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ギャルマリこと可藤茉莉香 (かとう まりか) 17歳。


ゆるふわパーマのパッキンギャルである。紗月 (さつき) の友人である彼女は明日から行われる例大祭を前に、巫女の助勤として手伝いに来てくれていたのだ。


「え――――っ! シロたんもヤカンたんもゲンさまの従魔なんだ~。くそヤバなんですけど~」


「なんだよマリ、異世界ものとかに興味あんのかよ?」(健)


「うん。てゆぅーかー、ダンジョンがどーたらとかモンスターがなんたらとか、最近紗月がよく言ってるんだよねー。あの子 ”チー牛” 入ってるオタ子だからぁ、あんまし気にしてなかったんだけどぉ、あの話ってマジだったんだねぇ。沸くわー」


「……ちーぎゅうってなんだ~?」


「【チーズ牛丼】のことですよお兄ちゃん。【陰キャ】を指すネットスラングですね」


居間にはいってきた楓 (かえで) が答えてくれた。


タオルを肩に掛けてるところを見ると湯上りなんだろう。すこし上気した顔が色っぽい。


「なるほどなぁ、学校での紗月は陰キャなのか?」


「うん、ちょびっとだけどね~」


「チー牛とはそういうことか……。さすが東京人、よく知ってるな」


「えっなに東京の人! わっわっ楓たんお友達になって~」


「まぁそう慌てるな。ここに居るのはみんな仲間なんだから、自由に自己紹介して喋ったらいいとおもうぞ」


「きゃー。みんなでドメスティック・パリピになろ~」


ドメスティック・パリピ……?


「ドメスティックは家庭的という意味だから、”家で盛り上がれる人になろう” 的な感じですかねお兄ちゃん」


要はお家で楽しく騒ぎたいのね。


楓が俺の隣に座ると、その横にはギャルマリがくっついてきた。


クンクン、湯上りの女の子っていい香りがするよね。


女の子たちのパワーに押された健太郎は、いつしか部屋の隅まで追いやられていた。


膝を抱えたまま畳にのノ字を書いている。


そんな元気のない健太郎の肩を、シロがポンポンとやさしく叩いていた。


『まぁ元気だしてよ!』 とでも言っているようである。






久実 (くみ) さんが居間にはいり、所用で外していた茂 (しげる) さんも戻ってきた。


慶子 (けいこ) ・マリアベル・メアリーの3人は台所で紗月を手伝っているから、これでみんな揃ったことになる。


「キロちゃん、今から夕飯をお出しするから運ぶの手伝ってちょうだい」


慶子が居間に顔をだした。どうやらご飯ができたようである。


「はい、すぐに参ります!」


と俺の後に控えていたキロが立ちあがる。


「じゃあ私たちも運ぶのを手伝いますね!」


久実さんの一声で、周りにいた女性たちはみんな台所へ行ってしまった。


残された野郎たちはというと、


茂さんの指示で隣の座敷を隔てている襖を取り外したり、二つのテーブルをくっつけたりと楽しい晩餐の準備を整えていく。


そこに並んでいく数々の料理、ビールやジュースといった飲みもの類、電気ジャーはどっしりした一升炊きのものに、いつも使っている五合炊きのものが並んでいる。


いったい誰がそんなに……って、居たよね【しのけん】ばりの大飯ぐらいが。


てんこ盛りご飯を前に『**おん!』**とか言いそうだよな。


今度グレーのスーツを用意しといてやろう。


それにしても……。


明日から祭りだというのにこれでは食事の準備だけでも大変だよな。


茂さんは嬉しそうだけど、これじゃあ紗月の方が参ってしまうだろう。


そこで明晩は、簡単手間いらずの【焼肉】なんかがいいかもね。


さらに明後日は【もつ鍋】なんてどうだろう。博多の名物だしみんな喜ぶんじゃないかな。


そうなるとホットプレートがもう一台は必要になるよな。今は2台あるけど。


あと土鍋とカセットコンロも一緒に買っておきましょうかね。


忘れないうちにメモしないとな。


祭りで神社は大忙しになるから、夕食の準備ぐらいはこちらでやるようにしましょうかね。


どうしてものときは、ほか弁屋で鉢盛頼んでもいいしな。


ご飯さえ炊いておけば、その辺はどうとでもなるだろう。






さて、晩ごはんを頂きましょうか。


くっつけた二つのテーブルをみんなで囲んでワイワイガヤガヤ楽しく食べすすめていく。


東京から来たみんなに新メンバーである、健太郎、ヤカン、マリを紹介していった。


俺の右隣にいる楓とマリはだいぶ打ちとけたみたいで話しも弾んでいるようだ。


左隣の定位置にはマリアベルが座っており行儀よくご飯を食べていた。


目の前では箸が上手く使えないメアリーを、慶子が手をとりながらやさしく教えている。


そしてみんなを見渡すことができる、お誕生日席には紗月が座っていた。


この日本では、おひつを側に一家のお母さんが座ることが多いだろうか。


彼女の横にはドーン! と一升炊きのジャーが鎮座している。


「はい、ヤカンちゃんこれお願いね!」


「お任せください紗月さま!」


紗月が ”おかわり” を茶碗によそうと、待機していたヤカンがそれを受けとり健太郎のところまで運んでいるのだが。


頭にお茶碗をのせて、とっとこ運んでいくヤカンの姿がなんとも可愛らしい。


一方、反対側の端っこの席には健太郎がいた。そこでシロ達と一緒に夕飯を食べているのだが。


背中を丸めてメシをかき込む、その姿からはどこか哀愁が漂よっていた。


……ガンバレ健太郎。






「ねーねーゲンさま、わたしもダンジョンへ行ってみたいんですけどぉ。モンスターが出ても秒でやっつけるし、テンアゲしてがんばってみるし!」


「そうだなぁ。しかし甘く考えてるなら泣くことになるぞ。怪我は治せるけど、殴られても切られてもどちゃくそ痛いんだぞ」


「それでも頑張ってみたいの! 呼ばれればガンダでいくし、”全集中の呼吸” で臨むし!」


そこで俺は友達である紗月に意見を求めた。


「てことなんだが、ダンジョン探索においては先輩の紗月はどう思う?」


「うん、いいんじゃない。マリはギャルだけど運動神経は良い方だしその辺の子よりか使えるとおもうよ~」


おまっ……、使えるとか言ってひどくね! 友達でも言い方ってもんがあるでしょうよ。


「まあ、紗月がそう言うのであれば、しばらく様子を見てみるか」


「だってよマリ、よかったね! 食事が終わってもそのままちょっと残っててね」


「あ、うん、オケまる」


……そして夕食を終えテーブルを元に戻す。


例によって茂さんに準備してもらい、みんなで女神さまに祈りを捧げた。


ギャルマリの身体が光ってたので何かしら頂いているとは思うのだが……。さて鑑定!



マリカ・カトウ Lv.1


年齢 17

状態 通常

HP 1818

MP 3333

筋力 8

防御 6

魔防 20

敏捷 7

器用 8

知力 14

【特殊スキル】 付与魔法(U)

【スキル】 魔法適性(聖、炎、氷、毒)

【称号】 退魔士、付与術士、

【加護】 ユカリーナ・サーメクス



可藤 茉莉香 17歳。


うん…………、なんだ なんだ!?


Lv.1だというのにMPの値が33だと!


魔防と知力もくっそ高いし。


ギャルのくせして知力高いとか、ツッコミどころが多すぎるだろ。


ていうか、最初からステータスいじってますよね?


この【付与魔法】ってユニークだし、今付けましたよね?


称号欄には退魔士に付与術士か……。


もともとが退魔士や妖術師といった家系なのかもしれないのか。


(………………)


あとコレな。


魔法適性の【毒】ってなによ。


エンチャンターなら毒は王道すぎるけど。扱いには注意が必要だな。


やたらめったら毒をまき散らされても困るし、解毒なんかはどうなってるんだろ?


魔物やモンスターに対しての直接エンチャントなんだろうか?


剣や防具などにもエンチャントできるなら大きな戦力にはなってくれると思うけど。


この【加護】も女神さま推しってことで付いているんだろうね。


勇者もだけど、こいつも鍛えてやれってことみたいだな。


健太郎に続いて茉莉香もですか……。


ハァー、しゃーないなー! 何とかやってみますよ女神さま。






片付けが終わって閉まっていた襖が再びパーンと開いた!


すると紗月と楓が ”ライト・アーマー” を身に着けて登場してきた。


さながら、コスプレショーのノリである。


あ~あ、得物まで持って。何やってんだよコヤツら……。


「えっ、なに、凄! わたしもパリピたーい!」


ギャルマリも大はしゃぎ!


茂さんや、剛志さん、お母さんの久実さんまで盛り上がっている。


ま、いっか。祭りだしな……。


あ~ぁ、今度はスマホによる撮影会が始まっちゃったよ。


紗月や楓もポーズまでとって、もうノリノリ!


まぁ身内でやってることだし、害はないし、


シロもヤカンも喜んでるから、おけまる! なんつってなw

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