ロビーは今日もにぎやかだった。Sproutが焼き立てのクッキーをテーブルに並べると、Shellyが恐竜型を見つけて大喜び。
「ティラノ型だ!絶対これが最強の味!」
「味に強弱はないよ!!」Sproutが即ツッコミする。
Veeはお決まりの調子で、「問題です!このクッキー、焦げ率は30%か50%か、それ以上か?」
「それ以上ってなに?!」
するとPebbleが「ワン!」と吠える。
「…それ以上!だって?」
「勝手にPebbleの鳴き声を翻訳しないで!」
Sproutがむすっと返すと、Veeはクスクス笑いながら画面をチカチカ光らせる。
Pebbleは椅子の下を駆け回り、時折「ワン!」と吠えてみんなの足首を突っついた。
その光景にさらに爆笑が起こる。
「やっぱり、みんなといると楽しいね!」
Dandyが笑いながらカップを掲げた、その瞬間。
――ブツン。
灯りがすべて消えた。
「えっ!?停電!?」
「私じゃないよ!?ほんとにスイッチ触ってない!」Shellyが必死に両手を振る。
完全な暗闇…ではなかった。
Astroの体が淡く青白く光り、Veeの画面も緑に光を帯びている。
だが、それはランプのように明るいわけではなく、顔や輪郭だけがぼんやり浮かぶ程度の光。
「…ねえ、逆に怖いんだけど」Sproutが震え声を出す。
「正直、ホラー演出にしか見えない」
「問題:この光景は怪談のワンシーンですか? 答えは…イエス」Veeが緑の画面を明滅させながら言う。
「普通にしてるだけなのに、なんでこんなにホラーなの??」
「よし、ブレーカー見てくる!」
Dandyが懐中電灯を掴み、奥へ走っていった。
残されたみんなの間に、不穏な沈黙が落ちる。
――カタッ。
どこかで瓶が落ちた音。
「ひ、ひぃ!?なに!?今の絶対なんか落ちた!」Shellyが肩を跳ねさせる。
「うわっ、心臓に悪い音だった…」Sproutがマフラーをぎゅっと握る。
――ギィィ…。
閉まっていたドアが、勝手に開いた。
「いやいやいや!風でしょ!?……だよね!?」Shellyが必死にみんなを見る。
「問題:ドアを開けたのは風ですか? 答えは…ノー」
「答えんなよ!!」一斉にツッコミ。
Pebbleは「ワンワンワン!」と勇ましく吠えてドアの方へ駆け出したが、何も見えずにすぐ戻ってきてテーブル下に隠れる。
「…勇敢なフリだけ?」Astroが光を少し強めながら呟いた。
――ザザザッ。
カーテンが揺れ、壁に大きな影が映る。
「でっかい影ぇぇ!!」sproutが悲鳴をあげて椅子ごと後ろに倒れる。
「……大きさ的に、多分ティラノサウルス」shellyが顔面蒼白で例えた。
「今そういう情報いらない!!」
Astroの光とVeeの緑の画面が影を強調して、不気味さが増す。
「2人が光ってるせいで余計怖い!!」Sproutが叫ぶ。
「完全な暗闇じゃないだけ感謝して欲しいんだけど?」
veeが皮肉っぽく述べる。
――バタンッ!
本棚から分厚い本が床に落ちた。
「きゃあああああ!!」ShellyがSproutにしがみつく。
「うわあ!ちょっと!僕盾じゃない!」Sproutが慌てる
Pebbleは勇敢に椅子の上に飛び乗り、前足をぐいっと伸ばして何かを指し示すような動き。
「……指さしてる場合?」Astroが眠そうにツッコむ。
――コツ、コツ、コツ。
一定のリズムで足音が近付いてくる。
「来る…来る来る来る来る!!!」Shellyがテーブルクロスを頭からかぶる。
Astroの光が震えて強くなり、逆に怪談の演出ライトみたいになる。
「ちょ、Astro!怖い!光で余計に怖い!」
「しょうがない……」
「問題:この足音の正体は幽霊ですか? 答えは…」
Veeが光を強める。
「答えるなぁぁぁ!」
足音が目の前まで迫り――
パチンッ!
灯りが一斉に戻った。
「うわああああああっ!!!」
悲鳴をあげた全員の前にいたのは……Dyle。
Dyleはソファーで震えている皆を見下ろし
「……騒がしいので、確認に参りました」
と落ち着いた声で述べる。
「は!?じゃあ、さっきの足音もドアも本も、ぜんぶDyle!?」
「はい。落ちかけた本を直そうとしただけです」
そこへDandyも戻ってくる。
「よーし!ブレーカー直したよー!……って、なんで全員そんなに真っ青?」
数秒の沈黙ののち、
「なーんだ、ぜんぶDyleかぁーーーっ!!」
「心臓に悪いよぉ!!」
「問題:今夜の被害者は誰? 答えは――全員のメンタル」
「お前が一番怖いんだよ!!!」
全員総ツッコミ、そして爆笑がダイニングを包んだ。