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その後も激しい銃撃戦が何度も繰り返された訳だが。
何とか全員無事、とはいえ……。
「かなりゴールには近付いて来ましたけど……不味いっすね、そろそろ車が限界っす」
555が運転している車が、さっきから変な音を立てているのだ。
それから、最初程力強い加速をしなくなった。
とはいえこうなってしまえば、余計に敵には囲まれる訳で。
「このまま一直線に逃げるのは無理だ! どこか駐車場に入れ! 一旦建物内に身を隠す! シックス! すまないが降りたらセブンを担いでやってくれ!」
「のわぁぁぁ! マジでごめぇん! 未だ右足だけ動かないぃ! HPは殆ど回復してるのにぃぃ!」
どうやら本当に良い一発を貰ってしまったらしく、デバフの様に不調が続いている様だ。
そんなsevenと4cardが、どうにか窓から銃を出して迎撃していくのだが。
これ、本気で不味いな……。
こっちの車両は既に煙を吹いている様な状態なのに対して、後ろからはどんどん車が来ている。
これじゃ、いくら9Kの援護があっても逃げ切るなんてとても――
なんて、絶望しかけたその時。
「な、なぁっ!? なんですかぃコレはぁ!?」
良い勢いでコーナーを曲がった瞬間、運転席から変な悲鳴が聞こえて来た。
皆揃って、慌てて正面に視線を向けてみると。
「え、えぇ……警察の勢力が上がるとか、今回の条件にありましたっけ……」
なんか、大通りを塞ぐ勢いでいっぱいパトカーが止まっていた。
というか、特殊部隊みたいなのまで居る。
そんでもって、皆揃ってコッチに銃を向けているではないか。
まさかのポリスイベント? え、嘘、今?
だってもしもここで私達が逮捕とかされたら……このイベント、どうなるの?
「これの突破は無理だ! ファイブ、隣の立体駐車場へ!」
「りょ、了解っすー!」
慌てて555がハンドルを切り、私達の車はそのまま立体駐車場へと突入したが。
続く追跡車は、どうやら入り口でプレイヤー同士詰まってしまったらしく。
とんでもない車の密集地帯が出来上がると同時に、その周囲をパトカーが包囲していく。
ぇ、え~……と? これは、アリなのだろうか?
とか思っちゃったけど、これを予期していた? もしくは今回の原因を作ったプレイヤーなのか。
プスンプスンと変な音を立てながら車が駐車場の坂道を上った先に、一人の男が立っていた。
とても長い、というか引きずってしまいそうな程の丈があるロングコートをはためかせ。
その両手には、青と赤の二丁拳銃。
彼は腕をクロスさせる様にして、ゆっくりと銃を構えてから……そのまま、555の車に轢かれた。
ドンッて凄い音をして、天井なんかにもゴンゴンぶつかりながら、その人が車の後ろに落ちて来た光景が見えた。
けども、此方の車はそのまま走り去っていく。
「ぶはははははっ! ねぇ、ねぇ今の! 絶対“出っ歯”じゃん! 格好良過ぎでしょ! しかもオチまで最高!」
「……知り合いか?」
爆笑するsevenと、困惑した様子の4card。
うん、でも、私も今のはよく分からなかった。
なんであの人……今普通に轢かれたんだろう。
というか皆のチーム、今回の戦闘に参加してたんだ……なんて思ったところで、ハッとした。
「まだ居る! 重装備とスナイパー!」
慌てて声を上げた所で、もはやヒビだらけだった運転席の窓に穴が空いた。
弾痕、どころではない。
なんかもうズドンッて大きな物でも突入して来たんじゃないかって程の勢いで、運転手の腕をふっ飛ばしたではないか。
「ぅぐっ!? 嘘っしょ!? “アンチマテリアルライフル”!」
負傷を負った555が叫びつつ、どうにか車を片手で制御しようとしたが。
流石に、無理だ。
スピードの乗った車は、急ハンドルを切ってしまった事によりそのまま傾いて行き。
やがて、盛大な音を立てて横倒しになってしまったではないか。
車の中で皆揃って揉みくちゃになりながらも、ゴリゴリ音を立てつつ未だに進む車両。
だがしばらくした所で勢いも止まり、周囲の光景が停止しているのを確認してから天井の窓を蹴破った。
「皆、早く!」
「チッ! シックス、俺を引っ張り出してくれ! 周囲の警戒は俺がやる、その間に皆を!」
という事で、一番無事そうだった4cardを引っ張り出し、彼が周囲に向かって銃を構えた事を確認してからもう一度車へ。
脚を負傷しているsevenを無理やり車の外へと出してから、今度は555の元へ。
ナイフでシートベルトを切断して、片腕が無くなった彼も外に連れ出したのだが。
「全員車を盾にしろ! “ミニガン”が出て来たぞ!」
指揮官の叫び声に、皆が車に背を預けながらも一斉に身を小さくした。
さっきから何!? アンチなんちゃらライフルとか、今度はミニガンって!
小さい銃!? だとしたら何でこんなに慌てて――
「伏せろ伏せろ伏せろぉ!」
物凄く慌てた様子の4cardが、私達全員に覆いかぶさる勢いで飛び込んで来たかと思えば。
続く銃声は、どう聞いても“ミニ”じゃなかった。
なんかもう、バンバンとかじゃないのだ。
フルオートとかのズガガッて音でも無いのだ。
ドゥルルルル! みたいな、聞いた事も無い様なタイプの物凄い爆音。
しかも、車の反対側に弾が当たっている衝撃がこっちまで伝わって来る程。
「こ、これのどこが“ミニ”!?」
「元々人間が持って使う武器じゃないの! それを小さくして手持ちで運用するから“ミニガン”! 分かりやすく言うならガトリングガンだよ!」
いやぁぁぁ!?
おかしいでしょソレ! 凄く聞きたくない言葉をsevenから教えてもらっちゃったけど!
じゃぁ何、アンチなんちゃらは何!? そっちはバズーカか何かですか!?
なんて、もはや完全に悲鳴を上げたくなる状況に陥ってしまったのだが……。
「こうなったら“完全勝利”は諦めろ! ナイン、狙撃手を頼む! 撃たれた方角からして、恐らくここから北西の建物のどこだ! 距離はそこまで遠くない筈!」
『了解……どうにか耐えろ』
「シックス! 今動けるのは俺とお前だけだ! ちょっと付き合え! 俺が囮になる!」
「りょ、了解!」
ヒーヒー言いつつどうにかショットガンを取り出して、彼からの合図を待ってみれば。
「俺が相手だターミ〇ーター! GOGOGO!」
なんか凄い事を言いながら、グレネードを放り投げた瞬間に突っ込んで行く4card。
私は車の反対側から飛び出して、相手が見えた瞬間にズドン。
しかしながら、相手の姿が……その、えぇと? いや、本当に何!?
全身鎧みたいなのを着ている人が、馬鹿デカイ銃持ってる!
という事で、私の散弾ではキンキンッと軽い音を立てながら弾かれてしまったが。
どうやら4cardの連射を警戒しているらしく、相手の銃口は彼の方へ。
なら!
「間に合えっ!」
一気に姿勢を落として、先程のグレネードが巻き上げた土埃の中へと突っ込んで行き。
そのまま敵に回り込む様にして駆け寄り、ハンドガン抜いてからその背中に飛びついた。
そしてロボットか何かにしか見えない様な見た目の鎧、そのゴツイヘルメットのバイザーを無理やりこじ開けて。
「これで……私の勝ちだ!」
そこへ銃口を突っ込み、そのまま数回発砲。
ヘルメットの中でくぐもった銃声が響くと同時に、相手はゆっくりとその場で膝をついたではないか。
「よしっ!」
倒した! なんて喜びの声を上げそうになったが。
相手が銃口を向けていた先に居た4cardに関しては……。
「流石だな、シックス」
そう呟いた彼の身体は、とてもじゃないが回復アイテムでどうにかなるレベルじゃないダメージを負っているではないか。
慌てて駆け寄ってみると、相手は此方に端末を押し付けて来て。
「全員の端末を回収して、走れ。俺達がここで足止めする」
「けど……」
「行け! シックス! お前とナインだけはまだ戦える!」
これまでに無い程強い言葉で言い放たれてしまい、思わずビクッと身体が震えたが……彼から渡された端末を、ギュッと握り締めた。
足止めする、なんて言ってるけど。
多分4cardはもう動けない、戦う事が出来ない。
だからこそ、私に託したんだ。
「了解!」
なので、そのまま横転している車両まで駆け戻ってみると。
既に、555が事切れていた。
そして、困った様に笑うsevenから二台の端末を差し出され。
「シックス、頼んだよ!」
「……分かった!」
それを受け取って、私だけ走りだそうとした……その瞬間。
「そう綺麗に終わると思うなぁぁぁ!? 俺のしつこさは、皆が嫌がる黒い害虫の如く! ガンサバの主人公達よ! キルログに残った俺の名を、その記憶に焼き付けろぉぉぉ!」
なんか良く分からない叫び声が駐車場内に響き渡ったかと思えば。
誰かが此方に走って来る音が、駐車場内に反響していた。
え、待って? 今の声って、もしかして……。
「衝撃に備えろぉぉぉ!」
「時、既に遅し! 食らえ、二丁拳銃奥義……自 爆!」
4cardの警告が聞えたと同時に、私は再び慌てて走りだそうとした……のだが。
とんでもない爆発音と共に、横転していた555の車両が此方に吹っ飛んで来た。
「――なん、ぐっ!?」
これに押し出される様にして、全身に強い衝撃を受け。
私達は皆揃って、というか車ごと……立体駐車場の外へと、綺麗に押し出されてしまったではないか。
え、あ、え?
コレ、今までに無いくらいヤバイんじゃ……確か車は三階くらいの高さまで登ったし、しかも。
落下中の視線の先からは、555の車の残骸が火の手を上げながら降って来ているのだ。
このまま落ちたら、多分――
「……ぁ」
その後は、グシャッという音と共に。
私の視界は暗転、そして目の前には“ゲームオーバー”の文字が表示されたではないか。
とても呆気なく、状況さえ良く分からず。
視界には、ガンサバのテストプレイをしていた頃に何百回と見た、死亡した時の画面が映っていた。
あんなに頑張ったのに、もう少しっていう所まで辿り着いていたのに。
最後なんて……皆から、私が“託された”のに。
「うっ、うぅ……ぐすっ、うぅぅ……負け、ちゃった。負けちゃったよぉ……」
アバターが待機場所にリスポーンされるまでの間、身体の感覚も無い暗闇の中で。
私は久し振りに、声を出して泣いてしまうのであった。
コメント
1件
あー……最後の自爆、えぐかったな。シックスが託されたのに無理だった展開、読んでて胸痛んだわ。特に泣き声のシーンは刺さった。ここまで追い詰められるゲームシステムも容赦ないし、でもそこがこの作品の魅力でもあるよな。続きが気になる。くろぬかさん、今回も熱かったっす🔥