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アディール国の王城へと帰ると、ゼンティとリィラは自室へ。アレンはそのままレンティの部屋へと向かう。
数回のノックの後にアレンがレンティの部屋に入ると、レンティはテーブルに座って読書をしていた。
アレンはレンティの横に跪いて穏やかな口調で問いかける。だがその魔物の瞳に宿る感情は優しさなどではない。
「センティ様に兵を差し向けましたね?」
「……なんの事ですの?」
レンティは微笑みながらアレンのブラウンの瞳に目を合わせた。
誰よりも愛し信用するアレンが相手であっても、レンティはなかなか口を割らない。だがアレンも、そんな彼女の扱い方を知っている。
「オレにも本当の事を話せないのですか?」
「そうね……では、愛してくれたら話してさしあげますわ」
「承知しました」
アレンは立ち上がると、軽々とレンティの体を抱き上げた。そのまま奥の寝室のベッドまで運ぶと、そっと白いシーツの上に降ろす。
無言で黒いシャツを脱ぎ捨てるとアレンもベッドに上がる。筋肉質の逞しい体がレンティの身体の上に覆い被さると、物欲しそうにアレンの瞳を見つめ返してくる。
「ねぇ、アレン……もうすぐ誕生日だから、お祝いしてくださる?」
「当然です。何をお望みですか」
「アレン、あなたですわ。結婚してアディールの王と王妃になりましょう」
アレンはレンティに口付けて、彼女の銀色の髪と肢体を優しい手つきで愛でながらも眉をひそめた。
この国では18歳で成人となり結婚が許される。王位を継げる年齢も18歳から。17歳のレンティは、成人する18歳の誕生日にアレンと結婚するつもりでいる。
そしてアレンを王に、自分を王妃とは言うが、実質は王族の血筋であるレンティが女王となり実権を握る。
そうなると、やはり王位継承権第一位であるセンティは邪魔な存在。レンティの誕生日までに抹殺したいのだろう。
「……仰せのままに」
感情のない一言だけを返して、アレンはレンティの身体ではなく歪んだ愛だけを受け止める。
愛する人が魔物に入れ替わった事すら知らないままで、レンティは偽りの婚約者に身も心も捧げる。
それでもアレンはレンティの身体に触れるだけで抱く気はない。その不完全で満たされない愛がレンティを狂わせていく。
その頃のセンティの自室では、リィラが一人でベッドの上で仰向けになって倒れて呆然と天井を見つめていた。
遠くからシャワーの音が聞こえてくる。ゼンティは帰るなり浴室に直行した。戦闘での汗と返り血を洗い流しているのだろう。
(あの時のセンティは、命を狙われていた事に気付いてなかったの?)
リィラはセンティと出会った日の事を思い出す。
センティは王子でありながら、一人で危険な森の中にある毒の里・ポワゾンの付近まで来ていた。その目的とは何だったのだろうか。
レンティの殺意に気付いていたとしたら、そんな妹を助けてほしいとリィラに願うほどにお人好しな王子なのだろうか。
センティの遺志の通りにレンティを守るならば、それはゼンティを殺す行為と同じ。そんな矛盾と葛藤する。
(私は誰を守ればいいの……?)
リィラの視界には、いつの間にかゼンティの赤い魔物の瞳が映っていた。仰向けに寝ているリィラの顔をゼンティが覗き込んでいる。
湯上がりで濡れた銀色の前髪が艶やかで色っぽい。こんな時でも、ゼンティの美しさには見とれてしまう。
「ゼンティ、瞳の色が赤い」
「あぁ、戦って力を使ったからね。毒を補給させてよ」
リィラに口付けようとしたゼンティが何かに気付いて動きを止めた。まさか思考を読まれたのかとリィラの心拍数が上がる。
「そんなに心配しなくて大丈夫だよ。リィラちゃんは僕が守る」
リィラの心を読んだ、その力強い言葉と視線にリィラの鼓動が別の感情で高鳴る。
自分は誰かを守るのではなく、ゼンティに守られる立場で良いのだと。そう言われた気がした。
なぜか、その言葉がすごく安心を与えてくれて嬉しい。もしかしたら、これこそが『愛しい』という感情なのかもしれない。
「そうそう、僕たちの結婚の日は決まってるからね。幸せにしてあげるよ」
「何それ、二度目のプロポーズ?」
「ふふ、そう。結婚式と戴冠式を同時に挙げる計画だよ」
ベスティア王国では結婚式を挙げていなかったので一石二鳥だね、と言ってゼンティは楽しそうに笑う。
やはりゼンティはアディール国の王位と、リィラという妃を同時に手に入れて、権力を確かなものにするつもりでいる。
そして、それはレンティも同じだった。18歳の誕生日に自らの戴冠式と、アレンとの結婚式を計画している。
復讐と野望と計画、そして愛。アディール王国で重なる2つの運命が同時に動き出す。