✦『傘の下にいるふたりを見つけてしまった俺たちは。』
(高校生ボーちゃん・ねねちゃん・まさおくん視点)
放課後。
校舎の裏へ向かう廊下で、ねねちゃんがピタッと足を止めた。
「……ちょっと。あれ見て。」
その視線の先には、
ひとつの傘の下に並んで歩くふたり——
しんのすけとかざまくん。
ねねちゃんの目がまるくなる。
「ちょ、ちょっと待って。何?距離近すぎじゃない?」
「しんちゃん……かざまくんの肩、守ってる……」
まさおくんが震える声でつぶやく。
そしてボーちゃんが、
ゆっくりとしたペースで言葉を落とす。
「……あれは……恋のかおり……。」
「恋のかおりって何!?え?そういうのいつ覚えたのボーちゃん!?」
まさおくんはオロオロしながら見つめ続ける。
ふたりは、
まるで“世界に二人だけ”みたいに寄り添っていた。
傘の中でしんのすけがなんか話して、
かざまくんは顔をそむけて——でも耳が赤い。
その一部始終に、ねねちゃんが半分叫ぶ。
「ちょっと待って!!あの距離何!!え、普通あの距離で歩く!?
カップル!?付き合ってるの!?ってくらい近いんだけど!!」
「ね、ねねちゃん声が大きい……!」
まさおくんが慌てて口を押さえる。
ボーちゃんは相変わらず真剣な顔のまま。
「……かざまくん……あれ、ドキドキしてる……。」
「ボ、ボーちゃん!?その観察力なに!?」
「……わかる……。心臓の音が……聞こえた……。」
「聞こえてないよ!?それは聞こえちゃダメなやつだよ!!」
ねねちゃんは頭を抱えながら、ふたりを追いかけるように歩き出す。
「いやでも、やばいってこれ……しんちゃん顔が近いもん……
かざまくん、絶対意識してる顔だよ……!」
雨音の向こう、
しんのすけがかざまくんにそっと傘を傾けて、
肩に雨がかからないようにしてあげていた。
まさおくんは目を潤ませて言った。
「……なんか……すごくいいなぁ……。
青春ってかんじで……泣きそう……。」
「泣くほど!?」
ねねちゃんがツッコみを入れる。
それでもまさおくんは続けた。
「だって……しんちゃんがあんな優しい顔するの……久しぶりに見た……。」
するとボーちゃんも静かに頷く。
「……しんちゃん……
かざまくん……
ずっと……特別だった……。」
その言葉に、
ねねちゃんとまさおくんは思わず黙り込んだ。
気づけば、もうふたりの姿は少し先。
傘の下で笑い合っている。
ねねちゃんは深く息をつき、
ぽつりと言った。
「……ねぇ。
なんか、応援したくなってきたんだけど。」
「わかる……。」
「わかる……。」
ボーちゃんとまさおくんが同時にうなずく。
雨の中、
3人は傘を差しながら
そっとふたりの背中を見守っていた。
まるで——
ずっと前からこの日を待っていたかのように。
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