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シルバに応じるように、自警団員の三人は体勢を整えた。
端の二人がボクシングのファイティング・ポーズを採る一方で、ラスターは腰を落としていた。僅かな間隔を空けた両手を、胸の前に据えている。ラスターの専門、レスリングの構えだった。
一瞬、左の女の自警団員の身体が揺らいだ。
気の緩みを見抜いたシルバは、地を蹴って全力で加速。左手を斜め前に突いて、左、右。フル・パワーで両足を振り抜いた。
鼻に食らった女自警団員の身体は、ぐんっと後頭部から後ろに向かった。一度、地面で跳ねた後に、ぐったりと横たわった。呼吸こそしているが、起き上がってくる素振りはない。
両足で着地したシルバはすっと直立状態になった。
「相手が女でも容赦なしってか。骨の髄まで外道だねぇ」
女自警団員に首だけを向けながら、ラスターが茶化してくる。
「気ぃ抜けまくりが混じってたから、手っ取り早く潰しといただけだ。戦いの場に女も男もないだろ。それにな。いくら俺が半人前でも、三人掛かりの卑怯者に人の道を説かれたかねえよ。胸糞が悪くて、吐き気がする」
シルバが言葉を投げつけると、ラスターはおもむろに顔を戻した。にやにやした面持ちには、妙な余裕が感じられる。
「おうおう、好きなだけ吐いてくれて一向に構わんぜ。なにせお前は、腹立たしいぐらいの圧倒的ナンバー・ワン。光り過ぎてうざったい、同期の星って奴だ。三人でもなんでも、ぶちのめしたくもなんだろが!」
ラスターは喚くなり、ダッシュをしてきた。
重いタックルに、シルバはとっさに側転。左に入り込むや否や、ラスターの右足のすぐ外に己の右足を持っていく。
(ヴィンガティーバで無惨に転ばせてやる! レスリング風の技で倒しゃあ、相当な屈辱だろ!)
冷たく思考したシルバは、右肘を打ちつける。が、胸に到達する直前、左頬への衝撃とともに視界が揺れた。
目だけを遣ると、残りの男の自警団員が左手を引くところだった。シルバの肘打ちは斜め上に逸れる。
僅かに遅れて、男自警団員から右ストレートが飛んでくる。
後ろへの勢いを利用して、シルバはバック・ブリッジをした。男自警団員の右手が空を切る。
地を蹴ったシルバの両足は、大きく弧を描いた。ワン・ツーを避けたついでに両足を開く。まだ近くなはずのラスターへの攻撃が目的である。
しかし右足には何の感触もなかった。
苦々しく思いつつ、シルバはすとんとバク転を完遂した。敵の二人は、鋭い表情をしていた。
(経験の少ない複数相手の戦闘だ。二人ともただの雑魚だが、上手く立ち回らないと勝機はねえな)
集中を高めたシルバは、今度こそジンガを開始した。