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いかがだったでしょうか。 試作集の方にプロローグがありますので、良ければそちらもどうぞ。読まなくても全然差し支えはないと思います!またのんびり更新します〜〜
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︎︎⚠︎︎注意⚠︎︎
・ご本人様方には一切関係がない
・捏造、妄想要素が激しい可能性あり
・特徴を捉えきれていない部分が多々あり
・恋愛要素はないが友情的てぇてぇ要素が多い?
・【Potion Craft】というゲームをオマージュしている設定、名称が多い。
※GTAの役職も人物設定に関与している
・投稿頻度がノロマかつ不定期
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こんぶです。
ぐちさんが主人公の短編新シリーズです。
行ってらっしゃいませ~( ◜ᴗ◝)و
(カランカラン)
表のドアを開ける音が鳴り、俺は作業を止めて足早にカウンターへと向かう。ふと、さっきすり潰した薬草が手に付着していることに気づき、危ねぇとエプロンに擦った。
「こんちわー、今日はどんなポーションをお望みで?」
「おーここの店主さんか。実はな、今朝仕込みをしてる最中に指切っちゃったんだよ。そんなに深い傷じゃないと思うんだけど、女房が見てもらえってうるさくてな…。」
「なるほど、それなら【回復ポーション】ですぐに治りますよ。ただ、軽傷用のやつ今ストック切らしちゃってるんで、ちょ〜っと時間貰っていいっすか?」
「おう、構わないよ。」
「あざっす。」
こうして、みんなが幸せになる”薬物”を調合して売る平和な1日が、今日も始まるのだ。
〈回復ポーションの作り方〉
①臼にミズハナとテラリアを入れてすり潰す
②水の入った大なべに①を入れる
③大スプーンでかき混ぜる
④ ひしゃくで水を足して微調整
⑤ ふいごを使って一気に熱す
⑥微量の冷却・保存魔法をかけたびんに移す
⑦コルクで栓をしてラベルを貼り付けたら完成
(回復ポーションってのは生命の葉2枚で作るのがベストなんだが、それだと一般市民はオーバーヒールで中毒になっちまうからな。)
よしっと出来上がったポーションを天秤にかけ、その価値を決める。そして、基準となった値段を顧客に提示し、上手いこと交渉をすれば上振れた額で買い取ってもらえる。開業当初は、交渉なんて無理だと思っていたが、たまたま過去に読んでいた伝記や物語、耳にした噂などをネタにしてみると、案外気に入ってくれた。それを知ってからはポーションの知識に限らず、様々な分野にわたって情報収集と研究を行うようになり、この辺りでは、ちょっとした物知りとして名が知れている。そのせいか情報屋として頼られることもあり、それはそれで嬉しいのだが、ポーションを買ってくれというのが本音である。ありがとよ兄ちゃん、と去っていく背中に手を振り俺はスツールに腰掛けた。
(そういえば研究に没頭しすぎて、今日の日付よく分かんねぇな。)
顧客がやって来て時間感覚を取り戻すというのは、最近日常茶飯事になっていた。流石に人を治療する身としては不味いか、と気にし始めた瞬間、時間感覚が狂ったもう1つの理由がやって来る。
(カランカラン)
「ぐちつぼ〜いつもの〜。」
「お、らっだぁじゃん!久しぶりだなぁ。」
こいつの名前はらっだぁ。俺と同じく王都の大聖堂で治癒士になるための諸々を学び、今はフリーの治療士として冒険者パーティの討伐同行や魔法全般を扱う傭兵、ギルドからの個人的な依頼などをこなして稼いでいるらしい。前は2日に1回の頻度で俺のとこに訪れていたが、最近姿が見えないなとは思っていた。カウンターに置かれた材料といつもの、という言葉で注文は大量の【マナポーション】だなと勘づく。
「しばらく来れなくてごめんねぇ、寂しかったっしょ?」
「別に…。」
「でも、さっき嬉しそうに俺の名前呼んでなかった?」
「うるせぇ、いつものポーション作ってやらねぇぞ!」
「えぇ〜?余った材料はタダで貰えるかつ報酬も高値で、外での面白い話も聞けるのに〜?」
「……やりゃーいいんだろ。」
「そうだよね。」
不貞腐れた俺の顔を見てらっだぁは、ふははっと楽しげに笑う。こいつの言ってることは本当にその通りで、マナポーションに必要な材料(カザハナ、ミズハナ、魔女キノコ)は注文する量の分きっかり自前でくれるし、報酬は交渉せずとも約2倍ほど弾んで貰えるし、何より有力な情報が滅茶苦茶聞ける。こんな好機を逃すなんて、俺には出来るはずもなかった。
(これが身内の特権ってやつだな。)
そして、俺はカウンターの奥、調合兼研究室に材料を運び、ポーションを手際よく作り始める。らっだぁはと言うと、ほぼあいつ専用みたいなスツール(窓際端っこ)に腰かけ、欠伸をしながらこちらを眺めている。恐らく、長い旅の後ここに直行してきて、大分疲れているのだろう。疲労回復のハーブティくらい出しときたいところなのだが、生憎そういうのは好みじゃないらしい。なら早く飲ませてやろうと、ポーション作りの手を急かすのだった。
〈いつものポーションの作り方〉
①臼にカザハナとミズハナ、魔女キノコを入れてすり潰す
②水の入った大なべに①を入れる
③大スプーンでかき混ぜる
④ ひしゃくで水を足して微調整
⑤回復ポーションの材料も入れる
⑥ふいごを使って一気に熱す
⑦微量の冷却・保存魔法をかけたびんに移す
⑧コルクで栓をしてラベルを貼り付けたら完成
(マナが枯渇している状態ってのは、無駄に体力を消耗して疲れるからな。疲労回復も追加した方がいい。そこで、回復ポーションを作るための生命の葉を入れて、万事解決って訳だ。)
ちなみに、らっだぁは同時並行して魔法を使うから毎回マナの消費が激しい。そのため、ここに来る度大量のポーションを頼んで、数日で使い切ってまた買いに来て、を繰り返している。効率が悪いというか、身体がすり減っていそうで見ていて心配になる。
(最近出来た新しいポーション、その効果を追加して飲ませてみるか?実験台欲しかったんだよなァ~ちょうど。)
目の前にいる俺に気づかず突っ伏して寝ているらっだぁは、その思惑に寒気がしたのかスっと目を覚ました。
「言われたやつ出来たぞ。」
「きちゃ〜〜、早くくれ。」
「ほらよ、たんと味わいやがれ。」
お礼を言うより先に飲み始めるらっだぁに呆れつつ、残りのポーションを紙袋に詰めてカウンターに置いてやる。空になったビンを受け取り、その後は経過観察という名の雑談タイムが始まった。
「で、魔女キノコの仕入れ先は見つかったん?」
「まぁ、あの店から仕入れてるけど普通に高くてやってられん。」
「じゃあ、今回多めに持ってきたのは正解だったんだ。」
「まーじで助かった。これなら数日は持つ。」
そう、マナポーションに必要不可欠な魔女キノコという材料。これは、最近研究し始めた【耐性ポーション】系にかなり持ってかれている。薬草類は、苗を買い取り裏庭で育てているためそれほど困ってはいない。つまり、キノコという菌類なのが難点なのだ。ここ周辺にはキノコを育てる環境がなく、外から高値で仕入れるしか方法がない。客足の少ないこんな田舎のポーション屋では、地道に1、2個ずつ買うのがやっとだ。
(お得意様なんだから、ちっとは値引きしてくれてもいいのに……なんて思うのは贅沢か?)
「らっだぁもあの店から買ってきたんだよな?やっぱ稼いでんなァ〜。」
「ん?あ、違う違う。この前、魔女の住む家見つけてさ、なんかたくさん貰った。」
「……ん、それはどういうこと?魔女の住む、家?」
「そう、たまたま森を探索してたら辿り着いて。返事ないから誰もいない、と思って中入ったら普通に怒られた。」
「あーそんで難癖つけられたんだ。」
「本当にひどいよ。だって俺結構叫んだよ?誰かいますかぁーって叫びながらドア開けて…。」
「叫びながらドア開けて…は、返事ないどうこうじゃなくて普通に不法侵入だろ(笑)」
そんなおかしな話を聞かされてる間に、俺はあることを思い出した。魔女キノコというのは、湿度の高い薄暗い環境(地下洞窟とか)かつ魔女が住む周辺で微量の魔力を吸わないと育たない。きっと、仕入れ先の人は魔女と交渉しているから、高値で売るしかないのかなというビジネスマンとしての同情に変わった。
「とにかく、その魔女に俺話してこよか?」
「え、そんな失礼なことしといて交渉に応じてくれんのかな。そもそもらっだぁじゃ、話しさえしてくれないんじゃないか?」
「でも、次来る時はちゃんと用件を言ってノックして、俺が返事したら入れよって言われたよ?ってことは別に次も来ていいってことでしょ。」
その強固なメンタルは、親譲りなのだろうか。
(いや、多分らっだぁから遺伝子変異したんだな。)
そう自分を納得させ、魔女キノコの件は彼に頼んでみることにした。あまり期待はしていないが、このキノコが大量に手に入ればポーションの研究が捗るのは間違いない。もうヘマはすんなよ、ととりあえず念は押しといた。
「そういえば、とぅーんも最近来ないんだよな。」
「あれ、そうなんだ。この前会った時、近々絶対行くって言ってたからてっきり。」
「会ったんだ?」
「うん、なんか王都ですれ違った。」
「え”っ、王都行ったんだ。」
「まぁ、ギルドとか依頼掲示板とかあるから、しゃーなしやね。ぐちつぼはしばらく行ってないっしょ。」
「行ってないね、そもそも外出ないし。」
「おいおいおい、そんな引きこもってたら俺より身体怠けちゃうよーん。」
「いやいや、立派なおじさんが何言っちゃってんだか。(笑)」
「はーーー??」
寝る間も惜しんで待っていた甲斐があった。久しぶりに脊髄で会話出来て、脳みそを使いすぎた痛みはどこかへ飛んでいく。ぺんさんに会える日はいつだろうか、と思いを馳せながら、チルいひと時を噛み締めるのだった。俺にとっての一番の良薬は、きっとこいつらなのかもしれない。