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――『悪役令嬢』

彼女が口にした耳慣れない言葉に私は戸惑いました。


悪役とは物語や劇などで登場する敵役のことでしょうか?

令嬢とは私達のような貴族の娘を指すのだと思われます。


つまり、悪役令嬢とは物語などに登場する主人公の敵役となる令嬢のことなのでしょう。


しかし、どうしてエリーは私をその悪役令嬢と呼ぶのでしょうか?

彼女が知る物語に、私の名前もしくは容姿に似た悪役令嬢なるものが登場したのでしょうか?


いきなり不可解な言葉を口にしたエリーでしたが、その後は考え込んで何やら押し黙ってしまいました。

しかたなく私とエンゾ様とでエリーの教育方針を話し合いましたが、既にご高齢のエンゾ様に負担をかけるわけにもいきません。また、私と同世代である事を鑑みて、自然とエリーの聖女教育は私が引き受ける方向で話が決まりました。


事前に得た情報では彼女は人を思いやる娘のようですし、彼女から感じる聖なる力はとても大きく、潜在的な力だけなら彼女は私よりも高いように思われました。

だから彼女が聖女となっていただけるなら、それはとても心強いのです。


ですが、彼女の口にした言葉『悪役令嬢』がどうにも私の胸に棘のように刺さったまま残りました。こうして胸にもやもやとした不安を抱えたまま新しい聖女エリーとの邂逅を終えたのでした。


彼女の聖女教育が始まると、私の漠然とした不安は形となって現れたのです。


「この黙祷は神との繋がりを強めて……」

「あっ、そういうのはいいです」

「え!?」


私が聖女としての修練の一つをエリーと行おうとしたのですが、彼女のにべもなく拒絶する態度に私は絶句しました。


「私は『ヒロイン』だから、そんな事しなくても強くなれるんです!」

「ひ、ひろいん?」


この娘がいったい何を言っているのか意味が分からず、私は困惑してしまいました。


「確かに貴女の潜在能力は私よりも高そうですが、聖女としての修練を行い、功徳を積み上げねば、神より恩寵を賜る事ができなくなりますよ」

「だ~か~ら~私は『乙女ゲーム』のヒロインだから何もしなくても神様に愛されてるの!」


――『乙女ゲーム』?

彼女はまた訳の分からない単語を口にしました。


「あっ、そうか分かったわ。私を虐めようとしているのね」

「い、虐め!?」

「あなたは『悪役令嬢』だもんね」


こんな感じで彼女との会話は意味不明な単語が多く、全く要領を得ないものばかりでした。


何かと彼女に聖女としての心構えを説いてもみましたが、その度に『乙女ゲーム』、『ヒロイン』、そして『悪役令嬢』という言葉を口にして私が彼女を虐めていると意味の分からない不満をわめき散らすのです。


しかも聖女の修練だけに止まらず、彼女の問題は更に『聖務』にまでも及びました。


「これから聖務の1つである魔獣の討伐に向かいます。貴女はまだ経験がないでしょうから、私の務めを見学して……」

「あっ、その討伐は『イベント』にないのでパスします」


――『イベント』?


まただ。彼女はいったい何を言いたいのか?


「パスって……何を言っているの?」

「だって、それに行っても『攻略対象』との好感度が上がらないしぃ」


エリーの拒絶に私が呆気に取られている間に、彼女はさっさと私の前から姿を消した。


――『攻略対象』?

彼女の話す内容を幾ら考えても理解ができません。


それからもエリーは聖女としての修練に参加せず、『聖務』も自分がやりたいと思ったものだけを行い、私やエンゾ様の呼び掛けに応じず、気が付けばいつもフラフラと何処かへ消えてしまっているのです。


「彼女はまた聖務を放棄してしまったのね」

「私の力及ばず申し訳ありません」

「ミレーヌの責任ではないわ……本当に困った娘ね」


彼女の意味不明な行動にはエンゾ様も困惑の表情を隠せませんでした。


「教会の修道士達からも苦情が上がっているの。彼女の行動にはみな困惑しているのよ」

「私も彼女が口にする言葉は意味が分からずどうしたらよいのか……」

「それに庶民の間での彼女の人気が異常に高くて、教会の方でも扱いに苦慮しているみたいなの」


深い溜息を吐くとエンゾ様は視線を窓の方へと向けました。それに釣られて窓を見やれば、昼間なのに少し薄暗くなっていました。


「ここ最近は珍しく嫌な天気が続くわね」

「ええ……雨が降らないとよいのですが」


窓から見える王都の空は昏く鬱蒼とした雲が立ち篭めており、いつもの晴れやかで暖かな春の陽射しが隠れてしまっていたのでした……

転生ヒロインに国を荒らされました。それでも悪役令嬢(わたし)は生きてます。

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