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「ちょっと待て、何を断定してやがんだ」
シルバは、力を籠めた低い声で割り込んだ。
ラスターはおもむろに向き直った。他人を小馬鹿にするように、口角を吊り上げている。
「飛んできた木が破裂して降り注いだ。その後すぐに、リィファが気を失った。それが、起きた現象の全てだろ。いったいどういう論理の流れで、リィファが犯人だって結論になるんだ?」
憤りを滲ませつつ、シルバは端的に指摘をした。黙り込んだ群衆が、シルバに注目し始める。
「隠したつもりでいんのかもしれねえがよ。俺はきっちり知ってんだぜ。『私は完全に無害です』って感じで澄ましてるリィファが、地球から飛んできてすぐに、おめえらを襲ったってよ。そこにきてこの超凶悪事件だ。直後に倒れたリィファ改め危険人物は、どー考えてもクロだろ」
自信満々なラスターの指摘に、シルバは口を引き結んだ。ラスターの主張も一つの見方だが、あまりにも決め付けが過ぎている。
ラスターは一瞬にして、わざとらしく驚いたような顔になった。
「つーか、シルバ君よ。どうして、リィファを庇うわけ? 地球からぶっ飛んできたお仲間への、同情心が湧いちまったってパターンか? 怖いもんだなぁ。爛れに爛れた共同生活って奴はよぉ」
ふざけた口調の台詞に、シルバは首を捻る思いを抱いた。
「低俗な邪推は良い。馬鹿馬鹿しくて答える気も起きねえ。だがその前だ。何を抜かしてやがる? 俺は孤児だが、アストーリ生まれだ。お前も知ってるだろ?」
シルバの詰問に、「あっちゃー、口が滑っちまった。話しちまうか。寛大なあの方なら許してくれんだろ」と、気楽な雰囲気でラスターは独り言ちた。
「シルバ、よーく聞け。おめーはな、この国の奴じゃあねえんだ。赤ん坊の時に、胴色のおべべを着て地球から降って来たんだよ。俺の後ろですやすやおねんねしてるリィファみたいにな」
強烈な視線をシルバに向けるラスターは、嬲るような風だった。
呆然としたシルバは、「……詳しく話せ」と、何とか捻り出した。
「おっ! 食いついてきたねぇ! でもタダじゃあ教えねえよ? 偶然にも舞台は、年に一度の三角行進だ。俺ら三人とのバトルで勝ったら、じっくりじっくり教えてやんよ。愛しの姫君も助けられて、一石二鳥だろ! 気合を見せてみろよ、シルバ!」
貪欲な喜色のラスターが叫ぶと、リィファの後方の二人が、すっと前に出てきた。強く決意を固めたシルバは、ジンガの姿勢を取る。