テラーノベル
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どうしてなのかセツナの表情が曇っている。
塩をもらって喜んでいるレトと正反対だ。
「僕はここで働いている皆に塩を見せてくるよ。
……シエルのことはまだ信用できないけど、今だけは許してもいいかな」
レトは塩が入った小袋を両手で大切に持って去っていた。
皆に見せたいというのは、交易所の建築に協力しているクレヴェンの人なんだろうか。
「まったく。レトは単純な奴だな……」
「レト王子は、あの存在を知っているのか?」
「分からねぇ。知らないのか、化けの皮を被っているか……」
「俺からすれば、セツナ王子も怪しいけどな」
「くっ……。オレはそんなんじゃねぇよ……。
できるわけが――」
「セツナ、シエルさん。何の話をしているの?」
疑問に思って聞いてみると、セツナはそっぽを向いて口を紡いだ。
どうしたんだろう。
トオルに和平を結んで欲しいと頼んだことは、勝手な行動だった。
それで、セツナの機嫌が悪くなってしまったんだろうか。
急に冷たくされてズキッと心が痛くなる。
「セツナ王子とふたりで話をしたい。
かけらは、レト王子のところに行ったらどうだ?」
「レトのところに……?
そうですね。色々話したいですし、行ってきます」
なぜセツナが私に冷たくなったのか気になるけど、シエルさんの言われたとおりにする。
とりあえず、交易所の建築予定地に行ってみよう。
きっと、レトもそこにいるはず。
湖を眺めながら歩いて行くと、たくさんの人の声が聞こえてきた。
私が手伝っていた頃よりもずっと賑やかになっている。
そして、交易の建築予定地に着いた時、あまりにも計画が進んでいて驚いた。
「建物がいくつも完成してる……」
「びっくりした? 僕らも頑張っていたんだよ」
レトが私のところにやって来て、発展した紅の地を眺める。
湖の近くには、木造の平屋と店が数軒も建っていた。
しかも、店には野菜や果物、服などの商品が並んでいる。
何より驚きなのは、誰も近づかないほど恐れられていた場所に人がたくさんいることだ。
「交易が始まったんだ。
この湖のグリーンホライズンとクレヴェン側では、両国の人たちが自由に入れるようになっている」
「それって……――」
「グリーンホライズンは、クレヴェンと協力する。
これが正式に決まったんだ」
旅を始める時にレトが言っていた、グリーンホライズンの平和。
何もなかったところから、大きく前に進んで夢のように思える。
平和に向かって動き出し、かたちになってきたのが嬉しくて涙が浮かんできた。
「やったね。私たち、ここまで来れたんだね……」
「泣くのは早いよ。
平和に向けて、やることがまだまだあるんだから。
そうだ。グリーンホライズン側の方も紹介するよ。
こっちも発展してきたんだよ」
レトに案内されて行くと、森を切り開いた場所についた。
ここは畑だ。緑色の野菜がたくさん植えてある。
「紅の地の近くに畑を作ったんだね」
「クレヴェンに近くても野菜が育つみたいなんだ。
なぜか、成長速度も早い。
あの湖に何か秘密があるのかな。
幽霊が夜中に特別な肥料を与えていたりして」
「ひっ!? そういうのやめてよ……」
「ははっ。かけらは本当に怖がりだね。
皆に協力してもらって農作業をしているんだ。
野菜が収穫できる状態になったから交易が始まったんだよ。
毎日野菜が収穫できるから大忙しさ」
畑に植えられているものは、小松菜と人参みたいな葉っぱをしている野菜。
近くでノウサ様が食べているけど、農作業をしている人たちは誰も気にしていないみたいだ。
「あれ……。かけらだ。
帰ってきたの?」
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