テラーノベル
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耳に障る蝉の存在証明。
それと同等。否、其れ以上に俺は
彼の事が嫌いだった。
夏。皮肉にも彼は、俺達は消息を絶った。
鳴蟬を俺の耳に遺して。
夏風が鼻を燻った。余りにも熱を纏っていて心地が良いとは口に出来ない。
其れに、蝉が俺の耳で何度もリフレインするから悪辣だ。
ペンで己の思考回路を紙に書く時間は、俺にとって有意義なモノだった。教師が黒板にチョークを走らせる時間も、俺は好んでいた。
ジリジリと、表すのが最適だろうか。真夏の太陽の様なチャイムが学校中に終わりを告げた。
二年一組。彼の教室に足を運び、彼に放つ第一声。
.. 彼に蟲が付く前に。
「 榊原ーー、帰ろうぜ。 」
彼は俺の応答を聞く前に、俺の腕を引っ張り学校を右脚から出た。
彼は榊原と云う。対して俺は松田。似ても似つかない苗字。それだけで俺は劣等感を感じて仕舞う。
慣れた手付きで改札を抜ける。俺が残高不足で引っ掛かって仕舞ったのを、嘲笑うかの様な笑い声が、憎らしい蝉と同等の声の様に聞こえたのと同時に、愛おしいと云う感情まで引き起こした。
「 なぁ 、榊原 。 」
『 .. なぁに?どうしたの 』
電車に揺られながら問いかけた。大した質問では無い。他愛なき戯言を。
「 .. 海 、行かない? 」
彼は承諾を後にし、海に一番近い駅で彼は足を電車から駅に移した。
「 ちょ、速えーよ、っ 」
潮風が肌に纏わり付く。夏風とは対象的に清々しい気持ちに落ちる。
午後五時。黄昏時とは到底言えないが、太陽がどんどん沈んでいくのを感じた。靴を脱いで砂浜を裸足で歩む。
日没迄、どう時間を潰そうか。
『 .. なんでいきなり海に? 』
愚問だ。彼に本当の目的を教える訳には行かない。
「 行きたくなったから。 」
鳴蟬が耳に届くのを感じる。どく、どく。と、鼓動を刻んでいるかの様に。
太陽がどんどん落ちて行くのを、彼の影を目で追って遅れて気付いた。
砂浜から腰を上げ、靴が濡れるのを構わずに波に近付いた。波の音で、己の鼓動を掻き消していた鳴蟬さえも聞こえなくなった。
「 好き。 」
この二文字を口から出すのに、きっと彼の時間を何分か奪った。この言葉が空気中で振動し、彼の耳に入る迄の時間がとてつもなくもどかしくて、届いて欲しい。届いて欲しくない。其う、願っても構わない葛藤が、俺の頭を覆った。
目に映った彼の表情で、葛藤は消え去った。
彼はゆっくりと、言葉を噛み締める様に俺に近付いた。地面を見ずに彼も又、濡れる事を躊躇わなかった。
『 .. 俺、も。 』
視界が暗くなり、余計に鳴蟬が耳に鳴り響く。それでも、俺は彼から目を離さなかった。夜を待っていた。夜になれば ____
一刻でも早く、作戦を実行する為に。
タイミングを図っていた。
泪を流す榊原を見て、予想外の事態に動揺が隠せなかった。なんでもそつなくこなして仕舞う彼が大嫌いで、でもそんな彼がこんな表情を見せてくれるのが可愛くて、愛おしくて、大好きで
︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎
計画 、早めてしまおう。
彼の上半身に衝撃が走った。押し倒した。地面は海だ。受け止める事をせず、唯々沈むのを待っていた。息苦しかった。それでも彼から手を離さなかった。突然の出来事に戸惑っただろう。息ができなくて苦しいだろう。
愛おしい。何とも愛おしい!
『 ッ 、゛ッッ、ま、っ、だ 、っ゛ 』
____ 夜になれば発見が遅れるでしょ?
︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎
多様性?価値観?平等?
ンなもん知るか。とっくに棄てた安価なモラリズムに過ぎない。
俺にとっての欲望は唯一つ。
彼奴が、俺の掌で操られてれば良い。
︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎
唯、其れだけ。
俺達の存在証明は海に消えた。俺の耳障りだった鳴蟬も海に溶けた。俺も、彼も。
翌日、夥しい数の蝉が死を遂げた。
皮肉にも、俺達の様に。
コメント
1件
テスト期間の息抜き♩♩ ゆーて4時間クオ 最初最後の言葉は気に入ってる これは一応いつかの垢のリメイクのつもり‼️結構変えちゃったけどね 久々のストじゃない❓❓💦
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