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📕｜ᶻⓜ右詰

第29話 - shpzm

443

2025年09月12日

#nmmn

#wrwrd

🍬

※第1話の [必読] を必ずお読みください

※エセ関西弁

※誤字/脱字あり

長文のため、スクロールをする際はお気をつけ下さい。

お恥ずかしいお願いなのですが、最近モチベーションが低下気味の為いいね、コメントなど沢山下さると大変嬉しいです🙇🏻‍♀️‪‪

軍パ◻︎要素/両片思い/すれ違い/mb女→shp/メンタル弱めz などを含みます

・視点がコロコロ変わります

・オチが弱いです

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shpzm

──最初は、何とも無愛想な新人が入ってきたと思った。

隙あらば先輩をイジれば、時々棘のある発言を飛ばす。そして冷たい奴かと思えば、度々ぶっ込むギャグはセンスが高くて面白い。戦闘の実力についてはまだまだだが、スポンジのように吸収が早い。数年訓練や実戦を重ねていけば、別人に化けれる程の才能の塊だ。

そんな新人に皆注目を向けていたが、俺はショッピくんと未だに仲良くなれていない。コネシマはともかく、トントンや大先生達とは既に仲が深まっているようで、なんならショッピ自ら訓練に付き合って欲しいとお願いしている様子だ。

というより、俺を避けているような気がする。

どこでショッピくんの気に触れたかは不明だが、明らかにショッピくんから避けられている。他の幹部達とは仲良くいっているため、意図的だろうか。

まあ、ショッピくんの中で俺が苦手なタイプかもしれんし。入ったばっかの後輩の事やから下手に探らんとこ。

実際俺も人付き合いが得意ではない所があるため、それも原因かもしれない。それか人相が良くないのだろうか。

確かに自分の顔を鏡で見ると、何とも目つきの悪い顔であれば、最近長期任務続きでまともに睡眠を取っていないからか隈もできている。

──これは、近づいてこーへんな。

一人溜息をつきながら自分の姿が映る鏡を見つめていると、コンコンと自室の扉をノックする音が聞こえた。

「？誰やろ」

「すみません。ゾムさんの部屋で合ってますか…？」

*shp視点

「そろそろゾムと仲良くなりぃや」

「…その気持ちはあるんですけど。ちょっと怖くて」

初めて挨拶を交わした以降、まともにゾムさんと話していなければ、顔もあまり合わせていない。なんというか初めて姿を見た時雰囲気が怖すぎるあまり、全然顔を合わせられなかった。というより、着ているパーカーのフードを深く被っているせいで表情が読み取れない。他の先輩方は長年共にいるからかゾムさんが今どんな表情をしているのかが分かるようだが、新人の俺では何も分からない。

後程トントンさんから聞いたが、あの時は長期任務の影響で寝不足気味とイライラしていたということが判明した。ゾムさんと会うタイミングが悪かった、と思えばいいが、第一印象というのは大切であるため俺の中でゾムさんは”怖い人”というレッテルがあり避けていた。

「ゾム怖いかー？あいつは”雰囲気”が怖いだけ」

「確かに。ゾムさんにも失礼ですよね…」

このままゾムさんを避け続けるのも失礼になってしまう。それに今後のためにも、この軍の幹部達とは仲良くならないといけない。それは、味方最大の脅威と皆から畏怖されているゾムさんも含まれている。もし任務が一緒になった時、お互い困ってしまうだろう。

ここは思い切ってゾムさんの自室に直接出向いて、訓練についてお願いしてみよう。ゾムさんはこの軍の中でトントンさんと並んで実力のある持ち主と聞いているため、今後の勉強にもなる。トントンさんは常に他で忙しいそうにしているため、気軽に訓練に誘えないが同等の強さを持ったゾムさんに教わるとなれば、俺は更に成長できるだろう。

そんな方に今から訓練をお願いしようとなると、俺はより一層気が引き締まった。

「すみません。ゾムさんの部屋で合ってますか…？」

扉を軽くノックすると、数秒経たずして扉の向こう側からゾムさんの声がした。怪しい者ではなく俺の声だと気づいたゾムさんは、急いで扉に駆け寄っていた。ブーツの重たい足音が徐々に近づいてき、そのまま部屋の扉がゆっくり開かれると、扉の隙間から顔を覗かせるゾムさんは初対面の時とは全く違う姿。

というより自室にいるからか普段は深く被っているフードを外して、完全にオフの姿。透き通る程サラサラな茶髪が揺れており、身長差があるからか綺麗なペリドットの瞳がこちらを見上げている。

「しょ、ショッピくん。どしたん？」

「い、いえ。あのー…、今日お暇ですか」

まさかフードの下にはこんな可憐な顔があるとは思わず、不意打ちをくらった俺は自慢の冷静さを失いつつあった。明らかに挙動不審で怪しまれている気がするが、今日は思い切って誘うと決めたんだ。

「あー、暇ー…じゃないよ？」

「ゾムさんが良ければ、訓練付き合ってくれませんか」

そう伝えた瞬間、ゾムさんの表情が一変してぱぁっと明るくなりペリドットの瞳が生き生きとしだした。フードを外しているため表情が読み取れやすい。しかも想像以上に喜んでいるようで、こちらも誘って良かったと思える。先程まで困ったような顔を浮かべていたのにも関わらず、笑った顔は一際ゾムさんの魅力を引き立てるよう。

こんなに表情がコロコロ変わる人なのか。なんか可愛らしい人やな。

目の前にいるゾムさんは待っていたかのように胸に手を当てて、誇らしげにしていた。いつの間にか部屋着からいつものパーカーに着替えており、ゾムさんは訓練場に行く準備は万端だ。

「勿論。この先輩が教えてやるぜ？」

そんな些細なお誘いをしてから一、二年と経過していき、ゾムさんの指導のお陰で俺はみるみると成長していった。入団当初は先輩方の付き添いとして任務に向かっていたが、今では小規模な敵軍相手のみだが単独でも任務に行けるようになった。そんな成長具合に先輩方も歓喜するばかりで、ここまで努力して良かったと報われた気がした。

あの時、勇気を出して良かった。

それに、こんなにも熱心に付き合ってくれたゾムさんには感謝しかない。何度お礼を言えばいいか分からない程だ。一度諦めかけた事もあるが、それでも俺を見捨てなかった。寧ろ寄り添ってくれた。

俺が単独任務が決まった時も、ゾムさんは自分の事のように喜んでいた。まあ祝いとしてパーティというなの食害を受けたが、それでも嬉しかった。

そんな出来事も多々あってか、俺は密かにゾムさんに恋心を抱いている。俺に嬉しい知らせがあった時は自分の事のように喜び、任務で足を引っ張ってしまった時は優しくメンタルケアをしてくれた。他にも俺の前で美味しそうに口いっぱい頬張りながら食事をする姿や、誰もいないであろう深夜に一人で自主訓練に打ち込む努力家な所。全てがゾムさんの魅力とも言えた。

いつかゾムさんと肩を並べられるように、そして次は俺がゾムさんを守ってあげたい。まだ力不足かもしれないが、それまでゾムさんを死なせる訳にはいかない。

*zm視点

ショッピ達が入って数年経った頃、俺は期限のある書類を届けようと長い廊下を歩いていた。廊下を歩いていた時、窓の外からショッピの姿が見えた。自主訓練に夢中になっているようで、その動きは遠くから見ても数年前とは全く違った。

数年も訓練と実戦経験を重ねていった結果、すっかりショッピは単独任務に行ける程の実力を持ち、トントン達から絶賛されていた。これも指導した俺のお陰だ、と皆に豪語したいが、そもそもショッピ自身にある素質からだろう。俺が教える前から、ショッピはある程度技術を飲み込んでたしな。

そこから数年間ショッピの訓練に付き合っていく内に、俺はどんどんとショッピに惹かれていった。真剣に訓練に打ち込む姿、動きが良かったと褒めてあげると明るい表情になって喜ぶ姿。全てが目を惹かれた。

ここ数年の記憶を思い出しながらほくそ笑んでいると、背後から一人の一般兵に声を掛けられた。突然背後からの気配に気づかれなかった事に失念しつつも、その兵をよく見ると九十パーセントが男で占める我々軍の中でふんわりとしたボブヘアで、小動物のような小柄さを持つ女の人だ。背は厚底ブーツで高く見せても尚俺よりもしくはロボロより低く、簡単に言えば守ってあげたくなるようなタイプだ。まあ軍を守る側の俺達が、人に守られてどうすんだという話にはなるが。

そして彼女は何か隠し持っているようで、どこかモジモジとした雰囲気だ。もしかしてこの軍にいる誰かに告白でもしようとしてるのか？、と内心ニヤニヤしていると──

『あ、あの。ゾム様ってショッピ様と仲が良いですよね…？えっと、ショッピ様って何がお好きなんでしょうか？』

「え。しょ、ショッピくん？あー、俺もそんなに詳しくないなー…」

そう答えると彼女は俺に感謝の言葉を伝えながら一礼した後、踵を返して何処かへと走り去ってしまった。視力が良いせいか去っていく際、よく見ると手紙を持っている事が分かり、それはラブレターなんだと察する。

え。もしかしてショッピくんに渡すの…？

そう考えると胸がズキリと痛んだ気がするが、少しでも気を紛れさせるためにも俺は急いで書類を届けに行った。廊下を走ってはいけないが、少しでもさっきの出来事を忘れるためなら怒られたって構わなかった。

暫くして届け終わり、少し小腹がすいたなんて思いながら食堂に行くと端っこに人集りが出来ていた。よく見ると中心にはショッピの姿が見え、それを囲むようにコネシマ達がいる。もしかして、と思い急いで駆け寄ると案の定ショッピの手にはラブレターらしき物があった。

もう渡したのかと驚きながらも、ここは先輩らしく揶揄いつつもショッピの恋を応援してあげたいが、俺はショッピに恋をしてしまった身だ。出来れば進んで応援したくはないが、周りのノリに乗らないと怪しまれる。

「ショッピぃ良かったじゃねぇか？良い人見つかって」

「え。なにがです？」

「そのラブレターくれた人。なんかショッピのこと結構好きみたいやで？」

ショッピの持っているラブレターは既に開封済みのようで、封筒には可愛らしい猫のシールが一枚貼ってある。恐らく、唯一ショッピの事を知っている情報が猫好きだったからだろう。黒猫のシールが貼られて、ショッピも破れないよう丁寧に剥がしている。

そっか中もう見たんか…

中身を見たとなれば、ショッピに彼女の気持ちが伝わってしまったのだろう。あんな可愛い子、ショッピならすぐオッケーするやろな。健気そうやったし、ショッピのこと一番に思ってたもんな。ああ負けちゃったな

周りはオッケーしちゃえよ、と声を揃えており俺も最初は軽くノリを合わせた。だが徐々にこのノリに耐え切れなくなった俺は「部屋戻るわ」とだけ言い、その場から走り去った。これ以上ショッピの顔を見ると、俺が俺でいられなくから。

ショッピは最後に何か言いたげだったが、それを振り切ってまで走り去ってしまった。

「…」

一方何かを察したショッピは周りの期待の声を他所に渡されたラブレターを手で破き、そのままゴミ箱へ投げ入れた。

が、自室に戻ってしまったゾムは知りもしない事だろう。

‐

そこからは精神が上手く安定しない日々が続き、俺は体調を崩す事が多くなった。精神状態が良くないと、こうも体調を崩すのかと初めて体感した。だがいつまでも体調を崩す訳にはいかないため、出来るだけ精神を労わるように好きな食べ物を摂取したり、最近任務ばかりで疲れているため一人で何もしない時間を過ごしたりと色々試してみたが、それでも治らない。寧ろ悪化しているにも思えた。

ショッピ達は訓練に励んでおり、一方俺はショッピの訓練に付き合いもせずただ寝込むばかりの日々。だってしょうがないじゃないか。あれ以来ショッピと話すのが怖くて避けている自分がいるんだ。顔も合わせられないし、このままじゃゼロに逆戻りだ。

すると扉からコンコンとノック音がし、体を起こして「誰や」と力無く返すと扉の向こう側からショッピの声がした。どうやら体調を崩す俺を心配してか様子を見に来てくれたようだが、今はショッピの顔も見たくなかった。有難い事だがタイミングが悪い。ショッピは扉を開けて下さいと言うが、その気も起きない。

「ごめん。ここ最近体調良くないねん」

「で、でしたら」

「いや…ほっとしとして」

心配して来てくれた後輩を突き放してしまった。

俺だってショッピと面に向かって話したい。だがあのラブレターの事が頭から離れず、寝不足気味な所もあった。想像したくもない事を想像してしまって、一人自己嫌悪に陥る日々。夢にまで出てきた時は、本当に苦しかった。

ショッピくんは優しいな。いや当たり前か。後輩という立場として心配してくれただけやんな。

──ショッピ、ラブレターくれた子と付き合うんかな。

考えただけで胸が更にズキズキと痛み出す。あまりの痛さに顔を顰めてしまい、俺の表情は酷く歪んだ。

普通男は女と好きになるもんな。俺だけや、男のくせに男好きになってるの。俺も女やったら、ワンチャンショッピくんと付き合えたんかな。

「…ご飯だけでも受け取って下さい」

どうやら食事を疎かにしている俺を見兼ねてかショッピは、軽いご飯をのせたトレーを持って出向いたようだ。確かにここ最近偏った食事ばかりだった事をふと思い出し、一人溜息をつく。ちゃんと自己管理も出来へんくらい落ち込むとは、恋は病ってほんまやな。

ショッピはそれだけ言い、扉を傍にトレーだけ置いて立ち去ってしまった。こんな情けない姿を見られないよう、ショッピが立ち去って数分経ってからトレーを持ち込んだ。トレーには軽食とショッピからのメモ用紙が入っており、”何かあったら気軽に頼って下さいね”とだけ書かれていた。そのメモ用紙を見た俺は目から涙を流してしまい、徐々に文字が歪んで見えた。

「味した気ぃせぇへん…」

トレーにのったご飯に手をつけるも、どれも味がした気はせず箸が進まない。二口程で食べる気が失せてしまい、全然手のつけられていないトレーを元の位置に戻した。食べ残した事への申し訳なさがくるが、今日はどうにも箸が進まない。心の中で何度もごめんなさいと唱え続けていく内に、自分は生きていいのだろうかと自暴自棄な考えになってきた。どんな事もマイナスに考えてしまう自分が嫌で、また涙が出そうになる。

ふと今の俺はどんな顔なのかと、部屋に備え付けてある鏡で改めて自分の顔を見ると涙でボロボロな醜い顔。寝不足が続いてるせいか、以前より目の隈は酷くなっており、髪もキューティクルさを無くしボサボサ。味方さえ恐れると言われる脅威がこんな有様とは、何とも情けない。

「やっぱ顔可愛ないな…」

鏡の自分に向かって、そう呟くとまた涙が流れてきた。俺は嗚咽が漏れないよう押し殺しながら泣き、気づけば時計の針は十二時を指していた。

「はぁ、しんど…」

*shp視点

ゾムさんが体調を崩したと聞いて数週間経つも、未だに軍医に診てもらっていないと報告がきた。他の先輩方も心配しているようだが、最近長期任務ばかりだったゾムを休ませるにはいい機会だといい、強くは勧めなかった。

確かにここ最近は、俺の訓練の様子を見てもらっては指導する毎日だった。任務で疲れているだろうに、俺が止めてもゾムさんは付き合ってくれた。多分ゾムさんは、俺が成長していく姿を傍で見守りたかったのだろう。あの時は有難かったが、今思えば無理させていたかもしれない。つい先輩の言葉に甘えてしまった。

やっぱゾムさん体調良くないんかな。診てもらったほうが…

流石に一度診てもらった方がいいだろうと思った俺は、またゾムさんの部屋へと向かった。以前軽食を持って訪れた際は顔すら見せてくれなかったが、今日も帰されてしまうのだろうか。

「ゾムさん。ショッピです」

数秒待つも、返事がない。

睡眠中なのかと思い、もう一度声を張って呼んでみたがまた返事がない。もしかしたら体調が悪化して、倒れてるのかもしれない。最悪な状況が頭をよぎり、急いでゾムさんの部屋を開けた。

「んっ、うぇ…？あ、しょっぴぃ…」

扉を開けると、そこには床に寝転がっているゾムさんがいた。だが様子が変だ。ゾムさんの顔は妙に紅潮しており、どこか呂律も回っていない。それにゾムさんは潔癖症だ。自分の部屋であっても、床に寝転がるなんて無理のはず。

もしかして酔っ払ってはる？

机には缶チューハイが何本も置かれており、全て蓋が空いている状態だ。体調が悪いというのに飲酒するとは、本当に馬鹿な先輩だ。何本もあるという事はやけ酒だろうか。

ゾムさんが酒豪なイメージはない。確かに酒には強いが、ここまで酔っ払っているゾムさんは初めて見た。それ程アルコールを摂取したのだろう。

「ゾムさん。水持ってきましょうか？」

「んーん。しょっぴぃ、もうちょっとここおってやー」

流石にこれ以上の飲酒は明日に響いて危険だと感じ、水を取りに行こうとすると、ゾムさんは人肌が恋しいのか俺の腕にガッシリと抱き着いてきた。酩酊状態でも尚、抱き着く力は強くて無理やり引き剥がせない。

しかもゾムさんの口からは酒の匂いが凄いため離れてほしいと思う半面、想い人相手だからかもう少し甘えてきてほしいと思う自分もいた。こんなに甘えてくるゾムさんは初めてお目にかかれたため、酔って記憶が無い内に色々してもらいたい所だ。もし運が良かったら、事故ってキスとか…

だがゾムさんは余程酔っているのだろう。終始俺に話し掛けているようだが、よく聞き取れない。ただ酔っ払ってテンションが変に高い事は分かるため、珍しいゾムさんを堪能できて楽しい。

するとゾムさんに両頬を手で包まれ、困惑している俺を他所にゾムさんは両頬を揉んで遊びながらこんな事を口走った。

「しょっぴくんはかっこいいな〜。しかも入ったばっかやのにどんどん成績伸ばしてえらいな〜」

「え”。い、いえ。ありがとうございます…」

酔っ払っている状態だからか、いつもより喋り方がふわふわで声も甘い。そんな甘い声で褒められては、俺の情緒は滅茶苦茶になってしまう。もしかして誘ってるんですか？、と聞きたくなるが流石にグッと堪えた。

ゾムさんがそんな事を思っていたのかと、本音を聞けて嬉しい。酔っ払いの言う事は大体信じていないが、これだけは本当だと信じたい。

ゾムさんと同様、俺も顔が紅潮してしまう。そんな俺の顔を見てゾムさんは「かわいっ〜」なんて笑いながら揶揄う。可愛いのは貴方ですよ

「…俺が女やったら好きになってたなー」

ゾムさんは俺に聞こえない声量で呟いたつもりだろうが、俺の耳には確かに届いた。

「それはほんまですか」

その言葉の真相が気になりすぎるあまり、つい先輩相手に問い詰めてしまった。

「んー？ほんとって言ったらどうする？」

「それは勿論…」

揶揄ってくるゾムさんに動揺してしまったが、酩酊状態のゾムさんを見ていく内に、何か異変に気づいてきた。

そう、ゾムさんは酔いが醒めてきているのではないだろうか。顔は確かに紅潮したままだが、恐らく朦朧としていた意識は戻りつつある。テンションも素に戻りつつあり、無理やり取り繕っているようにも見える。

もうゾムさんとは長年の付き合いになるため、酔ったフリくらいは分かる。それでも呂律はちゃんと回るはずなのに、わざと舌っ足らずな喋っ方にしている事は謎だが。

「そういえばゾムさん。酔い醒めてきてますよね？」

「え」

ゾムさん自身も酔いが醒めている事に気づいていたのか、一瞬素の声に戻った。流石に酒の強いゾムさんだ。こんなにアルコールを摂取しても、すぐに酔いが醒める。

それより記憶があるのなら、さっきの返事は何だったのだろう。まさか酔いが醒めている事に気づかれるとは思わなかったのか、ゾムさんは上手く言葉が出ず吃ってしまった。俺はそんな分かりやすく動揺を見せるゾムさんにニヤけが止まらず、声に出して笑わないよう必死に堪えていた。

あー笑俺の先輩かわいすぎ笑

今までゾムさんに揶揄われてばかりの身だ。ここは形勢逆転としよう。

「そんなことより。さっきの返事はどうなんですか」

「うる、うるさいなっ！忘れろやっ！//」

耳まで紅潮させたゾムさんを揶揄うように返事を催促すると、正気戻ってきたゾムさんはすぐに俺を自室から追い出そうとするが、あんなに訓練で鍛えたのにも関わらず俺は一瞬で外へ放り出されてしまった。流石にトントンさん並みの実力のあるゾムさんに力比べで勝てる訳ないかと思いつつも、俺の心は諦めて無かった。

そこから体調が完全に回復したゾムさんは、任務や訓練にも顔を出すようになり、そんなゾムさんと会う度に俺は執拗に追い掛け回していた。それが数日続いて、他の先輩方も「またやってるよ笑」とこの光景に馴染みつつある頃、ついに痺れを切らしたゾムさんは返事を言ってくれた。

「あー、もう分かったよ。言えばいいんやろ」

「ほんとですかっ！」

ついに返事を言ってくれる！

そう確信した俺はキラキラした目でゾムさんを見つめると、そんな俺に呆れた顔を向けるゾムさんに「うざい」と一蹴されるが、俺はあの時の返事を今か今かと待った。

「俺もショッピのこと好きやったよ。やから体調崩してん」

「…それって、あのラブレターのせいです？」

図星だったのか、ゾムさんは体をピクっと跳ねた。

やはりあの時から様子はおかしいと思っていたが、そこまで思い詰めてしまったのか。ちゃんと俺の口から伝えておけば、こうはならなかっただろう。本当に申し訳ない。

未だにラブレターの事が気がかりなのか、ゾムさんの顔は徐々に暗くなっていく。すぐさま誤解を解こうと、ついに数年間俺が抱いていた気持ちをゾムさんに伝える事にした。

「心配しなくても大丈夫っすよ。あの時からずっとゾムさん一筋だったんで」

「？あの時っていつや？」

訓練に付き合ってくれた時からです、そう答えるとゾムさんは驚いた表情を見せたと同時に、「そんな前から？！」と大声を上げた。

そうですよ。そんな前から好きだったんです。他人の喜びを自分の事のように喜べて、本当は優しくて、誰よりも繊細なの知ってますよ。そんな所に惚れたんです。

貴方に惹かれすぎたあまり、どれだけ人生が狂ったと思ったんですか。他の先輩方と楽しそうに会話している様子だけで嫉妬してたんですよ？一般兵とも仲睦まじく会話していた時は、殺意を覚える程でした。

「ゾムさんのこと。世界一愛してます」

「っあ、ありがと// 俺も…」

震える体を安心させるように抱き締めながら、愛の言葉を伝えると嬉しさのあまり涙が出そうなのかゾムさんの声が震えている。当たり前だが、ゾムさんも同じ気持ちだったのだろう。やっと気持ちを伝えれた事に、肩の荷がスっと下りた気がする。ここ数年で恋心を拗らせすぎたあまり、それを誤魔化すために訓練に打ち込んでいたなんて誰にも言えない。周りからは熱心な奴だと思われたが、実の所ヤケクソに近い。

そんな事を思いつつ優しく背中を摩っていると、ゾムさんの口から続きの言葉が無いのかと待っていた。

”言ってくれないんですか”

ハスキーな声で優しく囁くと、流石に押し負けたのか恥ずかしがりつつも言ってくれるようだ。

「俺も、…す、すき、です…//」

「ありがとうございます。」

あまりにも恥ずかしかったのか、所々声が小さくて聞き取れなかったがさっきのセリフを録音したい程、心の底から嬉しい。ゾムさんがもう一度言ってくれるはずが無いため、こっそり録音しておけば良かったとひとりでに後悔した。

まあゾムさんの口から”好き”と聞けるだけ十分嬉しい。嬉しさのあまり更に腕に力を込めると、ゾムさんは苦しそうな声を出すが俺は止めなかった。

「苦しいって、ショッピ」

「もうちょっとだけこうさせて下さい」

苦しいと言いつつも、ゾムさんは離れようと抵抗もしなかった。口ではキツく言いつつも、本当は寂しがり屋の構ってちゃんなの分かってますからね。

──ゾムさんのこと、一生離しませんからね。

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