暴力的、またはセンシティブな表現を含みます。苦手な方はお勧めしません。
じゃら、と重い音がした。
鎖を引かれるたびに、首がぎりぎりと締まっていく。
「ぁが、やめ、、くるしっ、、ぃ……」
そろそろ肺に空気が回らなくなってきた。情けなく掠れた声しか出せない。
俺がどれだけ悶え苦しもうと、鎖の先の男は手を緩めようとしない。
ただ不気味な笑みを浮かべて、俺の身体を虐めるのを楽しんでいるように見えた。
死ぬ。
そう思った瞬間、ぐん、っと鎖が緩められた。
ひゅ、と喉がなり、床に倒れ込む。
しばらく過呼吸が治らず、必死に首を抑えて息を吸った。
だが、薬の効果でうまく体が機能しない。
心臓の音がうるさい。耳が痛い。
いつまでこんな暮らしを続ければいいんだろう_____。
「ねぇ、あきな。」
「俺のこと、抱いて……、?」
少し虚ろな目が、まっすぐこちらを覗く。だけど不思議と目が合っている感覚がしない。
冷たい夜風がカーテンを揺らす、住宅街はもうとっくに寝静まった頃。
いつものように、夕飯を食べて、お風呂に入って……何ら変わりない1日だった。
なのにどうして。
「……、」
絶句、とはまさにこのこと。
そもそも童貞くんにこんなシチュの対応パターンは搭載されてないんです。ましてや男……、
俺が何も言えずに、しばらく空白の時間が続く。
ふと、その沈黙を破るように湊くんが口を開いた。
「……あ、はは、、」
「やっぱ無理だよね、その、ごめ……、」
瞬間、光る銀髪の隙間から、大粒の涙がこぼれ落ちたのがわかった。それを隠すように、彼は急いで顔を背ける。
「ま、まって湊くん!!?泣かないで……、っ!」
この子の涙には弱い、それは自覚済み。
俺が慌てて駆け寄ろうとすると、湊くんは、俺から逃げるようにじりじりと壁の方へと後退った。
「やだ、、こないで……。」
泣き声を必死に殺そうとしながらも、ところどころで声が漏れる。
理由もわからず、俺のせいで湊くんをそんな顔にさせるなんて自身が許せない。
なんとか話を聞こうと、ゆっくりと壁へ近づくも……、
その拍子に、ゴミ箱が足に当たり、軽い音を立てて倒れた。
中から何かしらのゴミが溢れる。
(……、ん?なんだ、このゴミ……。)
捨てた覚えのない、見慣れない形状のゴミ。
よく目を凝らして見てみると、それは……
「…、錠剤………?」
「……ぁ、」
急いで隠そうとする湊くんの腕を掴み、そのゴミを拾い上げた。
「……ぅ…、あきな、!はなして、っ!!」
ぐいぐいと抵抗しようとする湊くんに構わず、錠剤を調べる。
(なんだこれ、市販の風邪薬……?)
(それからこっちは咳止めシロップか……?)
それだけなら、少し風邪気味なのかな、くらいで済むのだが……。
ひとつやふたつじゃない、目視では数えきれない量の薬たち。
ここまでくると、悍ましいまである。
「湊くん、これって……、」
_____オーバードーズ_____
近年ネットでも話題になっていた。
薬の過剰摂取。それも麻薬やらではなく、市販で買えるものでいいのだ。
それでも、同じくらいの高揚感を得られたり、依存性も高い。
「なんで……、」
湊くんがそういう薬を過去に飲んだ経験があることは、何となく知っていた。
だけどここに来てからは、そんなそぶりは見せなかったし……、
「、なんで、こんなことしたの……?」
「……っ、ごめ、なさっ……、」
今にも消え入りそうな、震えた声で、俯いたままそう答えた。
君の涙には弱いんだって。
to be continue…
コメント
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ほんと大好きな作品です…これからの関係に期待です!
フワァー…やっぱ好きだ……。不破湊の辛い過去が大好きっす。