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午前の授業が終わり、教室はざわつきながらも片付けの時間になっていた。
「先生たち、ちょっと見て!」生徒のひとりが友達に小声で囁く。
「ほら、コビー先生とミユ先生、またあんな距離で話してるよ」
窓越しに見えた二人は、資料整理のために近づきすぎていた。ミユの鋭い視線が周囲を警戒しているものの、コビーとの距離は明らかに普通以上に近い。
女子生徒のひとりが思わず手を口に当てる。
「絶対……何かあるって!」
その瞬間、二人の距離感が少し大げさに見え、教室内の数名が気づき始める。
ミユは瞬時に気づき、冷たい声を張る。
「おしゃべりはやめなさい! さっさと片付けなさい!」
コビーは微笑みながらも内心焦る。
「はい……皆さん、授業の準備に戻ってください」
しかし、教室の隅にいる生徒たちは、二人のわずかな手の動きや視線のやり取りを見逃さない。
「え、今の……手、触れてたよね……?」
ミユは一歩踏み込み、鋭く生徒を睨む。
「もう一度言うわ。授業の邪魔をしないで」
その言葉で、生徒たちは慌ててうつむく。コビーはそっとミユの肩に触れ、落ち着かせる。
「大丈夫です。これ以上は気にしなくても」
二人の連携で、生徒たちは完全にバレる手前で食い止められた。
放課後の静まり返った教室で、二人は小さく息をつく。
「危なかった……」コビーは小声でつぶやく。
「……次はもっと注意することね。甘く見ないで」ミユは相変わらず厳しい声で言うが、その目にはわずかに柔らかさが混ざっていた。
秘密の恋は、まだ生徒の目に完全には映っていない。
だが、毎日の些細な仕草が、生徒の観察眼に少しずつ映り始めていることを、二人はひそかに感じていた。