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新しい朝。
窓から差し込む光が、ふたりの寝顔をやさしく照らしていた。
志乃は圭吾の胸に顔をうずめながら、幸せを噛み締めていた。
だが、彼女の胸の中にはまだ言えない秘密があった。
それは、兄・陽一のこと。
数日前、志乃は陽一のある日記の断片を見つけていた。
そこには――
「鏡の中で過ごす時間は限られている。
いつか、現実の世界に戻れる日が来ると信じている。
だけど、もし戻れなかったら……」
書きかけの文章が止まっていた。
志乃は心が締め付けられ、圭吾に言えなかった。
「兄さんは、鏡の中でまだ苦しんでいるのかもしれない」
そんな時、圭吾の携帯が鳴った。
知らない番号だった。
出ると、低く冷たい声が響いた。
「高梨圭吾、油断するな。君の影はまだ完全には消えていない――それが君の弱みだ」
圭吾の顔が凍りついた。
二人の穏やかな日常は、知らず知らずのうちに引き裂かれていく。
影の圭吾の“痕跡”を狙う謎の組織の影が迫っていた。
志乃は震えながら圭吾の手を握った。
「私たち、守らなきゃ。兄さんも、君も、そして……私たちの未来も」
やがて訪れる、“選択の時”。
愛と記憶を守るための戦いが、静かに幕を開ける――。