました。
ですので、その少女も、どこまで行っても人柱でしかないのでしょう。
うつくしい歌声も、ほんの少し永くいきる体も。少女にとって、武器なんぞにはなり得ませんでした。