執事達に薔薇を贈り、感謝を伝えた夜のこと。
『んっ、う…』
見張り台に人が居た。
『ん〜っ!やはり日本酒は美味い〜!』
暗い暗い空に綺麗な星が輝く景色が美しい。
『こういう景色こそ酒が進むのじゃ〜!』
一人で晩酌を楽しむ。
酔いが少し回ると、脳内に執事達のことが思い浮かんだ。
『一人ぼっちの私を救ってくれた…大事な…人』
手すりにもたれ、今までの思い出を思い出してみる。
初めて出会った時。
あの時は、母様が居なくなったという事がとても悲しかった。
そんな中指輪をはめ、目が覚めた瞬間。 ベリアンと出会った。
今思えばあの時から彼に囚われていたのかもしれない。
色々な執事と出会って…時には子供だと思われて…。
舞踏会もあった。
貴族を蹴散らした時はとてもすっきりした事を覚えている。
まぁそんな思い出早く忘れたいのじゃが。
あと、ベリアンと一緒に踊ったあの思い出は忘れられない。
鼻腔をくすぐったベリアンの甘い香り。
踊っている最中でも、ずっと鼓動が鳴り止まなかった。
過去を吐き出しても、寄り添い癒してくれた執事達。
執事達に薔薇を贈った時も、沢山褒めてくれて…。
そう思い出していくと、気づいたことが一つあった。
『……ベリアンの思い出が多すぎやしないか?』
頭には、ベリアン。ベリアン。ベリアン。
他の執事の思い出もあるが…。
圧倒的にベリアンが多かった。
そんな時。
「あらあら…ここに居たんですね主様」
見張り台にちょうどベリアンが入ってきた。
視界にベリアンを捉えた瞬間鼓動が早くなるのを感じる。
今更だが、気づいてしまった。 この気持ちに。
私は…ベリアンに恋をしていた。
出会った時のあの違和感も、恋だと思えば納得がいく。
だが…。
この気持ち…どうやって伝えよう?
忘れられない…告白にするには。
そうやってぐるぐる悩んでいると
いつの間にかベリアンが隣に居た。
「ふふ、今日は綺麗な星空ですね」
『あ、あぁ…そうじゃな』
いつも通りのベリアン。
私に向かって優しく微笑む。
ベリアン…分かっておるのか…?
私…いま…すごく動揺しておるのじゃぞ…?
視覚に映る彼に…熱くなる鼓動に…脳に…。
初めて訪れる感覚に頭が追いつけない。
「あらあら主様…お顔が真っ赤ですよ」
ずいっと近寄るベリアン。
『っあ…みるなぁっ…!』
恥ずかしさで手すりにもたれていた腕に顔を埋める。
「ふふ…ついからかってしまいました」
『む…何故からかう…!』
「だって…主様が可愛すぎるんですから」
ベリアンの口からそんな言葉が聞こえて驚きと恥ずかしさでさらによく分からなくなる。
タイミングすら分からなくなってくる。
『お主は私をどうしたいのじゃ…』
そんな素朴な疑問にベリアンは微笑みながら
「主様の色んなお姿を…この目に 焼き付けたいのです」
そう言い私の手を握る。
何故か…そう言われた時。
ある作戦を思いついてしまった。
『ベリアンは私の色んな姿を見たいんじゃな?』
えぇ。と肯定する。
『なら…ベリアンも…もちろん他の執事も…見ていない姿でも見るか?』
そう言うと、嬉しそうに
「よろしければ…見てみたいです」
そう言われたのが分かった時。
私は覚悟を決めた。
ベリアンに抱きつき動揺したところを狙い
彼に口付けをした。
「えっ…雪…様?」
動揺なのか名前で呼ぶ。
『ははっ、名前で呼ばれるのも良いな』
ベリアンとの距離をさらに縮める。
今しかないな…。
と、思い私はまたベリアンに抱きついた。
『好きじゃ!だぁい好きじゃ!ベリアン!』
追い討ちをかけるように首元に接吻をする。
「んっ、主様…」
優しく撫でてくれるベリアン。
その手の温もりですら、私の心を乱す。
「私も…雪様のこと…大好きですよ」
お返し。とでも言うように
ベリアンの方から口付けを交わした。
ベリアンの口付けは、舌を這わせ互いの体液を交換するような…
そんな口付けだった。
『ぁ…ベリアン…』
大好きなベリアンに大好きと言われて。
おまけに…甘い甘い口付けもして…。
沢山尽くしてもらって…。
本当に幸せ者だ。
「可愛いです…雪様…」
そうやって褒めてもらうのも…。
大好きになってしまった。
『なぁ…今夜はベリアンと一緒に寝たい…いやか? 』
酔いはもう覚めているのに…甘えてしまう。
「ふふ…寂しいんですか?」
『……あぁ…さみしい…』
すりすりと頭を擦り付ける。
「いいですよ。一緒に…寝ましょうね」
眠い瞼を擦り、 寒いバルコニーを後にした。
数年後。
『ベリアン〜!行くぞ〜!』
「ま、待ってください!」
今日は、天使が滅びて初めてのベリアンとのデート。
「微笑ましいな…」
「分かるよべレン君」
「あ、ルカスさんも分かります?」
屋敷では、べレンとルカスが紅茶を飲みながら窓の外から二人の様子を見ていた。
「…幸せになるといいね」
「そうだねぇ」
街に着き、あるカフェの前で立っていた。
『ほれ、ベリアン!このマドレーヌ美味しそうじゃぞ〜!』
「確かにそうですね…ですが…雪様の手作りマドレーヌの方が美味しいです」
『て、照れてしまうの…』
そんな会話を交わしながら…カフェの店内へ入っていった。
平和な世界で…妖狐は幸せを手にした。
〜現代〜
ここは、ごく一般の住宅街。
「この実話じゃなさそうで実話がモチーフのマンガ…最高っすわ」
ある女子が本を読んでいた。
「__!ご飯よ〜!」
下から怒鳴るように呼ぶ母。
「はいはい今行きますよ〜!…後で続き読まないと」
栞を挟み…閉じた本のタイトルは…。
妖狐の娘悪魔執事に溺愛される
〜終〜
コメント
4件
まさかの物語ENDとな?!後味すっきり過ぎる....(?)
うぉぉぉぉ!めっちゃオシャレ!!終わり方好き!