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「本当(マジ)でムカつく!!」
ファミリー・レストランでパスタを食べながら、美奈はイライラしていた。
(弟の嫁のくせに! 生意気な!)
『人の命に係る、重大な病気(こと)よ!』
『怠けてサボりたいからって、テキトーなこと言わないで!』
沙耶の言葉は図星だ。
美奈の離婚鬱は仮病だった。
そもそも『離婚鬱』という言葉も、テレビで偶然知っただけだ。
夫の会社倒産はショックだが、美奈にはチャンスだった。
美奈には不倫相手がいたからだ。
着飾って出掛けていたのは、恋人と会うためだ。
不倫相手は、離婚係争中の飲食店経営者。
美奈より3歳年下だ。
彼の離婚が成立すれば、すぐ入籍しよう と約束している。
だから『離婚鬱』になるわけがない。
『金』のことも、沙耶の予想は当たっていた。
美奈は、スマホ代も沙耶と友也に払わせたかったが、
もし二人が[滞納]したら、契約を止められてしまう。
不倫相手への連絡など、スマホは必需品だ。
これだけは! と自分で料金を払っていた。
「沙耶さえ、いなければ……」
目を上げると、ドリンク・バーのコーナーに女が立っていた。
美奈は、コーヒーを淹れている女に見覚えがあった。
「もしかして、彩ちゃん?」
「え? お姉さん?」
友也の元カノの、松山 彩だ。
彩は30歳。保険会社で営業をしている。
女友達とファミレスに来ていたが、美奈のテーブルに移動した。
「え!? じゃあ、彩ちゃんが 友也を捨てたの?」
「捨てるというか、私が浮気したから……」
「その浮気相手とは?」
「すぐ別れました。本当に後悔してます」
「じゃあ、まだ友也が好き?」
「はい、もちろん。でも……」
美奈は彩に顔を寄せると、にっこり笑って囁いた。
「友也も、まだ彩ちゃんが好きよ。
彩ちゃんにフラれて、仕方なく結婚したんだもの」
(生意気な弟の嫁! 思い知らせてやる!)
友也と彩を復縁させて、沙耶を家から追い出す。
大喜びする彩を見ながら、美奈は計画を練り始めた。