テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ふぁ…」
冷える冬の朝。
霊夢はまだ暗い空を仰いだ。
「今日も寒いわね、ったく」
立てかけてある箒を手に取って、ほとんど何も落ちてない境内を形だけ掃除する。
鼻をさすような冷たい空気に身をすくめた。
「うーん…もういいか。どうせ誰も来ないし」
箒をもとの場所に立てかける。
「まーだ影響残ってるじゃない、バカ妖精め…後で文句言いに行かなくちゃ」
鳥居についた氷の塊。
境内に降り積もる雪。
霊夢は一旦神社に戻ってお茶を入れる。
ちゃぶ台の向かいに空の湯呑を置いた。
「ふー…そろそろ行こうかしら」
霊夢は半纏を着込んで靴を履く。
凍った路面はそれなりに滑った。
「…あいつなら迷わず走って転ぶわね」
いつもは賑やかな村は、静まり返っている。
「…朝早いしね」
いつも通りの平淡な声が、妙に村に響いた。
「…あれ、霊夢じゃん」
凍てつくような寒さの中、バカ妖精ことチルノが、心底驚いたみたいに目を見開いた。
「何よ。そんなに珍しい?」
「珍しくはない…けど…」
「ていうか。今日の寒さ、あんたのせいでしょ」
「てへ、久しぶりに全部使うつもりで出した反動で…」
「自分の能力くらい自力で制御しなさいよね」
「してるってばぁ」
「どこが?村一つ滅ぼしておいて、一体どこが制御してるの??」
241
5
「いや…だってさぁ」
「…言い訳?」
「お仕置きだけは勘弁して」
チルノは霊夢のげんこつを神回避する。
「あたい、魔理沙なんていらないよ」
「…うるさいわ」
霊夢の繰り出した、火力高めの二発目がクリーンヒットした。
村には誰もいない。
屋根を突き抜けた大きな氷の塊。
がっつり凍結した道。
人っ子一人いない空き地。
一層凍結が激しいそこには、かすかな血痕と魔力の残穢が残っていた。
魔法を行使したわけじゃないのは見てはっきりと取れる。
無造作に落ちている刃物。
ここで対象の動きを封じる何らかの儀式が行われた証の、かすれた魔法陣の跡。
明らかな殺意が、そこにはあった。
「あたい、贄なんていらなかったのになぁ」
一人になったチルノはつぶやく。
「…あたいが村にいたずらしたから魔理沙は殺されたのかな?
つい3日前まで活気に溢れていた村は、見る影もない。
チルノの気まぐれないたずらに困っていた村人は、立ち上がった。
『妖精には贄を捧げると守護してくれるようになるらしい。』
『魔力の高い人間であるほどいい。』
誰が書いたかさえも曖昧な、その古い文献は、死傷者なんて一人もでていない村でも信仰されるらしい。
妖精について多少なりとも知識を持つ人間は知っている。
そんな事実はない、と。
チルノが自分の住処に踏み入れて来た人間を認識する頃には、すべてが手遅れだった。