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第9話
「新しい約束」
タイムカプセルを閉じ、気づけば夜の帳が公園を覆っていた。
街灯の下、俺たちは芝生に座り込み、涙で濡れた顔を隠すように笑い合った。
「なんか……泣きすぎて、目が腫れそう。」
ゆいなが鼻をすすりながら笑う。
「だな。でも……なんかスッキリしたわ。」
海斗が夜空を仰ぐ。
りあは俺の隣で、まだ赤い目をしていたけれど、柔らかな笑顔を浮かべていた。
「こんなに泣いたの、小学生の卒業式ぶりかも。」
俺たちは思い出話をした。
川で遊んだこと、くだらない喧嘩、意味もなく走り回った夏の夕暮れ――。
記憶が戻ってきた俺にとって、そのひとつひとつが宝物のように蘇り、胸を締めつけた。
やがて、沈黙が訪れる。
その時だった。
「……なぁ。」
海斗が口を開く。
「俺たち、また約束しねぇか?」
みんなが彼を見た。
海斗は真剣な顔をしていた。
「昔は10年後だったけど……今度は、一生だ。」
その言葉に、胸が熱くなる。
りあが小さく笑って頷いた。
「いいね。それ、すごくいい。」
ゆいなは涙を浮かべながら、拳をぎゅっと握った。
「絶対に裏切らない約束、しよ。」
俺はゆっくりと口を開いた。
「じゃあ……ここで決めよう。」
その場で、4人は向かい合った。
街灯に照らされた影が重なり合い、まるでひとつに溶けるみたいだった。
「俺とりあは――これから一緒に歩いていく。ちゃんと、付き合う。」
隣のりあの手を握ると、彼女は頬を染めながらも笑った。
「……うん。ずっと好きだったから。」
ゆいなは照れ隠しのように髪をかきあげ、ちらりと海斗を見た。
「じゃあ、私と海斗も……ね?」
海斗は少し照れくさそうに笑い、ゆいなの肩を抱いた。
「あぁ。俺がずっと守る。これからもな。」
俺と海斗は目を合わせ、強く頷き合った。
「俺たちは永遠の親友だ。」
「当然だろ。」
ゆいなとりあは互いに見つめ合い、手を取り合った。
「私たちも、永遠の親友。」
「うん、ずっと。」
そして――。
「俺たち4人は、永遠の親友だ。」
同時に声を合わせた瞬間、涙がまた溢れ出した。
夜空に星が瞬く。
ひんやりとした風が吹き抜ける。
でも心は、どんな夜よりも温かかった。
「この時間が……何よりも、いつよりも、幸せだ。」
俺は心の底からそう思った。
――そして、未来への扉が開かれるのは、もうすぐだった。
▶︎第10話へ続く