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私の一生を左右する事件が起きたのは、それから間もなくの事でした――


心地のよい風に可憐な花びらが舞う、日差し暖かな明るい未来を期待させる季節――そんな穏やかな春の日。

私は王都の結界にある綻びを修復しておりました。すると突然、アルス殿下より呼び出しを受けたのでした。


ここ最近は聖女の聖務と王太子妃教育があまりに忙しく、アルス殿下とは久しくお会いしておりません。ですので、この急な呼び出しに私は何事かと首をひねりました。


とにかく王太子よりの呼び出しです。

私は急ぎ王城へと向かったのですが――


「ミレーヌ・クライステル!」


到着した私にアルス殿下は激しい怒気を孕んだ目で睨みつけてきたのです。普段は感情をあまり露にされない殿下の剥き出しの怒りに、何をそんなにお怒りになられているのかと私は戸惑いました。


「伯爵家の権威と聖女という立場を利用しての数々の横暴を見過ごすわけにはいかない。この場でミレーヌとの婚約を破棄させてもらう!」


アルス殿下の仰る言葉は耳に入ってはきましたが、その内容を理解しかねて私は言葉を失いました。


「貴様は己の権力を笠に着て、優しく大人しいエリーを虐待したそうだな。彼女が逆らえないのをいい事に、暴言を吐き続けたとの証言もある。エリーがどれほど傷ついたと思っている!」


茫然としている私をよそに、アルス殿下の責めが続いていきました。しかし、その内容は全て身に覚えのない根も葉もない誹謗中傷です。


「いつもミレーヌ様との修練でグズ、庶子のくせになどと罵倒され辛く当たられて……いつも恐ろしい形相で私を睨むのです。私とても恐くて……」


全く心当たりのない内容を訴えるのはアルス殿下の背後に隠れ、その背中に縋るようにしている1人の愛らしい令嬢――男爵令嬢のエリー・マルシアでした。


「姉上がそんな残酷な人だとは思いませんでした!」


すれ違いが多く、ここのところ疎遠となっていた弟のフェリックがエリーの傍に寄って怒りを露わにしました。幼少期より可愛がり、あれだけ懐いてくれていたのに。弟の変容ぶりに私は愕然としました。


「それに、ご自分の聖務を私に押し付けて……」


エリーは何を言っているのでしょう?


むしろ彼女の方こそ私を悪役令嬢と意味の分からない言葉で責め立て、聖女としての務めを放棄していたのはエリーの方です。いつも私とエンゾ様をあれほど困らせていたというのに……


「聖女としての職務を放棄していたなんて!」

「そのような悪辣な性格で何が聖女だ」

「清純そうに見せて我々を欺いていた悪女め!」


ですがエリーの周囲を固めていた見覚えのある男性達が、彼女の言葉を妄信し口々に私を責め立て始めたのです。


「お待ち下さい。私には全く身に覚えのない事ばかり……」


聖女としての修練を促し心構えを説けば、虐めだなんだと私を批難し、自分は『乙女ゲームのヒロイン』だと彼女は意味の分からないことを喚き散らしてきたというのに。


私はエリーのこれまでの行状を必死に訴え弁明ました。

しかし、私の言葉はアルス殿下には届きませんでした。


しかもそれだけではありません。現在の聖女の実情を知っているはずの人達までもが、こぞって事実を捻じ曲げ私を非難してきたのです。

親しくしてきた貴族の子女、共に魔獣を討伐してきた騎士達、そして実の弟フェリックまでも……


「しかもエリーの聖女としての資質が自分より高いのを逆恨みし、自分の仕事を押し付けて魔獣討伐の機会に彼女を亡き者にしようとした事はもはや明白!」

「そのような事実はございません!」


エリーは自分のしたい聖務だけを行っていました。私がそのような陰謀を画策するなど不可能です。誰もが私を敵視する四面楚歌のこの場で、それについて私は詳しく説明しました。


しかし、この場に誰一人として私の味方になる人はいませんでした。


「反省の色でも見られれば温情も与えるつもりであったが、言い訳ばかりで己を省みない貴様に情けを掛ける必要はない。取り押さえろ!」


私は抵抗をしているわけではありません。それなのに、衛兵達から無理矢理に取り押さえられてしまいました。これが今まで聖女として聖務をまっとうしてきた者への仕打ちなのでしょうか。


私は自分の言葉が届かない理不尽に対し、絶望で打ちひしがれました。


「ミレーヌ・クライステルの貴族籍を剥奪する!」


無情なアルス殿下の宣言に顔を上げれば、エリーはアルス殿下や私の弟や友人、騎士など見目麗しい男性を侍らせて嘲笑っているではないですか。


どうして誰もこの状況をおかしいとは思わないのでしょうか?


「地下牢へぶち込んでおけ!」


こうしてまともな詮議も無いまま、私は覚えのない罪で貴族籍と聖女の名誉と権限を剥奪され投獄されたのでした……

転生ヒロインに国を荒らされました。それでも悪役令嬢(わたし)は生きてます。

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