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それから数日間、私はフェルと一緒に過ごした。素直で礼儀正しいフェルを両親も可愛がってくれてるし、フェルも満更ではなさそう。まだまだ心の傷は癒えないだろうけど、少しでも気分が前向きになってくれたら嬉しい。
今日はアードで暮らしてるリーフ人の代表が会いに来るらしくて朝から二人で準備してたんだけど。
『ティナ、ザッカル局長からただちに出頭するようにとの通達が来ています』
「えー?今すぐに?リーフ人の代表が来るんだけど?」
こんな大事な時に出頭なんて気が進まない。
『ティナ、私達が提出した報告書についての話し合いを行いたいとのことです。断る様な選択は避けた方が良いかと』
「うっ」
確かに、地球との交流の是非を決める大事な話し合いだ。欠席するわけにはいかないし、アリアも連れていく必要がある。でもフェルが……。
「ティナ、私は大丈夫ですからお仕事に行ってください」
「フェル」
「ティナにとって地球との交流は大切なのでしょう?それに、私もティナと一緒に旅をしたいんです。ここで印象を悪くしたら、大変なことになりますよ?」
ド正論なのである。はぁ、仕方無いか。
「分かった。でも変なことされたら言うんだよ?相手がリーフ人だろうと容赦しないよ!」
フェルは大切な友達だ。大丈夫だとは思うけど、もしもの時は相手をとっちめてやる!
「ふふっ、ありがとう。ティナも気を付けて」
私はフェルの事を気にしながら宇宙開発局がある浮島へ飛んでいく。
転移魔法が得意な人は楽々移動できるんだけど、生憎私にはチートスキルなんて無い。
タクシーみたいなものもあるけど、やっぱり前世では味わえない空を飛ぶ事好きだから私はあんまり利用しない。
小さな浮島にポツンと佇む木造平屋建ての建物、これが宇宙開発局。低予算の弊害で、お寒い懐事情の組織です。まあ私は可愛らしくて好きだけどね。
良く陽が当たる場所に局長の執務室がある。机とソファーがあるだけの空間だよ。ほとんどがデータ化されてるから、本棚とかは無いし。
そこで私はザッカル局長と面会した。
「済まんな。保護したリーフ人との用事があったのだろう」
「別に良いですよ、私も無理言ってるんですから」
嫌味の一つでも言いたいけど、局長には我が儘を許して貰ってるしね。
「先ずは調査任務ご苦労だった。幾つかのゲートの状態を把握できただけでも収穫がある。一つは消滅したと判断して構わないな?」
「ゲートがあった宙域に広がりつつある星雲を確認しました。赤色超巨星だったみたいですし、超新星爆発に巻き込まれたんだと思います」
あれは綺麗だったな。星の最後の輝き、超新星爆発。そしてその残骸である星雲。ロマンだ。
「うむ。君には引き続き他のゲートの調査を任せたい。今後は遺棄されたステーションについても調べてくれ」
「分かりました。プランを立てますね」
地球との交流に集中したいけど、お仕事も疎かには出来ないよね。
「それで、だ。君も気になっているだろう。地球と呼ばれる惑星に存在する文明についてなのだが」
「どうですか?」
「残念だが、政府は特使の派遣を時期尚早として見送った」
「そう、ですか」
予想はしていたけど、やっぱり政府の反応は良くない。センチネルの脅威を考えたら、好き好んで宇宙へ飛び出す私が異端なんだろうな。
「中には、君を異端として宇宙へ行かせるべきではないと言う意見もあった。センチネルを刺激するだけだとな」
「そんな!?」
それじゃ何も変わらない!
いや、それもあるけど異端認定なんてされたら私だけじゃなくて両親も巻き込んでしまう!
私は今更ながら自分のやったことの重大性を理解させられた。冷や汗が止まらない。
「だがそれらの意見は直ぐに消えて、先ずは君個人レベルならば交流することも許可された」
「えっ?」
何が起きたの?
「畏れ多いことではあるが、女王陛下直々のお言葉を賜ったのだ。好きにさせなさいと」
「女王陛下が!?」
雲の上処か宇宙の果てみたいに遠いお方だよ!?
「女王陛下のご下命があった以上、そのお言葉を実現せねばならん。ティナ、ゲートやステーションの調査を行いつつ地球と交流。情報収集に当たって欲しい」
まさかの女王陛下のお墨付き!?女王陛下は“未来を見通す力”を持っているなんて言われてるけど、何かあったのかな?
何か責任重大になったぞ?
「わっ、分かりました」
「調査次第では、政府も重い腰を上げるだろう。ただ、焦るな。期限の指定はない。異星人との交流は腰を据えてじっくりと行うのだ。リーフ人との交流も50年近くの時を要したのだからな」
「はい、局長。ありがとうございます」
良かった。個人的にはのんびり宇宙を旅しながら地球と交流したかったから、期限が無いのは素直にありがたい。
「うむ、何か要望はあるかね?」
「“トランク”を幾つかと“医療シート”を出来るだけたくさん仕入れたいです。“トランク”は最低規格で構いませんから」
「うちの台所事情を忘れたか?どちらも叶えるのは無理だ」
「じゃあ“トランク”だけお願いします。そして、母船が欲しいです。フェルも一緒ですし、地球と交流するにしてもスターファイターじゃ限界があります」
仕方ない、“医療シート”は自腹を切ろう。
地球と交易を始めてお金を稼がないと。
「スターシップが欲しいのか。ううむ、ティアンナ女史からも要請されていてな……困ったな」
流石お母さん、頼りになる!
「AIのサポートがあるとは言え、乗組員は二人だけだ。大型艦ではなく小型艦になるが構わないか?」
「はい!」
でっかい船でドーンっと地球の皆をビックリさせたい気持ちはあるけど、何かミサイル撃ち込まれそうで怖いから最初は小さな船で。まあ、まだ二人だけだし大型艦は絶対にもて余す。
「分かった。うちで管理している小型艦を1隻用意しよう。追加の人員も割いてやりたいが、うちにそんな余裕はない」
「分かっていますよ」
宇宙開発局に居たって宇宙に行きたいなんて思ってる人なんて居ないんだよね。
眺めてるだけで充分と言うか。
まあ良いや、とにかく交流の許可も出たし船も使えるようになった。
支援がないのは寂しいけど、地球との交流を続けていけば良い方向に動くはず。先ずはフェル、アリアと一緒に頑張ろう!