テラーノベル
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157
#カンヒュ
おにぎり🍙
30,281
#日本受け
りな@主食は日本受け
1,270
今回はイギフラです。セフレ関係の2人が、正式に恋人になるまでのお話です。最終的にハッピーエンドではありますが、中盤にダークな表現(レイプなど)も含まれますので、苦手な人は自衛をお願いします。
・本作品はカントリーヒューマンズの二次創作であり、腐向け(BL)要素を含みます
・実在の国家、地域、歴史上の人物、政治、宗教等とは一切関係のない完全なフィクションであり、意図はありません
・作者の独自解釈・捏造設定が含まれます
・苦手な方、意味が分からない方は閲覧をお控えください
それではいってらっしゃい!
「あー…♡なー、んかな。んっ♡あの子重そー、だったんだよな〜、」
「…」
ギシッ、ギシッと、イギリスが腰を振る度にベッドから出される音を聞き流しながら、フランスは先日デートをした女性とのトーク履歴を眺めていた。
フランスはイギリスと向き合う形でベッドに仰向けになり、そのまま身体を任せていたが、目だけは絶対に合わせようとせず、視線はスマホに向けられている。その様子からは、イギリスに抱かれているという現状を、心底どうでもいいと思っている、否、思い込もうとしているフランスの心情が見て取れた。
そんなフランスの様子を見かねたのか、イギリスが口を出す。
「…あの、仮にも情事中に、他人の名前を出すのは失礼に当たるとは思わないんですか?」
「は、ぁ?」
急に自分の行動を指摘してきたイギリスに、フランスは驚いたように目をやる。
まさかジェラシーを感じているのか。
一瞬そう思ったが、すぐに、イギリスに限ってそんなわけがない、と切り替えて反抗的な態度を示す。
こいつ、急になんなんだよ…
「っあのさ、忘れたわけ?」
フランスは少し上体を起こし、まるで突き放すかのようにイギリスの肩を押した。
「俺と、あんたがセフレだってこと。このセックスはお互いの快楽の為だけにやってるだけだって」
「そんなこと、分かっていますよ」
フランスがイギリスを冷たくあしらう。すると、イギリスは眉間に皺を寄せたと思えば、スっと目を逸らし、口を開いた。
「ただ、セックスフレンドにまで自分がモテるということをアピールしないと自己顕示欲が満たされないなんて、フランスの心は貧しいんだなと。哀れに思っただけです」
「…!」
やっぱり…
フランスはイギリスの煽りに、強く反骨心を覚えたが、それと同時にショックも受けていることに自分で気づいて嫌気がさす。
その言葉は、さっきの問いかけはただ不快に思って発したもので、嫉妬からでたものではないということをキッパリと示していた。
「…ねぇ、舐めるのもいい加減にしてくれない?てか、傲慢で強欲で、性格が終わってる似非紳士に、そんなこと言われても、全く響かないんだけど」
「自分の心が貧しいことは認めるんですね?自覚しつつも全く改める気のないその姿勢は、賞賛に値すると思いますよ」
自分の感情を悟られないようにと、フランスは負けじとイギリスを煽り返す。するとイギリスは、その言葉のあやをかいて、これでもかという程に皮肉をぶつけてきた。
イギリスはストレートな物言いを好まない。相手に嫌味を言うときは、必ずといっていいほど皮肉を混ぜてくる。そんなイギリスの言動は、フランスがイギリスをよく思わない理由の一つだ。
流石に口論ではイギリスに敵わないとフランスは悟ったのか、数秒イギリスを睨みつけていたと思うと、ちっ、と舌打ちをして、ベッドの上に体を戻す。
すると、イギリスはさっきまでの険悪なやり取りが無かったかのように、腰の動きを再開させた。
「っ、はぁー…♡お前、マジ、っ♡で嫌い、っ!」
「…安心してください、私もですから」
イギリスがピストンのスピードを速める。
そこから、イギリスが早く情事を終わらせたいと思っていることを感じ取って、フランスは気分を悪くする。
フランスは他人に振り回されることを嫌う。
それは彼のナルシストで、我執が強い性格から来ているのだろう。自らの窮屈な生活を脱するために革命を起こす程の。
そして、自身の永遠のライバルであるイギリスにおいては尚更だった。
だが、どれだけ相手のペースに崩されまいと我慢しても、生理的反応は避けられないものだ。
自身の身体が快楽を強く感じ、そして放出する準備を始めていることをフランスは自覚する。それはイギリスも同じなのか、フランスの方に身を乗り出し始めた。
っ…♡くっそ、っ!
「あっ♡くっ、ゔぅぅぅ♡」
「…っ♡」
フランスは、イギリスと共に、勢いよく白濁を吐き出してしまった。
「では、私はこれで」
「あぁ、早く行ってくれ」
イギリスは情事が終わると、すぐにスーツに着替えてそそくさと部屋を出ていってしまった。
フランスはイギリスがいなくなるのを見届けると、ライターを取り出してタバコにカチッと火をつけた。
タバコをひと息吸うと、ふぅ、と煙を吐き出す。漂う紫煙を見つめながら、フランスは先程のイギリスとの行為を思い出していた。
「はぁ〜…」
やっぱ俺のこと嫌いなんだろうな…
フランスは大きくため息を着くと、ぼすんとベッドに身を投げる。寝タバコは危険であるということはフランスもよく承知しているが、どうせ今の状態では眠れないと思ってそのまま思考を続ける。
先程のイギリスの言動を省みるに、俺のことをよく思っていないことは明確だ。でなければあんなに挑発的な言葉を使わないだろう。それにイギリスは、自分との行為を早く終わらせたいととれるような行動をしていた。
いや、実際そうなのだろう。ついさっき、彼が情事後の余韻に浸るまもなく出ていってしまったのがいい証拠だ。
半開きになったままの扉を数秒見つめる。そのうちフランスは、自分が惨めに思えてきてゆっくり視線を逸らした。
フランスは、イギリスのことが好きだった。
イギリスは綺麗だ。世界的に見ても、彼の美しさは目を見張るものがあった。性格がいくら傲慢で皮肉屋だとしても、イギリスの容姿や所作、言葉遣いはスマートで、紳士と呼ばれるのも納得できる。だからこそ、自分の芸術家魂が、彼のことを手に入れたいと思ってしまった。
そしてそのうち、フランスはイギリスのことを、好きになってしまっていたのだ。
2人がセフレになることになった発端はそんなフランスの気持ちからだった。
フランスは己のことが一番大事なので、内なる思いをイギリスに伝えて振られ、自分が傷つくことになるような事態は避けたかった。
それでもイギリスと、もっと親密な関係になりたいという思いは拭えなくて、この2つを両立するためにセフレになることを提案したのだ。あくまでビジネスライクな関係だが、それでもイギリスと体を重ねることができる。
だが、イギリスが、いいですよ、とその提案に合意したとき、フランスは予想外の答えに嬉しさより先に驚きがきたのを覚えている。
てっきりフランスは断られると思っていたのだ。いくら仮初の関係だとしても、好きでもない、むしろ一番嫌いな相手とセックスをするなんて、絶対に嫌だろうと思っていたから。
返答を貰って、イギリスと別れて、家に帰って、それでようやく喜びが込み上げてきたものだ。
ただ、フランスにとってもイギリスは、世界一大嫌いな宿敵でもあった。
イギリスとは、百年以上戦ってきた仲だ。お互い大切なものを奪い、奪われてきたのだから、当たり前だと言われればそうだ。
そのためフランスは、イギリスに嫌味な態度を取ってしまうし、その度に一人で反省会を開催してしまう。
フランスはイギリスに対する感情が、よく分からなくなり始めていた。
大嫌い、でも好き。そんな複雑な感情を抱えたまま、曖昧な関係を続けていったら、いつかフランスの心は壊れてしまう。
そんなのは駄目だ。自分を犠牲に何かをするというのは、フランスにとって考えられないことだった。何においても優先順位は自分が1番だ。
だからこそ、好きなのか、嫌いなのかをはっきりさせないといけない。キッパリ諦めるのか、それともイギリスに思いを伝えるのか。
「…あぁ〜!もう!」
なんで俺がこんな思いをしなくちゃならないんだ!
悩みの元凶であるイギリスを逆恨みしながら、フランスはタバコを灰皿に押し付けると、ぴょんと勢いよく立ち上がった。
こんなふうに寝転んでいたって時間を無駄に消費するだけだ。いや、いつもならそれでいいのだが、今回に限っては余計なことまで考えてしまいそうで、ぼーっとしておきたくなかった。
気分転換に女の子とやろ。
フランスは机の上に置いてあったスマホを手に取ると、マッチングアプリを開いた。
イギリスのことは好きだ。でもそれはそれとしてフランスは、女の子のことも好きだし、毎日のように女漁りを繰り返している。
どちらとも付き合っているという訳では無いし、そこに愛がある訳では無いが、これは浮気というものなのだろうか。
でもイギリスは俺の女付き合いを知ってる上で何も言わないし、別にそこまで問題があるわけではないだろう。まぁ何も言ってこないのも、それはそれで傷つくんだけど。
問題があったとしても、それは愛の国の特権ってことで。
フランスはマッチングアプリで、自らのタイプに合うような女性を探し始めた。
「なんかいい子いるかな〜
…おっ」
この子なかなか可愛いじゃん。
フランスは、気になる女性を見つけるとスマホを操作していた指を止めて、プロフィールをタップする。
『22歳、大学生です♡ヤリモク大歓迎〇』
「…ふぅん」
マッチングアプリでヤリモクを公言しているのもどうかと思うが、フランスは相手を華麗にエスコートするような気力も残っていなかったため、むしろそちらの方が有難かった。
相手に対して、いいね、のボタンを押す。これで向こうにも通知が届くはずだ。
自分の顔には圧倒的な自信があるフランスは、きっとマッチング成立するだろうと踏んで、先に支度をし始めた。
フランスの予想通り、結局マッチングは成立することになった。
どうせお互いヤリモクなのだから、『どこでヤる?』と気遣いもムードもへったくれもないメッセージを送る。
すると、相手もさほど気にしていないように『ホテルに直接来て貰えませんか?場所は_』と返事が返ってきた。
最低なトーク履歴だな、と自嘲しながらもフランスは指定された場所へ向かうために車に乗り込んだ。
「…ここ?」
駐車場に車を停めて、フランスは車内から出ると、目の前に立つ建物を見上げる。
来て欲しいと言われたホテルは、よくいえば趣のある、悪くいえばオンボロで廃業寸前といった雰囲気の場所だった。
汚いものが嫌いなフランスは思わず顔をしかめる。
なんであの子はこんなところに誘ってきたんだ。
あんなに可愛い子だったらいくらでも顔で金を儲けることができるだろうに。こんな場所をわざわざ選ぶということは、余程生活に余裕がないのだろうか。
多少の違和感を覚えつつも、物事を楽観的に考える節があるフランスは、そこまで気にもとめずにホテルの中へと入っていった。
貧しげな外見とは裏腹に、ロビーは意外にそこまで汚れていなかった。
それほどオーナーが大切に扱ってきたのだろうか。フランスは少しこのホテルに好感を覚える。
送られてきたメールには、お金は既に払っているから心配ない、ということと、鍵は私の連れだということを言えば渡して貰えるようフロントに頼んでおいた、という要件が書かれていた。
早速フランスはフロントの方に歩いていき、接客を担当している従業員に向けて彼女の名前を出す。すると、「あ、あぁ、あの…」と呟いて、あっさりとホテルマンは鍵を渡してきた。
ここの個人情報の管理はどうなってるんだ…
フロントの方に目をやると、先程接客をしてくれた従業員がこく、こくと船を漕ぐ姿が見えた。
前言撤回。やはり、このホテルは見た目通りぞんざいに扱われているみたいだ。
呆れから思わずため息をつくが、正直自分にとってはそちらの方が都合がいい。
フランスは鍵に刻まれた番号の部屋に向かうため、階段を登っていった。
体力が少ないフランスは、階段を5階も登ったことでくたくただったが、何とかお目当ての部屋に着くことができた。
念の為、鍵の番号と部屋番号が同じことを確認すると、フランスは鍵を鍵穴に突っこむ。
そのまま時計回りに回すと、カチャリ、と鍵が開いた音がした。
ドアを開こうと、ドアノブに手を置いたところで、フランスは、自分の心臓がドクドクと早鐘を打っていることに気がつく。
なんか、嫌な予感がする。
自分の体を伝って落ちる汗が、階段を登った疲労で出てきたものなのか、それともこの予感による冷や汗なのか、判別がつかない。
どうして彼女はあんなに美人でありながら、その顔に釣り合わないこのホテルを予約したのだろう。
いや、それは何となく分かる。ここの警備がざらなことを利用して、ホテルの部屋までは顔を合わせないようにするためだろう。さっきのホテルマンの雰囲気から、フランスにもそのことは理解できた。
では、どうして彼女は、わざわざホテルで直接合うなんて、本来不可能なことをしようとしているのだろうか。
「…あー、もういいや!」
そこまで考えたところで、フランスは思考を放棄した。考えるのが面倒くさくなったのだ。
彼のケセラセラな気質は、ここで悪い方向に作用してしまった。
どうせ大丈夫でしょ。
フランスはパチンと頬を叩くと、無理やり心配を吹き飛ばす。
そして、また不安がせり上がってこないうちに、バンッ、と勢いよくドアを開けてしまった。
「…あ?」
蓋を開けてみると、フランスの予想に反して部屋の中は電気がついていなかった。誰もいる気配がない。
…まだ着いてないのかな
フランスは自らの心配が杞憂に終わったことに拍子抜けしつつも、ほっと息をつくと、居間の方に向かう。
開けたドアが、バタンと音を立てて閉じた、その時だった。
「こんにちはー、フランスくん?」
「え、」
後ろから急に声をかけられて、フランスはびくりと肩をふるわせ、誰だ、と後ろを振り向くまもなく、肩を掴まれて無理やり後ろを向かされる。
「はは、まさか本当に来てくれるなんて思ってなかったわ」
「なっ、あ、は?なんで…」
思わぬ出来事に、フランスの脳はショートしかけてしまう。
急に体の向きを変えられて、相手が自分より早く来ていたことに驚いたというのもある。だが、それ以上にフランスが目を見開く事実があった。
相手は、フランスが目を引かれたまつ毛が長い金髪の子でも、ましては女でもない_
「男、が…」
大柄の男だった。
「君は騙されたんだよ。女のフリして会いに来た俺にさぁ」
「は…?」
騙された?
いや、え?なんで、ってか、どういうこと?
衝撃的な出来事に思わず固まってしまう。
「おかしいと思わなかったの?なんでここまで顔を合わせようとしなかったのか。普通ならちょっとは違和感を抱くだろ〜」
「…」
いや、覚えてたよ、なんかおかしいとは思ってたよ…!
目の前の男の言葉を耳に入れながら、フランスは段々と状況を理解し始めていた。受け入れることは出来ていないが。
世間一般でいう、ネカマというやつだろう。男性が女性として振る舞い、相手を騙す。
そしてそれに、フランスはいとも簡単に騙されてしまったのだ。この目の前に立っている男に。
「は、はは…」
いつの日か、「あなたの後先を考えないくせに自己愛が行き過ぎてる性格は、いつか痛い目にあう」とイギリスに言われていたことを思い出す。
そして今、彼の言うとおりになってしまった。まさに今、自分は今世紀最大の痛い目に遭っている。
フランスの顔につぅー、と冷や汗が流れる。
なんで自分はあの予感を信じなかったのだろう。あそこで考えるのをやめてしまったのだろう。
屈辱的、無様、フランスの今の心情を言葉にするなら、こんなところだろうか。相手に対する憤りだとか、自分の安直な行動に対する後悔だとか、色んな感情が一気にせり上がってくる。
自分の能天気な性格を恨みながらも、せめて、何とか焦りがバレないよう、フランスは出来るだけ余裕そうに振る舞おうとした。
「…目的はやっぱ金?金が欲しいんでしょ?」
相手の望みは大体わかる。こういうときは金を要求してくると相場が決まっている。
生憎、結構な金を持ち合わせているフランスは、相手にとって格好の餌食だろう。もっと金をせびってくるに違いない。
ごくり、と喉仏を鳴らす。
自分の身ぐるみが全て剥がされないよう、何とかお金がないということをアピールしなければ。
「は?違うけど」
そんな緊迫した状況に、不釣り合いなほど気の抜けた声が響いて、フランスはぽかんと口を開ける。
「ち、違う?」
金ではないのか?それなら、まさか、内ぞ_
「抱くためだよ、あんたを」
「…え?」
だく?
ダク?DAKU?だく…
「抱くぅっ!?」
だくって、あの抱く!?は、いやなんで!?
せっかく状況が飲み込めてきたというのに、男の爆弾発言により、フランスの頭はまた真っ白になってしまった。
無理もない。女性とヤリモクでホテルで会おうとしたら、そこには男がいて、そして何故か金銭ではなく体を強要してこようとしている。本来の目的と真逆であるし、相手の意図も分からない。
呆然としているフランスを置き去りにして、目の前の男が更なる言葉をまくし立てる。
「好きなんだよ、お前みたいなヤリチンがさぁ。無様に謝罪してくる様がさぁ…分からせたいの、俺は。お前はこの世界の中のちっぽけな1人の人間で、弱くてもろいってことを!」
「え、ぇ…」
どういう癖だよ!?
突然開示された、彼の特殊な性癖に、フランスは怪訝な顔をする。
相手を分からせたいという気持ちなら理解できなくもないが、どうしてわざわざ、恋愛対象が自分から外れている相手を選ぶのだろう。
いや、自分の場合は別に外れてはいないかと、ある一人の男のことを思い浮かべて、より気を悪くする。なんで当てはまっちゃうんだ。
「なぁ、だから_」
男がフランスの腰にスっと手を置く。
その触り方は、彼から漏れ出す威圧感や恐怖とは裏腹に、優しく壊れ物を包むような触り方だった。
まるで、自分がリードしてやるから、と上から目線で、自分はいい男であると勘違いしているように感じられ、フランスは酷く嫌悪感を覚える。
「抱かせてくれよ」
フランスに顔を近づけ、目の前の男はこちらを覗いてくる。毛穴からまつ毛の本数まで数えられそうな距離にまで近づいてきて、フランスは思わず息を止めた。
「…ぅ」
彼の瞳は酷く濁っていた。
例えるなら、ゴミがポイ捨てされそこが見えなくなった茶色い川のようだ。
相手の性格がそのまま反映されたかのようなその瞳は、しかしずっと見ているとどこか引き込まれそうになる危険な雰囲気があった。
汚い、汚い、汚い!
彼に触れられていること、彼の視界に入っていること、の全てが気持ち悪くて、むずがゆくて、全身に鳥肌がたつのが分かる。
触るなよ、覗いてくるなよ。そんなことしたら俺まで汚れるだろ!
目の前の男はそんなフランスの心情を知ってか知らずか、口を弧のようにして目を細め、怪しげな笑みを浮かべている。
そのせいで何を考えているかが分からない。彼はフランスからしてみれば人間味というものが欠落していて、もはや、怪物のように映っていた。
フランスはこの男に説得を試みても意味がないことを悟る。
このまま何もしなければ、確実に犯される。そう自覚すると、恐怖で足がすくんだ。
なんで自分が、なんでこいつに
ふと、フランスは目に涙が溜まってきていることに気がつく。
激しい後悔と果てしない絶望感に、フランスは無意味に引きつった笑みを浮かべた。
目の前のこいつから、自分はどのように映っているのだろうか。
とっくのとうにバレているのだろうか、自分の心が恐怖に支配されていることが。
もしバレているなら、彼の目的である自分を分からせるという目的は達成されていることになる。それがあまりにも癪で、フランスは手をキツく握りしめた。
誰かに、特に目の前のこいつに支配されるなんてことは、フランスの地雷中の地雷だった。
助けろよ、誰か…!助けて_
「イギリスっ!」
はっ、と息を飲み込んで思考を現実に無理やり引き戻すと、強く、目の前の男の肩を押した。
突然の出来事に反応できなかったのか、彼の体が後ろによろけ、フランスの体から離れる。
その隙をついてフランスはバッと洗面所に駆け込むと、引き戸をバコンッと大きい音を響かせて勢いよく閉めた。
その後で、あのままドアを開けて逃げた方が良かったのではと思いなおす。しかし、もう持ち直したのだろうか。男がドアをバンバンと叩き、扉を開けようと取ってに力を入れ始めたので、もう後戻りは出来そうにない。
フランスは全身の体重をかけて、ドアが開かないよう歯を食いしばりながら、スマホを急いで取り出す。
そして、メッセージアプリを開いて1番初めに目に入った、いや、意識的にフランスが入れたのかもしれないが、イギリスとのトーク画面をタップした。
指が震えて上手く文字を打つことができない。それでも何とか言葉を紡ぎ、
『たすけて』
とメッセージを送る。
早く既読をつけてくれ!
フランスがちらりとドアの方を一瞥すると、ギシギシと揺れて今にも壊れそうになっていた。
このままじゃ突破されるのも時間の問題だ。体力も力もきっと向こうの方が強い。
ピコンッ
そんな絶望的な状況に、一筋の光が差し込んだ。
この場面に不釣り合いな軽快な通知音が、フランスには希望のように感じられる。
いつの間に既読つけたのか、イギリスからのメッセージが来ていたのだ。
『今どこに?』
心配や気遣いが一切感じられないその文章が、フランスにとってはとても心強かった。
来てくれるんだ、助けてくれるんだ
今の状況下に不釣り合いな感情が込み上げてくる。
フランスは、イギリスがいざというときには助けようと思ってくれるのが嬉しかった。彼は絶対に自分のことを見捨てるだろうなんて思っていたから。
『場所は_』
と、あの男から送られてきた住所を思い出しながら現在地を送信したところで、気が抜けたのか、ギギギッ、とドアに隙間が空いてしまう。
一気に感情が恐怖に支配される。
ひっ、と声を漏らし、何とかドアを閉めようとするが、一度開いてしまったら体格差的に戻すことは困難だ。
その隙間に指をいれられ、ドアが開く。そしてフランスは、男に強引に手を引っ張られて外に投げ出されてしまった。
「いっ…!」
床に強く頭が打ち付けられて、脳がぐわんぐわんと回る。体に力が入らない。
その好機を狙って、男は自らのネクタイでフランスの腕を縛り、足を組み敷いた。
「おい、なぁ、よく抵抗してくれたよなぁ!?」
男の剣幕に意識が戻され、彼と目が合ってしまう。
その目は、餌を狙う獣のような、人間とは言い難い、欲に支配された瞳をしていた。
「馬鹿っ、馬鹿!やめろ!キモイんだよ!」
そのままズボンを下ろそうとしてくる男にしようとするが、手も足も満足に動かせないため、それも虚しく脱がされてしまう。
あらわになった自分の陰部に、フランスは、恥ずかしさやら、怒りやら、恐怖やらで顔に熱を集める。
「へぇーっ、結構立派じゃん」
男はフランスの下半身を煽るようにじっくりと眺め、陰茎に触れる。
「ひっ、」
完全に萎えてしまっている自分のものを触られたことへの気持ち悪さで思わず声を出す。
それを快楽から来るものだと勘違いしたのか、目の前の男は味をしめたように自分の後孔へ、と指を入れようとする。
「触るなよっ!馬鹿!汚い汚い汚い!」
「うるさいねーお前。無駄口叩くなよなー」
ずぷぷっ、と自分の後孔に指が挿入される。
入った、入ってしまった。こいつの汚い手が、自分の体内に…!
求めてない、汚い相手に指を入れられる。その気色悪さからよりフランスの後孔は敏感になっているのか、強い異物感を示していた。
なんで、なんで自分がこんな目に
今日の散々な出来事に、とうとう耐えられ無くなって涙が溢れ出してくる。
泣きたくない、泣いたらこいつの思う壺なのに!
そんなフランスの心情とは乖離して、目から涙がこぼれ落ちる。
だが男は、フランスの表情をあまり気にする素振りを見せず、それよりも気がかりなことがあるな反応を示した。
「…お前、処女じゃないの」
「…は、?」
焦点が合わない目で男が呟く。
言葉の意味がわからずに、フランスが思わず聞き返すと、それが気に食わなかったのだろうか。
ぎゅぅぅっ、と肘でフランスの腹を強く押しだした。
「ぐぅ゛ぅ゛ぅ゛う!?」
「処女じゃないのかって聞いてんだよ!!!」
どうやら彼は、フランスが後ろの方を経験済みだったことに腹を立てているらしい。女漁りを繰り返しているようなヤリチンを抱き潰すのが彼の趣味であり、だからこそ、フランスが予想と反して非処女であることが、男の吟味を逆撫でしたのだ。
腹を強く圧迫されて、胃液が逆流してくるのがわかる。
口の中が気持ち悪い酸っぱさで満たされて、吐く_と思った直後に肘が離され、フランスは強く咳き込んだ。
「っぐっ、ごほっ!ぐ、お゛ぇ、」
「…騙したな」
「う? ひ、」
男に睨まれていることに気づいて、フランスは息を止める。その顔は、まるで憎悪をそのまま凝縮させたような、酷くおぞましい顔をしていた。
「処女じゃないくせに女も抱こうとしてたのか…、喧嘩売ってのか?なぁ?なぁ!!!」
強く肩を揺さぶられて、全身がぶるぶると震え出す。
男は、もしかしたらこのまま殺されるんじゃないか、なんて思うような形相をしていた。
「あぁ、あぁ!!!いいよ!ぶち犯してやる!!!」
男はズボンのチャックを下ろすと、パンツを脱いで己のモノを露わにさせた。
そしてそのまま、ゴムもつけようとせずにフランスの後孔にあてがう。
「後悔しろ!反省しろ!その淫乱な体を分からせてやる…!」
理不尽な男の憎悪に、いつものフランスだったらもっと抵抗して反抗しようとするだろう。
だが、もう今のフランスにはそんな体力も無かった。この目の前の男に、心も体も完全に疲弊させられてしまった。
屈辱的だとか、無様だとか、そんなことも考えられなくてフランスは、諦めたように目を閉じた_
その時だった。
バコンッ
勢いよくドアが開いた。
「フランス!大丈夫です、か…」
まるで、ヒーローのように入ってきた男と目があって、フランスは気を取り戻す。
安堵感やら嬉しさやらで、思わず笑みを浮かべた。来てくれたんだ。
そこには、イギリスが立っていた。
どうやらイギリスは走ってここまで来たらしい。いつもの彼は、きっちりと最後までボタンをとめているのに、今目の前にいるイギリスの服装は、少し乱れていた。
「だ、誰だよお前!!!」
突然入ってきたイギリスに、男は慌ててズボンのチャックを閉めて立ち上がった。
完全に予想外な存在に、随分と焦っている様子だ。
「…何があったのですか、これは」
フランスと接するときもだが、それよりもより一層低い、冷淡なイギリスの声に、フランスはびくりと肩をすくめる。
「あ、えっと…」
イギリスが助けに来てくれた今、彼が来なかったら本当にまずい状況だったことは確かだ。しかし、フランスは、別のものに連絡していた方が良かったかも、なんて思い始めていた。
誰に見られてもフランスのプライドがずたずたになることは確かだが(そもそもプライドなど気にしている場合では無いが)、イギリスにおいては尚更だった。
彼に弱みを握られることになるし、何より好きな人にこんな醜態をみられるなんて耐えられないからだ。
そんなフランスの心情は知りえないだろうが、流石に自分で説明させるのは酷すぎると思ったのだろう。イギリスはフランスから男へと視線を移した。
彼は見たこともないような恐ろしい顔を浮かべていて、フランスは思わず苦笑いを浮かべる。
いや、やっぱこいつじゃなきゃだめだったかも
イギリスの剣幕に、男も萎縮したのか、後ろに足を下げながらも、それを悟られないよう大声を出して威嚇する。
「おいなんなんだよお前!こいつとどんな関係だ!」
だが、その威嚇は無意味に終わったらしい。イギリスは恐れる素振りを見せずに、男に近づいた。
「彼ですか?こいつは私の_」
他人、宿敵、セフレ。
イギリスがその後紡ぐであろう言葉を予想して、フランスは、こんなこと気にする場合ではないと分かりつつも、あまり聞きたくなくて目を逸らす。
彼はきっと、自分との関係をそう表現するのだろう。いや、事実そうではあるのだが、好意を感じさせないその言葉を想像して、勝手に切なくなる。
だが、そんなフランスの予想とは違い、フランスが一番求めている答えを、イギリスは答えた。答えてしまった。
「恋人ですよ」
「なっ」
「へ」
こいびと、コイビト、KOIBITO…
…恋人!?
今こいつ恋人って言ったか!?
それはフランスが成りたいと思えど、プライドやイギリスへの複雑な感情が邪魔をして絶対に叶わないと思っていた関係だった。
そんなものが、イギリスの口から直接出ている。
勢いかもしれない、男に上にみられるためかもしれない。
それでも、嘘でも、恋人だ、と言われたことに驚いて、嬉しくて、フランスは顔を真っ赤に染めた。
そんなフランスと対称的に、イギリスは顔を真っ黒にさせて男の前に来ると、足を振り上げて彼の弱点へと命中させる。
「ぐお゛ぉぉぉ!?!?」
男はこの世のものでも内容な叫び声を上げ、局部を抑えながら床に倒れ込む。だが、イギリスはそんな男の惨状を見ても容赦する気は一切ないらしく、更なる足蹴りを与えた。
絶え間なく供給される激痛に、男が気を失うと、ようやくイギリスは攻撃を辞めて再びフランスの方に向き合う。
イギリスは自らのジャケットを脱いでフランスの方に投げつけると、
「何をやってるんですか」
と、煽りと、軽蔑と、少しの心配を含んだような口調で言い放った。
ヴーーンというエンジン音が鳴り響く。
フランスがここまで運転してきた車の車内。その運転席には、先程とは違い、フランスではなくイギリスが座っていた。
車で一人で帰ろうにも、フランスは運転できそうな状態でもなかったため、手ぶらで来たイギリスに、ちょうどよく運転してもらうことになったのだ。
閉鎖された空間に想い人と2人だけ、なんて、普通ならドギマギするシチュエーションなのだろうが、ホテルでの出来事もあって車内は気まずい沈黙に包まれている。
そのうち、静寂に耐えられなくなってフランスはタバコとライターを取り出した。
さっき自分がされそうになったことがまだ受け入れられなくて、怖くて、指が震えている。フランスはそのことを悟られたくなくて、いつも通りタバコに火をつけようとするが、指が滑って中々つかない。
そんなフランスの様子を見かねたのか、イギリスが強引にライターを奪い、タバコに火をつけた。
突然の出来事にフランスはびっくりしてイギリスを見やる。しかしイギリスは不機嫌そうに眉間に皺を寄せているだけでこちらを見ようとはせずに、フランスにタバコを渡してきた。フランスはそれを遠慮がちに受け取ると、そのまま口に咥える。
「…何があったんですか」
このやり取りが口火になったのか、イギリスが口を開いた。いつもの何を考えているかイマイチ分からない口調とは違い、その声は不機嫌である、という感情が溢れ出ている。
それにフランスは、あー、と歯切れが悪そうに、それでも何とか事情を話しだした。
一連の流れを説明すると、イギリスは信じられない、というような目でこちらを見つめて大きなため息を着いた。
「馬鹿なんですかあなたは…!」
「うっさいなー、分かってるよ」
イギリスの呆れたような態度にムッとしてそっぽを向くが、イギリスはそれでも気にせずに言葉を続けた。どうやら余程ご立腹のようだ。
「…これに懲りたら、もうマッチングアプリを使うのを、というか、他の女と付き合うのを辞めてください」
「それは無理。もうこんなことそうそう無いでしょ」
「なっ」
咎めても悪びれなくへらへらしているフランスの態度に、イギリスは耐えられなくなったのか、バッと大声でまくし立てた。
「あなたを心配して言ってるんです!!!私がどんな思いでここにきたか分かってるんですか!?」
イギリスの勢いにフランスはびくっと驚いたが、すぐに持ち直して言い返す。
「分かってるよ、もうおかしいと思ったら辞めるようにするから!!!…てか、何でそんな気にかけてんの!?俺の事嫌いなんでしょ!?」
やけくそになってそう叫んだあとで、フランスは、しまったと思って、恐る恐る彼を見つめる。
やめて、答えないで。嫌いとは、言いきらないで。
だが、そんなフランスの気持ちとは裏腹に、イギリスは、傷ついているのか、怒っているのか判別がつかないなんとも言えない表情をしていた。
「それは!!それ、は_」
そこまで言ったところで、イギリスは口を噤んだ。言いたいけど言えない、というように口をモニョモニョと動かしている。
なんだよ、それ
フランスは気まずくなって視線を逸らす。
期待しちゃうじゃん…
また車内が静寂に支配される。が、それも一瞬で、イギリスが咳払いをしたことですぐに破られた。
「…今夜、付き合ってください」
「え、2回目?」
唐突な夜のお誘いに、フランスが思わず口に出す。こんなに積極的なのは初めてだ。すると、イギリスはギロリとこちらを睨んでくる。
「あなたに時間を使われてストレスが溜まってるんです。仕事、わざわざ切り上げて来たんですから」
「あぁ、うん…でも、その、なんか配慮とかないわけ?そんなんだから嫌われるんだよ」
「…そう直接悪口を言ってくるってことは大丈夫じゃないんですか」
イギリスはそう言いながらも気にしているのか、ちらちらとこちらに視線を移していた。そんなイギリスの態度に今度はこちらがため息をつく番だった。
「まぁ、いいけど」
フランスが窓の向こうを見ながらそう答えると、イギリスが安堵したように息をつく声が聞こえてきた。
いつもと違うイギリスの態度に、どうにも調子を狂わされる。何だか気恥しい雰囲気のまま、車はイギリスの家へ向かっていった。
「ちょ、おい」
帰って早々寝室に連れ込まれて、ベッドに押し倒される。そしてそのまま、フランスの衣服をぬがし始めた。
本当に配慮とかないのかよこいつ…!
と、心の中で毒つきながらも、少し興奮している自分もいる。
彼の態度は強引だが、それでいて優しさも感じられる。いや、自分が恋に盲目になっているだけかもしれないが。
あの男とイギリスとでは、やはり感じ方も変わってくる。
後孔に指を入れられて、あのときは異物感しか感じなかったのに、今はきちんと、自分の体は快楽を拾っていた。
「ん、う゛♡」
前立腺を刺激されて、思わず嬌声を出す。何だかみっともなくて、出さないようにと努力をしているのだが、どんなに我慢しようとしても、漏れでてしまう自分の声にフランスは顔を赤くする。
だが、イギリスはそんなフランスの反応とは裏腹に、どこか気に入らないような険しい顔をしていた。
十分に解れ、穴にイギリスのモノをあてがう、挿入する一歩手前というときに、フランスはそのイギリスの態度に気がついた。
「…お前、なんかキレてる?」
「え、何で」
「いや、顔がなんか…」
「あ、いや、別に。そんなこと、ないですよ…」
フランスが思わず口に出すと、イギリスはまさか指摘されるとは思っていなかったのだろうか、目を見開いた。イギリスは口では否定したが、彼の表情を見るにどうやら図星らしい。
お互いストレスが溜まった時にヤッているというのもあって、イギリスが上機嫌なところをそんなに見ているというわけでわないが、それでもいつにも増してイギリスは顔を顰めていた。
あまり乗り気じゃないのか、とショックを受けそうになるが、そもそも彼が誘ってきたのだからそれはないだろうと思い直す。
それでは、やっぱりホテルでの一件で、だろうか。
いつもとは明らかに違うイギリスの態度に、もしかしたら、なんて甘い期待を抱く。
フランスは別に気にしてないというように、それとない口ぶりで、あのときはぐらかされた質問を再びした。
「なんか、やっぱ今日のお前おかしいよ。来たときから、ずっと不機嫌だし。いや、そりゃあんなことに巻き込まれたらそうなるのも無理ないけどさ」
「…」
「何で、なんか、その、心配してくれるの」
自分で言っておいて、フランスは緊張やらで気恥ずかしくなってきたが、それ以上にイギリスの方がダメージを受けているようだった。返答に困って身を引いたイギリスに、これは彼の気持ちを聞くチャンスなのではないかと思い、逆に距離をつめる。
「なんで、あのとき、恋人って言ったの」
「…!それは、ただの、ハッタリで別に、深い、意味は_」
フランスの問いに、イギリスは答えずらそうに言い訳を連ねて、目をそらそうとするが、フランスがそれを許さない。
フランスがイギリスの目を覗き込んだ。
イギリスの瞳は、エメラルドグリーンの湖のように綺麗だ。だが、今の彼の瞳はピンクがかってみえて、なんだがぼんやりと輪郭を描いていた。
そんな彼の瞳にフランスには覚えがあった。
イギリスと体を重ねる前にビジュアルを確認するとき、姿見に写っている自分と、同じ目をしていた。恋の目。
あ、
フランスのイギリスへの期待が、確信へと変わる。あぁ、彼はきっと、いや絶
対_
そこまで考えたところでやっと、フランスは決心がついた。
今まで、彼に軽蔑されて、いがみ合う関係すらも解消されるのが嫌で口に出してこなかったこと。この先もずっと隠したまま、曖昧な関係が続いてくいくであろうと思っていたこと。
フランスはイギリスをまっすぐと見つめる。もう何年も顔を合わせてきて、並々ならぬ感情を自分が抱えている彼のことを。
緊張で声が震えるのを、無理やり押さえ込んで、きちんと伝わるよう、一音一音はっきりと発音する。
「好き」
「え、」
「俺はイギリスのこと、好きだよ」
思っていたより、すらすらと言葉が出てきて、フランスは今までの苦悩はなんだったんだ、と苦笑しそうになる。
そんなフランスの心情を知らないイギリスは、唐突になされた告白に目を見開いた。
「俺、ずっとイギリスのこと好きだった。傲慢だし皮肉屋だけど、でも綺麗で、その、紳士?、な、とこ。だから、恋人って言われたとき、めっちゃ嬉しかった」
「え、え、」
「だから、もし俺と同じ気持ちなら付き合って_」
「ちょっと待ってください!!!」
イギリスがバシッと口に手を当ててきたことで、フランスの告白は強制的に止まってしまった。
イギリスの顔は赤に染まっていた。彼らしくない、そう思うほど汗をかいていて、動揺したように目をかっぴらいていた。でもフランスからは顔を背けようとしない。
あまりの近さに、彼の息遣いや鼓動が直に伝わってくる。とうとうフランスも耐えきれなくなってぼんっ、とりんごのように頬を染めた。
フランスも内心、自分から気持ちを伝えることへの緊張だとか、もしものもしも、断られたらどうしようなんて不安で、心臓がバクバクだったのだ。
「え、えぇーと、そう!あなたは、私のこと嫌い、ですよね?だってあんなに煽って_」
「そうだよっ、嫌いだよ大嫌い!」
じゃあ何で_とイギリスが続ける前に、フランスがやけくそになって叫ぶ。
「大嫌いだけど好きなの!!悪い!?」
明らかに矛盾していると自分でも分かっていたが、だとしてもそれ以上言いようがない。
案の定イギリスは、言っていることの意味が分からない、というように瞳孔をぐるぐるさせていた。
「え、えぇと、一体いつから…?セフレを提案してきた後ですか?」
それでも何とか状況を飲み込もうとしているのか、フランスに質問を繰り返す。
「前、だけど」
フランスの回答に、イギリスは、驚いたような顔をする。だが、すぐにフランスの行動を理解したのか、あぁ、だから提案してきたのか、と額に手を当てた。わざわざ口に出さなくていいっての。
「で?返事はどうなの!」
イギリスに自分の心を見透かされているというのが、気恥ずかしくて、返事を催促する。
「俺の事、好きなの?」
フランスの問いかけに、イギリスは数秒言うのを渋っている様子だったが、すぅっ、と深呼吸をして、心を固めたのか、言葉を返してきた。。フランスが長年求めてきた言葉を。
「好きだよ」
沈黙。イギリスはフランスの様子を探るようにこちらを覗きみてくる。
そんなイギリスの態度全てが面白くて、フランスが高らかに笑いだす。突然の出来事にイギリスは呆気にとられて目をぱちくりさせた。
「何で笑ってるんですか…!」
「いや、ふっ、なんかお前がそんなこと言ってくんのおかしーなって!いつもの皮肉はどうしたんですかー紳士さーん?」
くふふ、と笑いを堪えながらフランスはイギリスを煽る。だが、これは照れ隠しのようなものだ。
皮肉に固められた言葉じゃなくて、イギリスが、本音で愛を伝えてくれたのが、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
好きだよ、好きだよ、好きだよ、何回も心の中でリピートしては笑いが溢れてくる。フランスのイギリスに対する感情は、好きの方が思ったよりも多いのかもしれない。
でも、煽ってやろうという意図があるのも事実だ。
今のイギリスは、なぜか皮肉を言葉にまとっていない分、感情が言葉に出やすい。そのおかげで普段と違い、自分がイギリスを振り回せるという優越感にも浸っていた。
そんなフランスの心情を知ってか、イギリスはキリキリと歯ぎしりをして怒りを抑えると、キッと目を細めた。
「覚悟してろよ…」
「あ゛っ♡あ゛っ♡あ゛っ♡とまっ、れ゛♡一回と♡ま゛れよ、ぉ♡」
絶え間なく供給される快感に、フランスの瞳はすっかりピンクに染まってしまっている。
シーツの上で酷く乱れた姿を見せているフランスの、汗でべたべたになった顔を撫でてやる。すると、触んな、と大して怖くもない、むしろ欲を刺激するような顔で睨んできた。
「さっきまでの余裕は、どうしたんですか?♡」
「う゛、♡っさい!♡も゛、ぉ♡♡あ゛、んたが、あぁ♡も゛っと、よ、うしゃ♡して、くれれ、ばぁぁ゛!♡」
こんなつもりじゃなかったのに、なんて後悔してもフランスが悪いから
いつも彼を配慮してあまり刺激してこなかった良いところを、イギリスは重点的に攻める。
その度に出てしまう嬌声のせいで、フランスはろくに言葉を話せていない。余程それが屈辱的なのか流し始めた涙を、イギリスは手で拭ってやる。
とても扇情的な彼の態度にイギリスは、酷く興奮するが、それと同時に嫌悪感も覚えた。
「っ、見せたんですか?」
「ぁ゛?♡」
「その顔も、体も、声も、態度も、全部あの男に見せたんですか…!」
イギリスは、ホテルでの一件をフランスよりも重大に(フランスが軽く受け止めすぎなのかもしれないが)受け止めていた。
彼の恐怖に沈んだ顔を思い出してイギリスは腸が煮えくり返りそうな怒りに襲われる。あの顔を見たときから、イギリスはフランスに対する感情が肥大化して、上手く取り繕えなくなっていた。
彼のそんな顔をみるのは、フランスの最大の宿敵である自分だけでいいし、今の乱れた顔をみるのは、彼の恋人、になった自分だけでいい。
恋人である、とあの時嘘をついたのは、そうなったらいいという願望と、あの男に自分の独占欲を示すためでもあった。
そんな重い気持ちを知りえないフランスは、何を言っているのか、というように数秒はてなマークを浮かべていたが、イギリスの形相を見て思い至ったのか、あぁ、と声を出した。
「別に♡、あいつの、やつは入れられてないしっ♡」
「…本当ですか?」
イギリスはイマイチ信じられなくてフランスに詰め寄る。するとイギリスは距離の近さに驚いたのかびくり顔を赤くしてと肩を震わした後で、本当だ、と肯定した。
「それにっ♡もし嘘でも、こんなに♡体許して、きもちいのは、ぁ♡」
_お前だけだし、そう続けた後で、自分の言ったことの恥ずかしさに気づいたのか、フランスはイギリスから目を逸らした。
そんなフランスの態度にイギリスは我慢できなくなって腰のスピードを早める。
「ば、かぁ♡!はや゛っ、♡く、すんなあ゛ぁ♡♡♡!」
フランスが、びくびくとより強く反応する。目の焦点が合わず、何とか意識を保とうとシーツを掴んでいるその仕草を見て、限界がちかいことを悟り、イギリスは身を乗り出す。
「フランスっ♡…好き、です、愛してます♡」
突然の告白に驚いたように、フランスが見開いたことで、再び彼と目が合う。青い透き通った彼の瞳はやはり美しい。初めて会ったときも、恋を自覚したときも、そのきっかけは彼の目に引かれたことだったと思い出す。それから自分は、フランスのことが嫌いで、それでいて愛していた。
フランスは、そんなイギリスの目を真っ直ぐに見つめたまま、愛を返してくれる。
「俺も、す、き♡大好きっ♡!」
「…♡!」
もう堪らなくなって、イギリスは、フランスの手を握り、彼に唇を落とす。フランスもそれに応えるように受け入れて、ぎゅぅっ、と、もう離さないと手を握り返してきた。
そしてそのままイギリスは、彼の中へフランスと共に、白濁を吐き出した。
コメント
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今回も神作品ですね…! イギリス様が嫉妬しちゃうの可愛すぎる… ニ人共、ツンデレ…? というかあのモブさん許せない…ぁ、でももうイギリス様が殴り飛ばしたから大丈夫ですかね…! 主様、栄養の提供誠に感謝致します…!!!
あーもう最初から最後までドキドキが止まらなかったよ…!😭💕 フランスの「大嫌いだけど好き」って気持ち、めっちゃわかるし、イギリスが助けに来たシーンはマジでヒーローすぎて叫んだわ…! あの「恋人ですよ」には胸がギュッてなった♡ ダークな展開もあったけど、最後に2人が素直になれて本当に良かった…! 続きが気になる〜!⋆♡