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🎧「いない音」
朝。
いつもより、静かだった。
琉夏「……?」
目を覚ます。
違和感。
隣の部屋から、音がしない。
(……あれ)
リビングに出る。
誰もいない。
テーブルの上に、メモ。
“スタジオ。夜戻る”
琉夏「……珍し」
ぽつりと呟く。
一人で、部屋にいる。
それだけなのに。
やけに、静かだった。
冷蔵庫を開ける。
適当に食べる。
ソファに座る。
何も変わらない。
いつもと同じ。
でも。
琉夏「……なんだよこれ」
小さく呟く。
落ち着かない。
音を出す。
ベースを鳴らす。
いつも通りの音。
ちゃんと鳴る。
でも。
どこか、足りない。
(……ああ)
分かる。
いつもは、どこかでギターが鳴ってる。
無意識に、それを前提にしてた。
だから。
“いない”だけで、違う。
ベースを止める。
ため息をつく。
スマホを見る。
連絡しようとして、止める。
(……別にいいか)
ソファに倒れる。
天井を見る。
時間が、やけに長い。
夕方。
やっとドアが開く音。
冬星「ただいま」
琉夏「……おそ」
少しだけ、強めに返す。
自分でも、理由はよく分からない。
冬星が、少しだけこちらを見る。
冬星「なに」
琉夏「別に」
そっけなく返す。
少しだけ沈黙。
冬星が、ギターを置く。
冬星「……なんかあった」
短い問い。
少しだけ迷う。
でも。
琉夏「……いや」
首を振る。
また沈黙。
でも。
琉夏「……静かだった」
ぽつりと落とす。
冬星が、少しだけ目を細める。
冬星「そう」
それだけ。
でも。
冬星が、ギターを手に取る。
小さく、音を鳴らす。
それだけで。
空気が、戻る。
琉夏「……うるせえ」
ぼそっと言う。
冬星「さっき静かって言ってた」
琉夏「言ってねえ」
少しだけ笑う。
また、いつもの感じに戻る。
でも。
さっきの感覚は、ちゃんと残ってる。
“いなくてもいい”
それは本当。
でも。
“いないと、違う”
それも、本当。