「山でキャンプ?」
友也が会社の同僚からテントを借りてきた。
山のキャンプ場で一泊するという。
沙耶はアウトドアが苦手だ。
「私はイヤ。虫とかダメだし」
「俺も苦手だけど、姉ちゃんが翔太を連れて行きたいって」
友也は、美奈の言うままにキャンプの準備をしている。
リビングにキャンプ道具を並べる姿は、情けなく見えた。
「沙耶は食材の用意を頼む。
肉と飲物を買って、バーベキューの野菜を切ってくれ」
「そんなこと、行く人に頼めばいいでしょ!」
思わず声を荒らげると、後ろから美奈の笑い声が聞こえた。
「本当に沙耶さんって恐いヒトねぇ。すぐ怒るんだから」
「私はキャンプに行きません」
もし行ったら、用意も片付けもすべて沙耶がすることになる。
美奈と翔太は 食い散らかして遊ぶだけだ。
それが狙いだろう、と思ったら、美奈は意外なことをいった。
「いいわ。沙耶さんは家にいなさいよ。こっちで準備するから」
妙に物分かりがいい。不自然だ。
だが沙耶は、それに気付かずホッとした。
美奈と翔太が一泊でも家にいない。心が安らぐ。
(二泊でも三泊でもすればいいのに!)
友也の車を見送りながら、沙耶は大きく背伸びをした。
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